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43:とっておき

 2台が貴族ママの目の前を通り過ぎるころには再び車間がかなり開いていた。


「やっぱりプレアデスが離されてるわね……」

「ええ。ですが何か違いますね。」

「違う?」

「ええ。なんだか、纏ってるオーラが違うんですよ。」

「オーラ?貴方そんなのがわかるの?」

「オーラというか雰囲気ですかね。」

「どんな雰囲気なの?」

「ええ。前のクルマは手慣れ、このコースを熟知した雰囲気ですね。それに、まだまだ余裕がありそうですね。」

「プレアデスは?」

「……余裕がありませんね。」

「それって……!?」

「ええ。何とかくらいつくので精一杯というのが正しいですね。」

「それで本当に勝てるのかしら……?」

「確かに食らいつくので精一杯ですが、諦めてはいませんよ。意地でもくらいついて追い抜いてやるという気持ちを感じましたから。」

「!」

「まだ、諦めていませんよ。プレアデスさんは。」

「……そうね。あいつに諦めるという感情は無いわね。」


 バンバンバン!


「……というかあの音何ですか?」

「分からないわ。一体、何をしたのかしら。本当に。」



「なぁ……平志さんや。」


 プレアデスはインプレッサの車内でニヤリと笑みを浮かべながらランエボを見つめる。


「アンタの車だってWRCマシン。性能はほぼ同じ。ならさ……」


 ハンドルを握りなおす。


「アンタが曲がれる速度なら俺だって曲がれるだろう?!」


 インプレッサはそれにこたえるようにマフラーからバックファイアを起こす。

 バンバンと音を立てて。


「アンタとのレースだ。ミスファイアリングシステムはもちろん動かすさ。」


 ランエボと同じタイミング、同じブレーキ加減、きっちりとした荷重移動を丸々コピーし、ランエボにピタリと張り付く。


「張り付かれた……!動きをコピーされて離れないッ!」


 だが、ギアチェンジで僅かに離せる。このまま、このまま!


「離れてやるものか……!」


 2台はコークスクリューを見事にクリアし、最終コーナーへ向かってゆく。


「次が……」

「最終コーナー。ここで仕掛けるしかない!」


 インプレッサがランエボのイン側につき、勝負を仕掛ける。


 平志、勝負だ!


「何やってる!オーバースピードだ!インプレッサが路面からはがれて外に吹っ飛ぶぞ!?」


 行ける!

 このスピード。このライン!

 間違いない。曲がる!


「行けぇぇぇぇぇ!!」


 インプレッサは地面をしっかりと捕まえ、するりとランエボのインに滑り込み、クルマの半分ほどが前に出る。


「くそ。だが、まだだ……!シーケンシャルの加速ですぐ前に出る!」


 平志の宣言通りランエボはインプレッサのシフトチェンジの失速を気にせず加速していく。

 インプレッサはあっという間に追い抜かれてしまう。


「まだだ!スクランブルブースト!」


 7速に切り替えたその直後にハンドルに増設されているボタンを押し、インプレッサはいきなり加速してゆく。

 ブースト計は今までの1.8から2.0へ。

 その加速はあっという間にランエボの隣にピタリと横付けする。


「なんだ……!?この加速は!いったい何をしたァ!」


 インプレッサは加速を止めることはなく、ランエボを鼻の先の僅差で追い越し、チェッカーフラッグを受けるのだった。

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