53:全てを変えたのは美しい花火。
プレアデスたちがリーラ様と接触する半年前のことだ。
俺たちは首都の頭上で花火をするということで少し遠くから見た方が綺麗だとリーラ様達に言った。
すると護衛兼武術指導役兼俺と同じ付き人のシルトも連れてきた。
リーラ様は助手席にいるがシルトは後部座席でじっとさせておいた。
「花火ってそもそも何?」
「確かに。私も初めて聞いたわ。」
「花火ってのは火薬を詰めた球を空に打ち上げてそれを空中で爆発させます。」
「それでは真下の民が死んじまわないですか!?」
シルトが身を乗り出して俺に聞いてくる。
「観賞用だ。基本的にはかなり高い高度で爆発させて広がる火を楽しむものだ。火薬をどう詰めるかが職人の腕の見せ所らしいぞ。」
「そういうものなのね。」
「ああ。綺麗なもんだぞ。あと、音も迫力がすごいもんだ。」
「それは楽しみね。」
「それなら近い方がいいのでは?」
「一定の距離が離れた方が全体が見える。そっちの方がいいだろう。」
「アンタがそういうならいいけど。」
「ああ。花火はちょっと離れたところから見えるのが俺はベストだ。」
〘花火と言えば甲人が告白して声がかき消されるのまでが1セットだな。〙
「漫画の中だけだろ。」
〘それもそうか!〙
ランエボは軽く笑う。
「よし。これくらいでいいか。」
ランエボは国から何キロか離れたところに停車する。
平志はランエボのエンジンを切り、3人は降りた。
その辺りは静まり返り、虫の鳴き声が音を支配していた。
「綺麗な鳴き声ね。」
「本当ですね。偶には外で散歩してみましょうか。」
「音も光もここから花火が支配するぞ。」
それにまるで呼応するかのようにヒューと音を立てて1本の光が上がる。
「あれは……?」
その日かろが目いっぱいまで上がると轟音を立てて巨大な火の花が美しく咲き誇った。
「……きれい。」
「これが観賞用の………!」
「まさかここで花火が見れるとはな。」
花火は次々と打ちあがる。
「……ん?」
なんだ?この違和感は。
普通花火が爆発したなら少なくとも煙がそこに残る。
だが、そこには何も煙なんてものはなかった。
「いや違う。煙が……落ちている?」
煙は市街地へと沈み、充満していた。
「リーラ様!シルト!逃げるぞ!」
「なぜ?」
「あの花火は何かおかしい。良い作用があるならいいが、折れにはどうにもそうは見えない。触らぬ神に祟りなしだ。逃げるぞ!」
その後、煙が収まるまで一夜を過ごすこととなった。
「ヘイジ。貴様の車を私に献上しろ。」
「嫌だと言えば?」
「殺してでも奪うのみだ。」
「お父様!ヘイジを殺すのは私が許しません!」
「黙れ。私の言うことは全て。何物にも覆せはしない。」
「そもそもあのクルマはリーラ様の執事として必要なもの。献上することはできません。」
「ならば。」
「そもそも。私は貴方の支配下にあるもの。それにだれが運転するのです。あれは情人では扱えない代物。それは貴方も知っていることでしょう?」
「……そうだな。それならば貴様を第3王女の執事を解任し、私の直属とする。」
……壊れ始めた。
歯車が、狂った。
あの花火が、壊した。




