36:制限解除
次回、クルマのキャッチコピーが題名だぞ!
37:次の頂点へ、進化していく。
……離れねぇ。距離を詰めてくる時ですら一定の距離を保ってやがる。
気味が悪い。
突き放したとしても曲がるときにはまた一定の距離まで接近してくる。
恐ろしい。
何かの次元が違う。
車の性能差か?
ありえない。
こっちは最新技術で作られたW06のSS。それもパワーでは圧倒的に勝っている。
性能で負けているところなんてものはない……
強いて言えば、ホイールベースの長さの差ってとこだ。
確かにホイールベースが短ければ旋回半径は短い。
ただ、それだけだ。
それ以外では勝っているはず。
……まさか。
「運転技術が負けているってことかよ……!?」
くそッ!
こんな……こんな……ッ!
ミラーに映る自分の背後にピタリと張り付くプレオが薄気味悪かった。
ただただ焦る中、2週目は終わる。
「さぁ。3本目だ。そろそろ仕掛けるか。まぁ、追い抜けるとは思っていないが。」
アクセルを踏み込み、みるみるとSSへと接近していく。
その小さな車体を震わせて加速していく。
「おい!3本目が来るぞ!」
「まずはSSか。」
やはりSSは鋭くコーナーを抜けていく。
その後ろから現れたプレオは何か先ほどとは違うオーラを纏っていた。
「なんだ……!?あの凄みは……!」
プレアデスはニヤリと微笑む。
「見せてやろう。ラリーストの突っ込みを見せてやろう。」
ブレーキを軽く踏み込み、再び1速のみギアを落とし、一瞬サイドブレーキを引いてリアを飛び出させると、カウンターを当て、アクセル全開でそのまま突き抜けていく。
「また半スピンしながらクリアしやがったッ!」
「それだけじゃねぇ、さっきより制動距離が異常に短い上に速いッ!」
……違う。明らかに2週目とは気迫が違う。
隙を見せれば突かれる!
こんな奴がいるなんて……!
「何なんだよお前は……!?」
「仕掛けるぞ。プレオ。」
SSがヘアピンですこしずつ外側へ膨らんでいく。
そそ空いたインサイドに無理も無駄もなくするりと入り込む。
「なッ!?」
「隙を見せたな?」
立ち上がりでプレオは横にピタリと並ぶ。
「サイドバイサイドだ。さぁ、どう出る?」
「舐めるなァ!」
SSはアクセルを踏み込み、立ち上がりの加速によってやはりプレオは後ろにつかざるを得なかった。
「勝負は4本目。そこでブチ抜く!」
「下がった……?殺気のような気迫を感じないぞ…?」
ホームストレートに差し掛かる。
「さぁ、プレオ。お前の全力を俺に見せてみろ!」
スイッチを150にセットする。
「150馬力。パワーウェイトレシオでも勝ったぞ?さぁ、逃げてみろ!」
プレオのエンジンからすさまじい過給音が鳴り響く。
ターボチャージャーの圧倒的な加速は誰もが自らの目を疑った。
「なんだ……!?何なんだ……!?この加速はッ!」
いきなり離れなくなった…!?
そんなことありえるのか?
何かをやったとしか思えない!
「来るぞ!」
「嘘だろ!?SSの後ろにあいつがぴったりと張り付いてやがる!」
「馬鹿な……!?」
SSがブレーキをかける。
「ブレーキポイントが早すぎるな。車が違うんだ。車が!」
SSの更に外から被せるようにプレオが飛び出す。
「何!?」
「ここで行かせてもらう。」
プレオは旋回するタイミングを遅らせ、立ち上がりにすべてをかける。
「スローイン・ファーストアウトだ。どう出る?」
「くそッ!追いつけない……!」
プレオはSSを華麗にオーバーテイクしたのだ。
「突き放すぞ。ついて来れるか?」
しかしSSがついて来れるわけもなく、あっけなく突き放されていく。
「なんなんだ……!あの車も、ドライバーもッ!」
フィリップは末恐ろしいものを感じ取ったのだった。
ホイールベースとは前輪と後輪の長さのこと。
短ければ小回りが聞く。逆に長ければ直進安定性が非常に高い。
ただ、今回のコースでは短い方が有利にはなる。
ラリーストとはラリー協議に参加するドライバーのこと。
ドライバーは運転手のこと。
サイドブレーキはパーキングブレーキともいう。
ただ、今回の物は俗にいうハンドブレーキである。
ヘアピン、ヘアピンコーナーともいうが、U字コーナーのことである。
スローイン・ファーストアウトとは、確実に車速を落とし、前方に荷重をかけながらターンし、ほぼ直線上にコーナー出口へ向かう走り方のこと。
立ち上がり重視のラインともいえる。
オーバ-テイクは相手の車を追い抜いたこと。




