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44:平志とリーラ。

「一体……なにが……!?」

「僅差で勝ちましたね……!」


 貴族ママは一旦胸をなでおろした。


「これでなんとかプレアデスの全て(インプレッサ)が持っていかれることはなくなったわね。」

「ええ。」


 インプレッサがゆっくりとピットに入ってくる。

 ランエボもゆっくりとその後ろにくっついて入ってくる。


「なぁ。一体何をやったんだ?」

「とっておきって言ったろ?」

「まさか本当にあるとは思ってなかったんだよ。心理的な揺さぶりと思ってすぐ切り捨てたからな。」

「なるほどな。」

「結局何だったんだ?あれ。」

「(。´・ω・)ん?スクランブルブースト。」

「……へ?スクランブルブースト?」

「おん。」

「インプレッサに?」

「おん。」

「マジか……」

「メカ的な話はおしまい。それで。俺が勝ったわけだけど。お前来る気ないだろ?」

「………ああ。」

「やっぱそうか。」


 俺はあちゃーと言い、額に手を当てる。

 やっぱなんかあるんだな。

 俺の知らない事情とか。


「リーラ様なんだが……」

「ああ。プリンちゃんね。」

「プリン……?」

「ま。いいのいいの。で、なんだよ。何があったんだ?」

「それは……言えない。」

「おいおい。俺の優勝景品を蹴るんだ。理由くらい聞く権利が俺にはあるはずだぞ?」

「……いいのか?俺を連れて行かなくて。」

「お前がそこまでプリンちゃんについて行きたいならプリンちゃんの下につけばいい。」

「そうか……!」


 平志は心の底から嬉しそうに答えた。


「で。結局理由を聞いていないわけだが。渋って蹴った理由を。」

「……そうだな。」

「とは言っても結構シンプルな理由だ。」

「危なっかしいんだよ。リーラ様は。」

「危なっかしい……?…あ。」

「心当たりがあるらしいな。」

「賊からSSLで逃げてたわ。」

「はぁ……こんなことになりかねないからこそ離れるわけにはいかないんだ。」

「なんだお前。プリンちゃんに惚れ込んでるのかぁ?」

「……」


 あらら。

 平志の顔が真っ赤になったぞ?


「当たりか!ハッハッハ!若くていいじゃないか!」

「お前だって若いだろ。」

「何言ってんだ。俺は33だぞ?」

「見た目と実年齢がかけ離れてないか?」


 ルームミラーで自分をよく見る。


「……ホントだ。」

「気づいてなかったのかよ……!?」

「まぁ。鏡はそんななかったしな。」

「カーミラーあるだろ!?」

「見てなかったわ。」

「自分に興味が無さすぎる……コイツ…!」

「まぁ。暇だったらこっちに顔を見せてくれよ。俺はそろそろ貴族ママに行かないといけないもんでな。」

「……貴族ママ?」

「そうそう。」


 プレアデスはそう言うとインプレッサに乗り込み、その場を後にするのだった。


「……貴族ママって誰?」


 一人取り残された平志はぽかんと頭に?を浮かべて思わずつぶやく。


「よく頑張ったわね!平志!」


 リーラが平志に後ろから抱き着く。


「ひゃい!?」

「…どうしたのよ?」

「……ナンデモナイデス。」

「変なの。」


 リーラは平志に顔をうずめる。


「リーラ様?どうしたんで……」


 かすかに聞こえる。

 小さく、泣き声が。

 それは目の前のこの少女から聞こえてくる。


 それも無理はない。今まで孤独で誰からも相手にされなかった彼女にとって平志はかけがえのない唯一の存在であり、唯一心を許せる相手であったのだ。

 そんな彼はもうすぐ自分のもとから去ってしまう。

 それは彼女にとって耐えがたく辛いものであった。


「出て行っちゃ嫌!」

「!」

「出て行っちゃ……いや……!」


 そうか。リーラ様は怖いんだ。

 また、ひとりぼっちで孤独に誰からも相手にされず、冷たい目を向けられ、優しく接していてもその内は冷え切ったその世界が。


「……リーラ様。」

「嫌!聞きたくない!」

「リーラ様。」

「聞きたくないの!」

「リーラ様!」

「喋らないで!」

「私は、貴方のもとから離れたりは決してしません!」


 平志はリーラにハグを返し、その宣言をした。

 一瞬の静寂。


「……ほんとぅ?」

「ええ。本当ですよ。」


 リーラは平志に抱き着き、10代半ばの小さな泣き声が当たりに木霊するのだった。

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