第12話 努力の果て、そして未来へ
朝の光が、王都の屋根を照らす。
崩れた神殿の修復が進み、街は少しずつ日常を取り戻していた。
人々は“努力”を祈りの言葉ではなく、
“生き方”として口にするようになった。
鍛冶屋は、毎朝の一振りに感謝し、
商人は、交渉の積み重ねを誇り、
子供たちは、転んでも立ち上がるたびに笑った。
誰かの努力が、誰かの勇気になっていく。
それが、この世界の新しい秩序になった。
◇◇◇
城門を抜けると、澄んだ風が吹いていた。
セリアとフィリアが並んで歩いている。
ふたりとも、少し日焼けして強くなっていた。
「ねえ、レイン。次はどこへ行くの?」とフィリア。
「うーん……特に決めてないな。
たぶん、まだ努力の足りない場所がある気がする」
「それ、どこ?」とセリアが笑う。
「この世界、全部だよ」
セリアはあきれたように肩をすくめ、
フィリアは目を細めて嬉しそうに笑った。
「だったら、私も行く。
努力を伝える旅、でしょ?」
「ずるい、私も行く!」
ふたりの声が重なり、風に溶けていく。
俺は笑って頷いた。
「三人で行こう。努力の続きを探す旅だ」
◇◇◇
旅立ちの前夜、
王都の丘の上に立って夜空を見上げた。
無数の星が瞬き、そのひとつが流れた。
「見てるか、リュミエル」
風の中で、小さな光がふっと現れた。
それは答えるように瞬き、空へ昇っていく。
――努力は、まだ終わっていない。
俺はゆっくりと剣を抜き、地面に突き立てた。
剣身に映る朝の光が、まるで新しい太陽のように輝く。
「努力は、誰かを救うための力じゃない。
自分を信じ続けるための灯だ」
その言葉を胸に、歩き出した。
東の空が赤く染まり、鳥の声が響く。
長い戦いのあとに訪れた朝は、
どこまでも穏やかで、どこまでも希望に満ちていた。
セリアとフィリアが笑い、
俺も笑いながら、三人の影が街道に延びていく。
その足音が、未来のリズムになる。
――努力は、終わらない。
それが、俺たちの生きる証だから。
完
『努力で強くなりすぎた俺、気づけば全員に惚れられていた件
~無能扱いから始まる勘違いハーレム~』
――完結。