93:セッティング。
「よし。とりあえずセッティングをごっそり変えたぞ~!」
「何やったんだ?」
「足回りをWRC仕様にしたんだよ。」
「おいおい嘘だろ……?」
早すぎるセッティング変更に平志はプレアデスに軽く引いた。
たった数十分でサスペンションの車高とダンパーの硬さを変えたというのだから仕方ない。
「旋回性能は折り紙付きだな。まぁ、基本的なセッティングだからここからモナコに合わせていく必要があるんだがな。」
「ま。そうなるだろうな。」
「流石にスプリング交換なんて大胆なことはできないだろうからダンパーと車高の調整になるんだけどな。」
「十分だろ。」
「ああ。確かにこれだけでクルマは性格が変わっちまう。」
「車は精密機器だからな。ちょっといじるだけでまるっきり変わっちまうことだってある。」
「逆にガッツリ弄っても変わったのかが全く分からん時もあるけどな。」
「それを走ってじっくり煮詰めるのがセッティングだろう?」
「ああ。」
「ま。精々頑張ることだな。」
「たりぼうよ!」
まもなくしてコースはクローズド化され、着実にサーキットに変えられていった。
走っていれば嫌でもわかってしまう。
相手は誰なのかということが。
アバルトだろうか。ずいぶんとエンジンに手の入れられた音を響かせながら走り抜けているものも居ればアルファロメオらしき旧車……あれ?
「……ジュリアだ。……なんであんな型が新しい奴があるんだ?」
正直謎だ。
ラズヴィーチャ連邦から流れ着いたのだろうか。
だが、ラズヴィーチャ連邦って30年代のクルマを作ってたような……?
「あれですか。」
見知らぬ町人らしき人がプレアデスに話しかける。
プレアデスはいきなり現れたその人物にぎょっと驚き、聞き返した。
「ラズヴィーチャ連邦は知ってるよな?」
「ええ。」
「ラズヴィーチャ連邦はザリアを除いて基本的な自動車技術を輸出してたんだよ。」
「技術を輸出……か。」
「ああ。売り上げの数パーセントを渡さなくちゃいけないんだがな。」
「それでもそれだけの技術が得られるのはデカいだろう。」
「ああ。それにそれをチューニングすることでレースできるだけの戦闘力も手にしている。」
「なるほどな。」
「ここを地元にしているんだ。かなり手強いと思うぞ。」
「地元……か。」
コースを知ってる差ってものはデカい。
俺は走り屋をやってる世代ではなかったし、それがどれだけのハンデになるかはわからない。
親父に聞いときゃよかったァ……!
親父は走り屋世代である。
俺がGC8を買った頃にはもう走り屋も終焉迎えてたし。
「ま。やるだけやってみるよ。」
「頑張りな。」
そう言って町人は去っていった。
「……パワーも弄った方がいいかねぇ?」
「モンテカルロ仕様のPWか。ドッカンなそのターボじゃあキツいだろうな。」
モンテカルロは直線があるにしてもシケインやらテクニカル区間もあり、そもそもそんな狭い道路で600馬力オーバーを踏みぬけるのかという問題もあるのだ。
今まではサーキットを突っ走っていた。
たまに市街地も走っていたが今回はスピードレンジが違う。
それに以前の市街地レースではある程度安全マージンをとっていた。
今回は全力を出すのだ。
当たり前だ。現役ではないにしろプロのラリードライバーが居るのだ。
「NRC2の時に使ってたTD07Sタービン引っ張り出すかぁ。」
「まだあったのかあれ。」
「モチのロンの助次郎よ!」
「なんだそれ。」
パワーユニットというのは基本的にエンジンのこと。
ドッカンなターボというのはターボのパワーがいきなりドカンとくるタイプのターボのこと。




