表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

【9】

それから時は過ぎ、温泉に行く前日のこと。

「これは入れたし、これもいるし」

凛は荷物の最終確認をしていた。一応、何かあった時のために、襦裙を数着用意しておく。

「どうしたの、凛?」

優が美明を抱えたままやって来た。すっきり体調が良くなったようで、少しふっくらしている。そんな彼女からは、甘い香りがしてくる。

「明日、温泉に行くから、その最終確認」

「ああ、そうか…。いいな」

優は美明を抱え直すと、凛をじっと見つめ、言ってくる。

「…あたしも行っちゃ駄目?」

「え…。何で?」

あまりにも突然な申し出に、凛は大きく驚く。せっかく雅巳と2人っきりなのにと思う自分と、疲れている優を連れて行ってあげたいと思う自分と、2つに分かれる。

ー最近、ふらりと出かける時があるって、お父さんとお母さんから聞いていたしな。

暴力夫がいなくなったのをいいことに、凛が散歩中に出かけることがあるらしい。「危ないからやめて」と大雅と定は言ったらしいのだか、ここ数日、そんな感じらしい。無事に戻ってくるから、2人とも安心しているらしいが、慎二に捕まるのだけは勘弁だった。

「どうしたの、急に?」 

「その…。この地から出たいというか…。あの、美明は定さんに任せては駄目かしら?」

「えっと…別にいいと思うけど」

凛も困惑気味に答える。さすがに美明は置いていったほうがいいと思うが、一緒に温泉に行きたいなんて大丈夫だろうかと思う。

ーここにいたくないのは分かるけど…。

雅巳が嫌がらないか心配だった。しかし、もう夜なので聞くことはできない。凛が判断するしかなかった。

ーどうしよう。えっと、えっと…。

考えに考えて、凛は慎重に言葉を選ぶ。

「私の連れが嫌だって言ったらごめんね」

「!! いいの!!」

「あの、できれば良くないのかもしれないんだけど」

お人好しというか、情に飢えている優を拒むことはできなかった。

「やった!! 大雅さんと定さんに言ってくるわね」

「え…。ちょっと!!」

行動の速さに、凛が唖然としてしまう。しかし、優にもいい効果が生まれるかもしれないと思い直す。

ー私だったら、同じことを言うかもしれないし。

温泉でのんびりしてきたほうがいいかもしれない。なるべく明るく考え、荷物をまとめるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ