58:お屋敷と車の定期健診
58:お屋敷と車の定期健診
「ご当主様。プレアデス様たちが只今到着いたしました。」
セバスチャンが貴族ママのもとに現れ、すぐさま告げた。
「ついに来たのね。」
「ずいぶんと時間がかかったな。」
「時間がかかる事態が発生していたのでしょう。」
「とりあえずプレアデスたちのもとへ行きましょう。」
「もちろんだ。」
二人がインプレッサのもとへと向かう。
「以前見た姿とずいぶん違うな。」
「なんだか高いですね……」
そして泥にまみれていた。
「貴族ママ!」
「誰が貴族ママよ。……相変わらず変わらないわね。プレアデス。」
「まぁな!」
「プレアデス。今回のレースでの勝利、真に見事であった。」
「ありがとうございます。」
「しばらくはここで休むといい。」
「そういうわけにもいきません。明後日にはここから出発する予定です。」
「何故だ?」
「ここに迷惑をかけるわけにいきませんから。」
「実に君らしい。」
「誉め言葉として受け取っておきます。」
「ところで。」
「何かしら。」
「この2台を何処か隠せないでしょうか。」
「2台?」
ひょこりとインプレッサの後ろからランエボが顔を出した。
「これは……!?」
国王はまさか現れるとは思ってもいなかった車の登場に目を丸くした。
「……一応隠せる場所はあるわ。倉庫の拡張工事をしてたのよ。そこに置けばその2台を隠せるわ。」
「助かる。」
「あの小さいのはすぐ使うと思って一応外においてたの。」
「ああ。それでいい。」
すると2台は倉庫へ向かっていく。
バックで2台は倉庫に入っていき、二人が下りてくる。
「たわしちゃんとプリンちゃんをベッドで寝かしておいてくれ。」
「ええ。分かったわ。セバスチャン。」
「もちろん。既に彼女らには客人用では最上級のベッドを手配しております。」
「最上級?」
国王は何故最上級なのだろうかと頭にはてなを浮かべた。
別に人を蔑むのではなく。
貴族ママは客人の位に合わせて部屋を選択する。
それを完璧に把握しているのはセバスチャン。
セバン士ちゃんが判断したことはほぼ100%貴族ママの考えと同じなのだ。
それを理解しているからこその素朴な疑問だった。
「たわしちゃんとプレアデスが呼んでいる方の本名はヘクセ。」
「あの大魔女ヘクセ様か!?」
「……えぇ。」
「なるほど。」
「もう一人はラズヴィーチャの第三王女だとか。」
「だからか。納得できた。」
二人はこそこそと会話をしていた。
プレアデスは何を言ってるのか全く聞こえなかったため、空を見上げて雲が流れる姿をずっと眺めていた。
「それで明日は何をするの?」
「(。´・ω・)ん?メンテ。車の定期健診の車検だな。」
「へぇ、そんなのがあるのね。」
もちろん異世界に車検なんてものはない。
ただ過酷な環境下で動いてきたランエボとインプレッサはずいぶんと消耗していることだろう。
「少なくともエンジンオイルは交換するべきだ。」
「それには俺も同意する。」
平志が後ろからやってきた。
「貴方は?」
「俺はインプレッサとバトルしていた車のドライバーだ。」
「貴方が!」
「実に素晴らしい走りだった。」
「ありがとうございます。」
「ところで何でオイルというものを交換するとよいのかしら。」
「エンジン内部では部品がこすれ合っています。布でもそうですがずっと高速に、激しくこすると布が傷みますよね?」
「ええ。」
「それはエンジンも同じ。その為、部品と部品の間に油を挟むことで滑るようにしています。これを潤滑油と言います。」
「潤滑油。話を聞くだけならかなり長期にわたって使えそうだ。」
「そういうわけにもいきません。オイルにはエンジンの汚れを取り除く機能もあるため、一定の期間で交換する必要があります。ごみを取り除くフィルターもありますが、限界はあります。」
「なるほどね。だからオイルを交換すると。」
「ええ。」
「ちょっとした疑問が解けたわ。ありがとう。」
「儂もだ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
プレアデスは相変わらず暇していた。




