50:ヘイジ・ハイゼ
俺たちは駐車場にランエボを止め、それはもう豪勢な城へ向かった。
「すごい豪華だな。」
「その割にはキョロキョロしないのね。」
「それをしたら田舎者丸出しで舐められると聞いた。」
「……あながち間違いじゃないわね。」
リーラの後ろをレーシングスーツを着たままコツコツとついて行く。
「……着替えたい。」
「確かにその服はちょっと特殊ね。けど向こうでは普通なんでしょう?」
「いや全然。」
「( ,,`・ω・´)ンンン?」
「レース用の服。」
「そうなの?」
「うん。」
「えぇ…」
ただもう引き返すことはできない。
「……何処に行ってるんだ?そもそも。」
「玉座の間よ。」
「え。」
するとリーラの足が止まる。
ずいぶんと大きい扉が目の前に立ちはだかる。
「まさか。」
「ええ。ここよ。」
「気持ちの整理をさせt」
ガキィィィィ……
その大きな戸はリーラの手によってあけられた。
「え。ちょっと……!?」
「行くわよ。こんなところでつまずくんじゃないの。貴方はあの賊に恐れ慄くことなく引き離したんでしょうに。」
「いや、それとこれとは……」
「いいの。ほら、年上なんだからシャキッとして。」
精神年齢は大人以上だな。
これが本物の貴族かぁ。
あ。惚れそう。
けど俺は大人。10歳かそこらの少女に28の大人が惚れるのもな。
「確かに。年上……え?」
ちょっと待て。普通大の大人って言い方をするんじゃないのか?
なのに私より年上……まさか。
平志は自分の手を見る。
小さい、幼い。
まさか、若返ったのか……?
「……そなた、名を申せ。」
椅子に座っている男がまだ入ってすらいない俺にそう声をかける。
(偽名を言いなさい。異世界人ってバレてはまずいわ。)
なんだこれ!?リーラの声が心に直接……!?
「……ヘイジ……ハイゼ……です。」
「ヘイジ・ハイゼか。覚えた。まずは入るとよい。」
俺は言われた通り玉座の間へ入り、リーラの斜め後ろで膝をつく。
「時にハイゼよ。そなたは我が娘リーラを救ってくれたと聞いている。」
「ええ。」
「いったいどのようにして?」
「賊に追われていましたので私の持つクルマで。」
「ほう?」
「ランサー・エボリューションという名の。」
「良い名だ。時にヘイジよ。」
「なんでしょう。」
「私の下で働かないか?」
「それは……」
「リーラは今心を閉ざしてしまっている。君なら閉ざした心を開いてくれると信じている。頼めるか?」
「それなら構いません。」
「それでは明日から頼んだぞ。」
「ええ。」
おかしい。俺の知っている国王とはまるっきり性格が違う。確かこの時点で親からのプレッシャーはあったはず。
俺の知らない所で受けているのか、はたまたそれとは別なのか……。
分からんな。まだ。
まぁいい。これからその原因をじっくりと突き止めて行けばいい。
幸い俺には時間がたっぷりあるんだ。
一体どう転がるのか。それは全て俺に委ねられる……か。
面白い。この盤上をどう転がすか。
考えものだな。




