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39:タイムリミット

 もう8時だ。

 そろそろ到着していないとまずい時間帯だ。

 なのになぜ来ない?

 勝負を投げたのか?

 そんなはずはない。あいつがそういう性格ではないのは俺がよく知ってる。

 何かあったのか?

 ……久しぶりに携帯を使ってみるか。

 あいつに電話を繋ぐ。


 プルルルルル……ジッ


《お。久しぶりだな。どうした?》

「お前、いつまでにくればいいのかわかってるのか?もう8時だぞ?」

《おいおい。朝8時だぞ?あと4時間はあるだろ?》

「それがわかっているんならいいんだが……」

《流石に自分で言ったんだから覚えてるさ。》

「そうそう。お前のいない間に俺が勝てばお前のインプレッサをこっちの国が貰い受けることになってるぞ。」

《は?》

「こっちの国の王、強欲でな。俺だってランエボとられないように悪戦苦闘したさ。その結果俺はあいつの言いなりって訳さ。」

《じゃあ俺が勝ったらお前ごとランエボを頂戴する。》

「は?」

《これで条件は同じだ。》

「お前分かってるのか!?負けたらクルマがなくなるんだぞ!?今からだっていい。棄権するんだ!」

《なるほど。お前が手を抜くという方法は無いんだな。ま。手を抜かれて勝つのも癪だしな。俺は何も曲げないぜ?正々堂々バトルさせてもらう。》

「この……馬鹿野郎……!」

《それじゃあな。俺も急いでるんだ。》


 ツーツーと電話が切れた短調的な電子音が鼓膜を叩く。


「くそっどうすれば……!」


 俺が折れてこの国に身を置いたことには理由がある。

 それは…それは……!


 すると、プレオがピットガレージに入ってくる。


「プレオ?どういうことだ?」


 降りてきたのはあいつの助手席に乗っていた魔女だった。


「あら。プレーンはとっくに出発して追い抜いたと思っていたのだけど。まだ出発していないのね。」

「ええ。まだ彼は出発していないようです。」

「アンタは?」

「喜田川平志です。よろしくおねがいします。今回彼、プレアデスさんと走ります。」

「へぇ?プレーンと。ってことは例のランエボ?って奴のドライバーね。」

「彼から聞いていたのですね。」

「ええ。性能的に圧倒的に敗北してたのは覚えてるわ。」

「それではまだ420馬力と?」

「え?320って聞いたけど。」

「320!?」


 あいつ、デチューンしたのか!?

 そんな状況でやるなんて自殺行為且つ絶望的じゃないか!

 なんでそんなことを……!?

 なにか勝算でもあるのか?


「間に合うかな?」

〘It’s okay. We’ll definitely make it in time!〙


 プレアデスは猛スピードでラグナ・セカへ向かっていた。

 ちょっとしたストレートですら時速200キロを叩き出す。

 まるでWRCのように。


「もう時間が近い。あいつ、棄権すると言わなければ俺の不戦勝になっちまうぞ?」


 オオオオオオン……オオオオオオン!


「この音は……!」


 インプレッサがコースに入り込んでくるとランエボの隣にピタリと横付けする。

 そのインプレッサからはプレアデスが降りてくる。


「よっ!」

「お前……」

「始めようか。そのほうがいいだろ?」

「……タイヤと燃料を変えとけよ?」

「へ?」


 ほんまや。

 タイヤ擦り減っとるぅぅぅぅぅ!

 それに燃料も結構なくなってたァァァァァァァ!


 *タイヤと燃料を更新した!*


「オーケー。終わったぜ。」

「よし、始めるぞ。勝っても負けっても恨みっこなしだ。」

「ああ。もちろんだ。」

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