37:次の頂点へ、進化していく。
「・・・。」
父上が何か険しい表情をしている。
……何か嫌な予感がする。
「……”あれ”を出せ。こんどは”あれ”と戦ってもらう。」
「”彼”が走るのですか!?いくらなんでも無理です!」
「それなら我々の技術力を示せる。」
「っ……!」
プレオが止まり、プレアデスが中から出てくる。
「ふぅ。こんなもんかな。」
SSもその隣に止まり、フィリップが降りてくる。
「いい勝負だった。ありがとう。」
「こちらこそ。」
二人は再び握手を交わした。
その、直後のことだった。
ウォォォォン!ウォォン!
甲高く、腹に響くような音が鳴り響く。
「なんで……。」
フィリップはその音を聞くと言葉を失った。
「まさか。」
まさか、”あいつ”の……!
そのクルマが飛び出す。
「間違いない。あいつのエボⅥだ……ッ!」
その直後、純白のランエボⅥが彼らの目の前に現れる。
「……久しぶりだな。平志。」
「・・・。」
「にしてもずいぶんとガラスにスモークを入れたなぁ。こっちからはそっちは何も見えねぇや。」
純白のエボⅥは静かに何もしなかった。
「お前は分かるだろ?流石にプレオじゃあお前に勝てないことくらい。……ならさ。」
プレアデスは高々と宣言する。
「俺は!お前とッ!ザリア王国のウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカでお前と勝負するッ!」
「ほう?自分から彼と戦おうというのか。無謀なことを。それにしてもザリア王国のサーキットか。要請しておこう。」
国王はザリア王国へ連絡を取り付けに行くのだった。
「……さて。俺たちも急いで帰るか。たわしちゃん!急いで帰るぞ!」
「え?なんで?」
「現時点じゃあ勝てないからだ。」
「じゃあなんであんなことを……!」
「策がある。」
プレオのエンジンを吹かし、すぐさまその場を後にする。
「こっからは時間との勝負だ。かっ飛ばすぞ!」
「なんでそんなに急ぐのさッ!」
たわしちゃんはシートベルトを着けていなかったため、助手席で路面のギャップによってガタガタと揺れる車体によって助手席で何度も宙に浮いていた。
「もぅ!もっと丁寧に運転できないの!?」
「時間が無い!このまま飛ばす!」
「うそでしょぉぉぉぉぉぉ!?」
あっという間に去ってしまった。
プレアデスさん。貴方は”彼”を知っているのですか?
彼の過去を。
彼が頑なに語らないその過去を。
「平志。貴方は本当に彼と走るのですか?」
エボⅥの窓が開き、その男がリーラのもとを見る。
「ああ。もちろんだ。あいつが勝負をするといったんだ。俺のエボⅥのことは俺の次によく知ってる。あいつが無策で来る筈はない。間違いなくあのプレオは持ち出さない。十中八九、インプレッサだろう。一体何処まで進化しただろうな。あのインプレッサは。」
「いんぷれっさ?」
「あいつが持ってくるだろうクルマだよ。」
「そうなんですか。」
「それじゃあ車載車にエボⅥを積んでくる。」
「ええ。」
俺が最後に見た時はざっと420馬力。FDのシーケンシャルツインターボユニットをバラして構造を把握して自作してインプレッサ専用の特別仕様のシーケンシャルツインターボを搭載していたな。
コーナリング性能だか何とか言ってプライマリーに安定的加給するタービン積んでセカンダリーをドッカンターボにしてたのはどこのどいつだよまったく。
「あの時のあいつのGC8では俺に勝つのが難しいことくらいわかっているはず。……と、考えるとやはり以前以上のハイスペック品になってるんだろうな。」
何をやったんだか。
……楽しみだ。
シーケンシャルツインターボは簡単に言えば低中回転域で稼働するほどの小型のタービンを一つ目のタービン、プライマリータービンとし、高回転域になれば大型の高過給圧の二つ目のセカンダリータービンが起動するようになるターボシステムのこと。
搭載例はマツダ・アンフィニRX-7。3代目RX-7であり、様々な作品に登場している車。
ドッカンターボは過給圧が大きく、一度パワーを落ち込ませると回復までにかなりのロスが生じるが、その代わり非常に高出力な過給圧を得ることができる。




