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庭師の少年

 

          ◯



 敷地の正面入口へ回ると、チケットブースがあった。窓口の脇には入館料が書かれた札がある。


 ここ北野にある異人館のいくつかは一般公開されていて、入館料を払えば誰でも中に入って見学することができる。

 このまどろみの館もその一つで、普段は観光客が出入りしているはず。


 しかし今日は定休日なので、チケットブースには誰もいない。

 隣にある門は開かれたままになっているけれど、これはもしかして私のためだろうか。


(これって、勝手に入っていいのかな?)


 インターホンがないかと辺りを見回すも、それらしきものは見つからない。

 このまま門を潜って玄関の方まで進むべきか、あるいは先に電話で連絡を入れるべきかと悩んでいると、


「あ」


 ふと、敷地の奥に誰かいることに気がついた。


 背格好からすると、高校生くらいの男の子だ。白いシャツにオーバーオール姿で、玄関先にある木の剪定(せんてい)をしている。


(あの子も、ここで働いてるのかな?)


 私より年下っぽいのに偉いなぁ、なんて思いつつも、彼の容姿のある部分に、私の意識は集中していた。


(髪の色、すごく明るいなぁ……)


 金髪。というより、オレンジっぽい色だった。

 遠目からでもわかるほどの明るい髪色。


 人を見た目で判断するのは良くないけれど、もしかしたらちょっとやんちゃな子なのかな? なんて思ってしまう。


 思えばここでの服装は特に指定がなかったので、あれくらい髪を染めていても特に問題はないのだろうか。


 とにかく、今はあの子以外に人が見当たらないので、とりあえず声をかけてみることにする。


「あ、あの。すみません」


 早速、声が上擦る。


 相手は明らかに年下なのに、それでも初対面の相手というだけで緊張してしまう。


 男の子はようやく私の存在に気づいたようで、剪定バサミを持ったまま首だけをこちらへ向けた。

 そうしてお互いの視線がぶつかった瞬間、男の子の目がくわっと見開かれる。


「おう。あんた、もしかして例の新入りか?」


 瞳孔を猫のように細めながら、彼はまっすぐにこちらを見て言う。


 例の新入り。

 他のスタッフからはすでにそう呼ばれているのか。


「は、はい。多分……」


 我ながら頼りない返事をすると、男の子は「ふうん」と興味なさげに視線を逸らした。


「とりあえず、そこで待ってて。()()()()を呼んでくるから」


 彼はそう言い残して、すたすたと建物の中に入っていった。


(……リーダー?)


 予想外の単語に、首を傾げる。


 リーダーとは、どういった人物のことを指すのだろうか。

 私を雇う予定の人物なら、この館のオーナーだと思うのだけれど。さすがにオーナーのことをリーダーという呼び方はしない気がする。


 だとすれば、ここで働いている人たちのリーダー的存在のことを指しているのだろうか。

 ハウスキーパーのリーダーというと、メイド長のような人?


 それにしても変わった呼び方だな——なんて、ぐるぐると出口のない疑問を捏ねくり回していると、やがて玄関の扉が再び開かれた。

 

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