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35:70年の技術の差

「1…GO!」


 2台が全速力で加速していく。

 しかしプレオは発進加速(スタートダッシュ)で一気に離されてしまった。


「ま。こんなものだろう。ただ、そう簡単に負けはしない。」


 スピードメーターは80km/hを指し示していた。

 たとえ74馬力で圧倒的にW06・SSが有利な条件である。

 しかし、エンジンの性能もそうだが、決定的に性能が違うものがある。


「たしかにエンジン出力はそっちの方が有利だろう。ただ、足回りの古さは隠しきれないぞ?」

板バネ方式(リーフスプリング)のお前とラリー屋の足(ストラット)の俺。どっちが限界領域は広いだろうなぁ?」


 2台は少しずつ離される。

 しかし、第1コーナーが迫ってくる。


「ここだ!」


 SSは流し走行としてはかなりのハイペースでブレーキをかけ、右へ旋回していく。


「流石メルセデス・ベンツだ!そんじょそこらの車とは次元が違うぜ!」

「次が来るぞ!」


 プレオが95km/hほどで突っ込んでくる。


「おい……あれ、オーバースピードじゃないか?」

「突っ込んでくるぞ!」


「見せてやろう。ラリー屋の流し走行を。タイヤを温めるのには十分だ。」


 プレアデスは左へ大きくハンドルを切った。


「おい!曲がる方は逆だぞ!?」


 プレアデスはすぐハンドルを反対に戻し、リアがずるずると滑り始める。


「馬鹿野郎!スピンしやがった!」


 観客は焦り、恐怖に顔を歪める。


「いや違うな。これは、フェイントドリフトだ。」


 プレアデスは冷静にそう言うと、アクセルを踏み込み、反対に再びハンドルを切る。

 プレオはその車体を滑らせながら大きくカウンターを当てた。

 そのままプレオは華麗にそのコーナーをクリアしていった。


「クリアしていきやがった……一体、何をやったんだ……!?」

「リアを滑らせながら半スピン状態で見事に立て直していきやがった……。」


 プレオはじりじりと詰めていく。


「結構突き放しただろう。」


 フィリップはふとミラーを覗く。

 フィリップはそこには何も映っていない物だと思っていた。

 しかし、現実にそこに会ったものは、


「馬鹿な……!?」


 食いついて離れないプレオの姿だった。


「ありえない……まだ流しとは言えど、良い感じにタイヤも温まってきているんだ。そんなことがあり得るのか……!?」


 フィリップはギアを切り替える。


「ただ、まだ負けたわけじゃない。このコースはタイヤの温まった2週目からが本番。タイヤの温まったSSを舐めるなよ…?」


 フィリップはアクセルを踏み込み、スーパーチャージャーが起動し、プレオを引き離しにかかる。


「そうこなくっちゃな。さぁ、見せてみろ。その車の限界を!」


 プレオの離され方は尋常ではなかった。

 馬力の暴力は恐ろしいものだ。


 さぁて。2週目突入だ。

 レースでは前を走るより後ろを走る方が精神的に余裕が生まれる。

 マ〇カーだって後ろから後ろから何が飛んでくるか注意しなければならない。

 ただ、後ろを走っていればそんなことは気にせず前にだけ集中できる。

 長期戦において後ろは圧倒的有利なんだ。

 これはレースのセオリーってもんだ!


「2週目突入。ここからはSSの全力を以って叩き潰す!」


 フィリップは第1コーナーに突入する。先ほどよりブレーキポイントを奥に取り、短距離で制動させる(レイトブレーキング)


「すげぇ!なんだあの減速!?あんな短い距離で曲がれるものなのかよ!?」

「次がくるぞ!」


 次プレオが現れた時は左のギリギリまで寄せていた。


「今度は何だよ…!?」


「第1コーナーか。」


 プレアデスはクラッチペダルを踏み込み、ブレーキを足先で半分ほど踏み込み、ブレーキペダルを軸にしてアクセルも踏み込みながらギアを落とす。

 そう。ヒール&トゥだ。

 その動作を1度だけ行った。

 その結果プレオは5速から1速しか落とさず、4速で道路幅のいっぱいいっぱいを使って殆ど減速することなく旋回した。


「信じらんねぇ……なんであの速度で曲がれるんだ!?」

「……道路幅を端から端まで使うラインか?アウト・イン。アウトを忠実に守った……ということか!」

「そんな……馬鹿な……!?」


 プレオは決して離されることなくピタリと張り付いていたのだった。

 オーバースピードっていうのはコーナーに曲がるとき、曲がれる速度をはるかに超えた速度のこと。

 その為、レーシングカーでは曲がる前にブレーキをかける。


 また、スピンとはリアタイヤが滑り、クルクル回ること。

 それが半分行われていたため半スピンと言っていた。


 フェイントドリフトとは、まず曲がる方向とは反対に切って車体を大きく振り、そこから本来の向きへ向くことで振り子のようにリアを振り出すドリフトのこと。


 カウンターとは、ドリフトしている最中に反対側にハンドルを切る操作のこと。


 メルセデス・ベンツ・W06・SSはアクセルを一番奥まで踏み込むとスーパーチャージャーが起動するようになっている。


 ブレーキポイントとは、ブレーキをし始める地点のこと。


 例とブレーキとは、他の車より短い制動距離でブレーキを強くかけ、他社がのんびり減速している最中に一気に横に並ぶための技術。

 へたをすればコーナーに突き刺さる。


 ヒール&トゥはブレーキをかけながらギアを落とすときに使う技術のこと。


 アウト・イン・アウトとは、コーナー進入時にはアウトサイド、つまり外側に寄り、曲がっている最中はインサイド、つまり内側に寄り、コーナー脱出時にはアウトサイドにもどることで限りなくハンドルを切らずに曲がる走行ラインのこと。

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