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60:出発

「それはな……!」


 プレアデスはスバル360のエンジンをかける。

 360はエンジンが動き出す。


「……待て。何だこのエンジン音……!?」


 このエンジン音、ずいぶん古い物だが普通のエンジンじゃねぇ。

 水平対向のようなバタバタ音でもなければ単気筒の不安定さもない。

 それどころか酷く安定してる。

 全然五月蠅くない。

 五月蠅くない且つ静かでパワーがある……


「まさかッ!?」

「そう。これさ。」


 プレアデスはエンジンルームを開く。


「こいつは……!?」

「10Aだ。」


 10A。それは世界初の実用ロータリーエンジンである。


「そんなもんぶち込んだのかよ……!?」

「RX-3のドノーマルだがな。」

「それでも100馬力は超えてる。十分パワーウェイトレシオ3.7はでる!」

「色々補強する羽目になったがな。」

「フルノーマルの360に見えるが。」

「スポット増ししてる。」

「溶接機は?」

「特殊整備部品はパソコンで発注できた。普通の部品はないけどな。」

「嘘だろおい。」

「出来たものは仕方ない。」

「それでどうなんだ?360は。」

「試走してねぇよ。」

「大丈夫か?それで。」

「考えてスポットしてるよ。もちろん。」

「だが……」

「足だって強化してる。」

「えぇ……?」

「それじゃあさっさとラズヴィーチャに行こうか。この2台ならそうそうバレない。」

「まぁ、確かに。」

「いざ、しゅっぱーつ!」


 プリンちゃんとたわしちゃんを後部座席に乗せ、スバル360はゆっくりと発進するのだった。


「すごい……!普通こんなに小さな車でこんなにパワフルなことなんてないのに……!」


 もう軽自動車ではなく普通車であるのだが。

 そんなことは露知らずスバル360とフォルクスワーゲンはのんびりラズヴィーチャへと向かっていく。


「止まれ。」


 関所でもちろん停められる。


「身分を証明できるものを出せ。」

「ほい。これさ。」


 ザリア国王にもらった偽装ギルド身分証明書を渡す。

 ちなみに変装済みである。プリンちゃんとたわしちゃんは魔法で隠れてる。


「……よし。通れ。」


 一平ちゃんも同じ方法で突破する。


「ここからどこに行くんですか?」

「目標は……」

「目標は?」

「敵城だ!」

「へ?」

「ここからは命の保証はできない。プリンちゃんとたわしちゃんはビートルに乗っててくれ。」


 360はピタリと止まる。


「行きません。」

「私もよ!」

「大丈夫。俺は囮だ。本命はビートル。ちょっとばかり手を加えておいてる。そこそこのパワーが出るはず。」

「だからこそよ!アンタは戦う能力なんてないの!そんなの、死にに行くようなものよ!」

「大丈夫だ。俺を信じろ。」

「運転技術と生存能力は比例しないのよ!」

「何の為に俺が360を持ってきたかわかるか?」

「え?」

「こいつは小柄だ。そしてパワーもある。つまり、ちょっとしたスペースに車体をねじ込めるんだ。」

「だからって……!」

「そうですよ!」

「……。」


 無言でプレアデスは運転席の窓を開け、平志に言った。


「この二人を引きずり降ろして連れて行ってくれ。」

「いいのか?」

「囮は俺一人で十分。お前たちは突入するんだ。戦力は多いに越したことはない。」

「……分かった。」


 シルトが二人を強引に360から降ろす。


「やめて!なんでよ!私はあんたがここで命を落とす必要はないって言ってるのよ!」

「大丈夫だ。俺はラリーストに勝ったドライバーだ。奴らの攻撃なんぞかわして見せる。行け!行って国王を説得してこい!」

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