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56:ゆっくりのんびりと。

 ひと休憩を終えた2台はゆっくりと前進していた。


「ずいぶんと乗り心地が良くなったわね。」


 インプレッサとランエボはずいぶんと移動するペースもゆっくりになっていた。


「そりゃあ車高上げてサス柔らかくしたからな。速度も出せやしない。」

「それになんかさっきよりパワーが無いわね。」


 ちなみにインプレッサのキーの脇に設置してあるスイッチ類の中にあるエンジン出力のスイッチは320を指し示していた。

 速度を出さずにゆっくり移動するのであれば地面を抉るようなパワーなんてものは必要ない。

 必要なのは確実に地面を掴んで進む能力だけなのだ。


「そりゃあパワーは前と同じにまで下げたからな。」

「え?」

「有り余る力は時に足枷になるんだよ。何事もな。」

「確かにねぇ。」


 向こうはどうしたんだろうな。


「ゆっくり進むだけならローギアで吹かすだけで進める。」


 ……技術だった。


「ゆっくりと移動してるんだし、自然と戯れるのもいいかもな。窓を開けよう」


 プレアデスはインプレッサの窓を全開にした。


 森からはチュンチュンと鳥の鳴き声、カサカサと小動物の移動する音、木々のざわめき。

 まさに大自然だ。


「うーん。空気がうまい!」

「確かにねぇ。」

〘It’s nice to enjoy a place like this too.〙


 プレアデスは右腕をドアにかける。


「あいつ……そうだな。森だもんな。」


 平志もランエボの全ての窓を全開にした。


「やっぱ森はいいな。心が癒される。」

「こうして自然とゆっくりと身近に体験したことなんてなかった。森というのはここまで……!」

「そうですね。都会の空気とは全く違います。空気が澄んでいる。」


 ただ、どうやらたわしちゃんはどうしても疑問に思ってしまった。


「ねぇ。こんなゆっくりしてていいの?相手だって車は持ってるんでしょう?」

「悪路ってのはクルマにとって天敵だ。クルマができたばっかの黎明期ならなおさら。」

「そういうものなの?」

「しかたないな。ちょっと待ってろ。」


 プレアデスは右にウインカーを出す。

 そして腕を車外に出して手招きをした。


「ん?あいつ、呼んでるのか?」


 ランエボはインプレッサの隣に横付けする。


「どうやらこの魔女っ娘は追いつかれないか不安なんだと。」

「ああ。確かにそうかもな。」

「出来てすぐの黎明期だとこんなの突破するのは難しいとは言ったんだがな。まだ納得しきれてないんだよ。」

「それならわかりやすい例がある。例えば氷の上を走っても全く進めないだろう?」

「ええ。慎重に進まないと。」

「車にとって舗装されていない道以外はすべてが天敵だ。凹凸のある道ならなおさら。まともに走れないことだってある。」

「そうなの?」

「一平ちゃんの言った通り。黎明期の車はFRが多い。」

「えふあーる?」

「前にエンジンがついてて後ろの車輪から動力を伝える車のことよ。」

「(。´・ω・)ん?」


 プリンちゃんが割って話に入ってきた。

 ( -`ω-)ムフー


「ま。その通りでな。後ろから押すような駆動方式だ。俺たちはこれとは違って4輪全部が駆動する4WDを使ってるんだ。」

「全部のタイヤが駆動するから確実に路面に動力が伝えられる。」

「じゃあみんなそれでいいじゃない。」

「そしたらコストが跳ね上がる。俺たちの世界では車はこの世界ほど高くはない。だから安く作ることも必要だったんだよ。」

「へぇ?」


 そういった会話をしていくうちに彼らの頭上に太陽はすでになく、西にゆっくりと沈んで行っていた。


「今日は野宿だな。」

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