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7/7

カフェスペース

 

          ◯



「一階の部屋は、ここで最後です」


「わぁ……」


 最後に案内された部屋は、まるでカフェのような内装だった。


 真っ白なテーブルクロスのかかった丸テーブルがいくつか並び、開け放された扉の向こうにもオープンテラスが見える。


 日当たりが良く、窓から入ってくる光が白い壁に反射して、部屋全体がとても明るく感じられた。


「以前はここで軽食の提供もしていたのですが、今はやっておりません。奥の厨房だけは変わらず使用していますが」


 言われて奥を見てみると、確かに厨房の入口らしき扉があった。

 どうやらそこからも二階に上がれるようになっているらしく、ここで食事を用意して、食べるのは二階でということらしい。


 こんなにお洒落なカフェスペースがあるのに、今は見学するだけの場所になっているのはもったいない気がした。


 もしここでカフェを開いたら、きっと素敵だろうな——と、その光景を思わず想像する。


「なぁーん……」


 と、そのとき。

 どこからともなく、猫の鳴き声が聞こえた。


 ハッと我に返った私は、すかさずその声の出どころを探した。けれど声の主はどこにも見当たらない。


 そこで、ふと思い出す。

 そういえば、さっき敷地の外で見かけた黒猫は、このオープンテラスから館内へ入っていったのではないかと。


「あの、ルナさん。ここって、猫ちゃんを飼っていたりしますか?」


 私が尋ねると、ルナさんは眉の辺りをぴくりと動かしたものの、表情は変えないまま静かに首を横へ振った。


「いいえ。猫は飼っておりません」


「えっ」


 予想外の返答に、私は固まった。


 さっきは確かに、黒猫はこの扉から中へ入っていったはず。庭を横切って、迷うことなくこの建物に飛び込んだのだ。


 けれど、ここでは猫は飼われていない。

 ということは、あの黒猫は勝手に中へ入り込んだだけの野良猫なのか。


(じゃあ、もしあの子を見つけたら、追い出さなきゃいけないってこと……?)


 せっかく可愛い猫と一緒に暮らせると思っていたのに、なんだか裏切られた気分だった。

 せめてちょっとだけでも戯れるチャンスがあればいいな、と希望を捨てきれずにいると、


「あ」


 再びオープンテラスの方に目を戻したところで、庭の端に、一匹の猫がちょこんと座っているのが見えた。


 先ほどの黒猫……ではない。

 明るいオレンジ色の毛に、茶色っぽい縞模様(しまもよう)の入ったその子は、茶トラの猫だった。


 彼、あるいは彼女は私と目が合った瞬間、すぐ後ろにあった木の向こう側へ隠れてしまった。


 あの子も野良猫だろうか。

 もしかすると、この周辺には野良猫が多く集まっているのかもしれない。


「さて。そろそろ二階へ上がりましょうか」


 ルナさんが先に部屋を出て、私もその後に続く。


 どこかに黒猫がいないかとキョロキョロしながら、私は廊下を進んでいった。

 

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