89:和弓
俺だって無策で突っ込むわけじゃない。
流石に考えてはいるさ。
俺が持ってきた武器は日本刀と和弓。正直大した武器じゃない。
ただ、和弓はかなりの火力が期待できる。
さんざん修行を積んだんだ。ある程度の命中精度はある筈だ。
「行くぞ!」
見回りはざっと1名。
それなら……
プレアデスはCB1300のエンジンを切り、和弓を取り出し、矢を弦にかけ、その見回りの肩を狙う。
「あまり人は殺したくないもんでな。」
プレアデスは矢を離し、高速で弓から矢が放たれ、その矢は勢いよく見張りの肩を喰い破る。
声を張り上げようとする見張りの首元にプレアデスは刀を置き、見張りの首筋にひんやりとした感触が伝わる。
声を張り上げることなど出来ず、静かに投降する。
「やるじゃない。プレーン。」
「ふへぁ……」
プレアデスは腰が抜けたように座り込む。
「どうしたのよ。」
「人を攻撃するのも殺さないように神経を研ぎ澄ませて撃ったのも初めてなもんでな……」
「なるほどね。確かになれないことをするとずいぶんしんどいわね。」
「ああ。それに人の命を狙うのもしたことなんてない。」
「そういう文化がない国だったのねぇ。」
「ああ。」
「主様、大丈夫ですか!?」
「ああ。大丈夫だ。」
「無茶なさらないでくださいね。」
「ああ。分かってる。」
プレアデスは和弓をサイドバックに再びぶら下げる。
「とりあえずあの子たちを探しに行こう。」
声のする方へ。声のする方へ。
俺たちは歩を進める。
もちろんバイクも引き連れてはいるが。
「みつけた。」
そこには、いつも見るリーシャが小さく震えていた。
それにルークがよしよしと自らも怖いだろうにそれでもそれをぐっとこらえてリーシャを励ましている姿だった。
「ルーク。リーシャ。助けに来たよ。」
「……!プレアデス兄ちゃん!」
「ここを開けるよ。」
俺は先ほどの見張りから奪い取った鍵でその牢屋の鍵を開け、ルークとリーシャをその檻から開放する。
「ほら、開いたぞ。」
檻が開いたその直後、ルークとリーシャが飛びつく。
俺はその二人を優しく撫でる。
そんな二人は静かに泣いていた。
「さて。二人とも、泣くのは出てから貴族ママと会ってからだ。ここからいったん出るぞ。」
「まって……!」
ルークが俺を止める。
「どうした?」
「ここ……には。」
「他の子もいるんだろう?」
「うん。」
「大丈夫。来たのは俺達だけじゃない。俺達は先遣隊。一旦帰ってまた来るよ。」
「ほんとう?」
「ああ。ほんとだ。俺達が単独で来るほど無策じゃないさ。」
「ありがとう……!」
すると、ゴトゴトと足音が聞こえ、その音は次第に大きく聞こえてくる。
「ルーク、後ろに乗ってくれ!リーシャはCB400の後ろに!」
「私は?」
「たわしちゃんは俺のCB1300に魔法科なんかで繋いで滑空できるんじゃないか?」
「出来るわよ。」
「それじゃあ頼む。」
たわしちゃんは魔法のロープのようなものをCB1300SFに繋ぎ、スケボー的な板が足元に出現し、ふわりと浮かぶ。
それを確認した俺はルークを後部座席に乗せ、リーシャもレイサがCB400に乗せる。
「絶対に手を離すなよ。リーシャも。」
「もちろん。」
「うん!」
俺はアクセルを煽り、出口のルートを頭に思い描くのだった。




