80:小さな貴族たち。
貴族というのは背負う荷が重いものだ。
それは、年齢関係なく。
「リーシャ。」
「どうしたのルーク。」
「僕、思ったんだ。」
「何を?」
「僕たちをあの日襲った賊を、僕たちで調査してみないかい?」
小さな少年貴族の魅力的な誘い。
それに妹、リーシャは退屈な今を変えることができる絶好のチャンスと感じざるを得なかった。
「するする!したい!」
「そうこなくっちゃ!」
早速と言わんばかりに二人は調査に乗りかかった。
「リーシャは賊のアジトがどこにあるのかを探して。」
「うん。けど、ルークはどうするの?」
「僕は僕たちを襲った賊の正体を探るよ。」
「わかった!確かに、気になるもんね。」
国の諜報部が見つけ出した情報はたった3週間と少しで手に入れ、町の人にそこら辺に居る子供を装って聞き込み調査を始める。
リーシャは聞き込みによって次々と賊のアジトを次々に洗い出す。
そして、あっという間に国中にあるアジトを全て見つけ出してしまった。
「どうやらこんだけ賊のアジトがあるらしいね。」
「こんなにあったなんて……!」
改めて地図につけられた印をまじまじと見る。
規則正しく、なにか町中心から広がるように、囲うように広がるその印に二人は違和感を覚えた。
「なんか……ここ中心に広がってない?」
ルークは町の中心を指さす。
「そうだね。ここから広がってる。」
「行ってみる?」
「そうだね、行ってみよう!」
もしここにプレアデスが居たなら言っていたのだろう。
いかのおすし。
いかない、のらない、おおごえをだす、すぐにげる、しらせる。
ただ、そんな防犯教育は受けていなかった二人は大した危機感を抱くことなく勝手に進めていたのだった。
ここまでの行動をまとめた手帳を置いて。
「行こう!リーシャ!」
「とつげきーだね!」
「そうだね!」
「「とつげきー!」」
……もうダメかもしれない。
微笑ましい状況ではあるのだが、行動は全く笑えないのだ。
そうして二人はアジトの近くまで来た。
来てしまったのだ。
二人は手を繋いで決心の告白を口にする。
「それじゃあ、行こう!リーシャ!」
「うん、行こう!」
「そうはさせねえよ。貴族の坊やと嬢ちゃん。」
二人はその真後ろの男にかけられた言葉に背筋が凍り付く。
「えっ……?」
「ルークぅ……」
不安は一瞬にして刈り取られた。
それが安心させるものとは限らないが。
「ここまで知られたからには、もう帰れるとは思わないことだ。」
「それは、どういうことだ!」
「……っ!」
リーシャは恐怖のあまりルークにしがみつき、小さく小刻みに震える。
「大丈夫だ。痛いのは一瞬だ。」
その刹那、二人の首に手刀を当て、意識を刈り取られ、彼は膝から崩れ落ちる二人を抱え、町の中心、大噴水の中に飛び込む。
「しばらくは監禁させてもらう。何をしようとしたのか、調べさせてもらおう。」
次の日、ローリンソン伯爵邸は大混乱に陥っていた。
「ルークは!?リーシャは!?何で居ないの!?」
彼らは誘拐されたと気づくまで、ずいぶんと時間がかかった。




