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63:脱出

 そうしてその中はひどく静かで、誰の気配も感じなかった。


「一体何処にあるんでしょう。シルト。分かりますか?」

「いえ。全く。」

「以前会計をしたときに資料室がどういう風にまとめられているのかは把握している。」

「どういう感じなの?」

「時代順だな。この資料室にはここ10年の資料がある筈だ。」

「それなら……!」

「そして入口に近い順に最新のものがある。ちょっと奥にそのデータがある筈だろう。」

「……平志と言ったわね?」

「ああ。」

「普通、そんなものは焼却処分するんじゃないかしら。」

「焼却処分することはできない。あれは正式な血判契約をして成立している。」

「……なるほどね。燃やそうと思ってもそれじゃあ燃やせないわね。」

「ああ。」

「血判契約?」


 リーラが頭にはてなを浮かべた。


「お嬢様はまだ習っていないのですね。血判契約というのは行うものに完全な内容を本に記す必要のある契約で、それを焼却したり消そうとしても契約の力によって消え去ることはありません。」

「契約破棄するのならどうするの?」

「強引な方法なら血判を押した者のどちらかが死ぬか、正式な方法なら1年が経過後にもう一度血判契約で上書きすれば。」

「なるほど。」


 平志は既にあたりを見漁っていた。


「……見つけた。」

「本当!?」

「十中八九これだな。」

「……何それ。」

「……なるほど。呪いの鍵ね。」


 その本は鎖でぐるぐる巻きに固定され、南京錠が何錠もかけられていた。


「どうやったら解除できる?」

「時間をかければ半日でマスターキーを作れるわ。」

「時間がかかりすぎる……!」

「けどすり抜けた一部のページを読み取ることはできるわ。」

「そんなことができるのか?!」

「一応それが本当に花火の物かは認識できるわ。」


 ヘクセはその本に手を置く。

 するとヘクセの足元を起点にして小さな魔法陣が展開され、魔法陣の縁から垂直に小さな結界ができる。

 その結界の中の魔力の濃度は想像を絶するほどであった。


「………間違いないわね。これは例の本で間違いないわ。」

「そうか。それじゃあこれを持って帰るぞ。」

「わかったわ。」


 目当ての本を見つけた平志はさっさと帰ろうとする。

 ただ、他3人はそれぞれ別の本を掴んでいた。


「これは……賊の調査書……!」

「こっちには裏組織の調査書が!」

「こっちには禁術魔法の取り締まりに関しての本……?ってこれ、私が昔作ったZ(ゼータ)クラスの過負荷魔法じゃない。確かにこれは禁術になってもおかしくないわねぇ……」


 リーラは賊について、シルトは裏組織についての報告書を抱え込んでいた。


「結構持っていく気ね。私の(マルチ)(ディメ)(ンショ)(ナルス)(ペース)を使いなさい。」

「それじゃあこれも頼む。」

「分かったわ。」


 荷物を亜空間にしまい込むとすぐさま彼らは飛び出した。


「侵入者だ!逃がすな!」


「バレたようね……!」

「シルト。それにリーラ。君たちはここに残るといい。本来ここが君たちの家だろう?」

「いいえ。私は平志について行くわ。」

「私も同胞を攻撃しましたので。」

「……そうか。それならこの騒ぎが収まるまでついてくるといい。」

「……ええ。」


 彼らの後ろからぞろぞろと現れる追手達は矢を平然と放ってくる。


「やらせないわ!」


 ヘクセは仲間の真後ろに炎の壁を創り出し、矢を全て焼き尽くす。

 しかし追手は右から、左から。正面から現れる。

 それらを図べ手搔い潜りながら突っ込むのは困難だ。

 それでもただ目指すはビートルのもとであった。


 彼らが出口に向かうとそこには一人の剣士が待ち構えていた。


「アンタは……!」


 ヘクセは酷く驚き、その人物を睨み付ける。


「シュヴェルト……ッ!」

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