64:圧倒的な力
シュヴェルトと呼ばれた男はシルトに対して剣を投げつける。
投げつけた剣はシルトの足元に刺さった。
「抜け。一騎打ちだ。ここでお前が勝てば俺はここをどこう。」
「……分かったわ。」
シルトはその地面に刺さった剣を引き抜き、シュヴェルトへと向ける。
「良い眼だ。そうでなくてはな!」
するとシュヴェルトはあっという間にシルトとの距離を一瞬にして詰める。
「速い!」
「当たり前だ!俺はお前に食らいつくためにここまで鍛えたのだ!」
「けど、いつも通り私が勝って見せるわ!」
「馬鹿言いやがれ!剣術は日々扱わなければすぐ鈍る!」
「それはどうかしら。」
シルトは天性の戦士だ。
どんな武器でもあっという間に使いこなす。
それは体に染みついた戦いのセンスがそうさせるのだ。
それ故に。
「そこッ!」
思い切りシュヴェルトの剣を打ち払い、大きく太刀筋がずれる。
その瞬間をシルトは見逃さない。
「ぐッ……!」
「もう終わりかしら。」
最初は押していたとしてもすぐ隙を突かれ、押し返されてしまう。
一度押し返されてしまえばもう終わりだ。
「そこ!」
「なッ……!?」
再び刀を弾かれると踏んだシュヴェルトはやらせはしまいと岩のように全身に力を籠める。
それに気づいたシルトはニヤリと微笑み、流れるかのようにするりと懐に飛び込んだ。
全身に力を込めたことで動きがわずかに鈍ったのだ。
その隙を突き、一瞬にしてシュヴェルトの首元には刀が添えられていた。
「……私の勝ちよ。」
「……参った。降参だ。」
「それじゃあ。」
「ああ。通れ。正々堂々戦ったのだ。俺はもう何も言い逃れはできん。剣士としてな。」
「アンタの良いところでもあり悪いところよね。それ。」
「仲間にもよく言われるさ。」
「けど、それがいいところよね。」
「それも言われる。」
「おい!ここで惚気るな!追手はすぐそこまで来てるぞ!」
平志のその一言で扉を開け、ヘクセが出現させたビートルに全員が乗り込み、その場を後にするのだった。
「おいおい嘘だろ……?」
後ろからは大量のトラクションが追いかけてきた。
「逃げ切れるかしら……」
「こればっかりは……」
「無理……ですね。」
諦めの声がビートルの車内を支配していた。
「ターボを使う。」
平志はあるスイッチを入れた。
その瞬間、目にも止まらない速さでビートルが加速する。
「なにこの加速!?」
「ボルトオンターボだ。あいつ、シーケンシャルを応用してターボをオンオフできるようにしていたらしい。」
「何やってんのよ。プレーンは。」
ただ、そのおかげであっという間にトラクション達を撒く事ができた。
「……あいつ。今頃何してるかな。」
「プレアデスさんですか。」
「どうせまだ生き残ってるわよ。死んでも死に切らない男よ。あいつは。」
「それもそうだな。」
平志たちは指定の位置で彼の帰還を待つ。
きっと。きっと帰ってくると信じて。
「あー全く!しつこいな!このトラクションども!」
スバル360は未だに街中をぐるぐる爆走していた。
「俺はピンクの360にロータリー積んだ天才とは違うんだわ!街中ぐるぐる回るしかできねぇのよ!」
まだ止まるわけにはいかない。
止まるにしたって。まだ、彼らが残っている可能性がある……!
そう。彼はここで捕まる気でいたのだった……
それはもちろん。自分の死を覚悟して。




