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72:緊急発進

「だから。今から行こう。」


 俺はこれを曲げるわけにはいかない。

 ラズヴィーチャが兵器を願った時点で俺たちになす術は無い。


「先手必勝。やらなきゃ負けるんだよ。」

「だけど……!」

「時間がない。後ろにでも乗っててくれ。」


 俺はインプレッサの空いた窓からキーを差し込み、エンジンをかける。

 キュキュキュキュ…ズォォォォォ……!

 インプレッサは低く唸るような重低音を響かせる。


「一平ちゃんなら分かるだろう?この脅威が。」

「……ああ。確かにわかる。」

「なら!」

「だが待て。行って俺たちに何ができる。向こうの状況は分からない。そんな状況で行くのは自殺行為だ!」

「男にゃいざという時に動けるここぞという時の勇気が必要だ!それは今しかないだろぅ!」

「……っ」

「俺たちが動かないといけないのは今、この瞬間だ!」


 プレアデスは平志を睨み付け、静まり返ったその空間にはただインプレッサの鼓動が響き渡り、平志はプレアデスの気迫に押されて何も言えなくなってしまった。

 彼らが再び動き出したのは1分ほどたってからだった。


「燃料を用意してトランクに入れておこう。」

「プレーン。この本を入れてほしいのだけど、手伝ってくれないかしら。」

「ああ。分かった。」


 プレアデスが大量の本を後部座席に積み込んでいる姿を見て俺は思わずつぶやいた。

 たった一言。


「勇者は懼れず……か。」


 あいつこそ勇者だろうな。

 まったく。俺が唯一嫉妬する相手だよ。お前は。

 何も恐れることなく、自分の道を進んでいくのだから。


「ランエボの用意をしよう。シルト、リーラ様。荷物の用意を。」

「ええ。」

「分かったわ。」


 こうなりゃあもう後はねぇ。行けるところまで行くだけだ!


「レイサ。お前も来るんだろう?」

「もちろん!」

「たわしちゃん。後部座席で実験しててね~」

「はいはい。分かったわよ。計算と構築そのものはメモさえできれば何とかなるから。」

「なるほど~」

「ほら、さっさと行くわよ!」

「ラジャー。」

《I'll make it in time!》


 インプレッサは地面を軽く削りこみながら進みだす。


「……こういう時にはあれ流したいよな~」

「何ですか?主様。あれって。」


 後ろから何か聞こえるかな~?

 ・・・なーんも聞こえない。

 え。後ろの魔女っ娘、静かすぎ!?

 エンジン音にかき消されているもんでそんな物音立ててないのよね。

 しゃーない。一応後ろ見れるようにルームミラー調整しとこ。

 よっこいしょっと。


 ルームミラーに映し出されたのは本が宙に浮かび、紙に小さく文字をかいているたわしちゃんの姿だった。


「……たのんだ。大魔法使いたわしちゃん。」


 こりゃ負けていられないな。

 俺にできるのはアクセルを踏みぬくことしかねぇよな!


「やるなぁ。あいつも。」


 ペースが上がり、少しづつはなされ始めたインプレッサを眺めて俺は思わず呟いた。


「この車とあれだけ接戦したクルマってのはすごいわね。」

「ええ。そりゃあ俺の大親友且つ幼馴染だからな。遅いわけはないよ。」

「じゃあ何で負けたんだ?」

「あいつのとっておきで負けたよ。俺にはない発想でな。」

〘とんでもないものをGC8にぶち込んだんだな。プレアデスも。ROMで済まないだろう。あれほどの大改修は。しかもぶっつけ本番ときた。〙


 まったくだ。

 確か名前はスクランブルブーストだったか。

 俺にはECUを弄る技術はないからな。

 搭載は難しい。

 そう考えるとやっぱりあいつは天才だな。

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