12:Let’s do this!
インプレッサは急加速していく。観客はその光景に目を疑った。
「なんだありゃあ!?」
「信じられねぇ……ホントに人が作ったものなのか……?」
そう呟くと、インプレッサはラグナ・セカ第1ヘアピンに猛スピードで突っ込んでいった。
「おい!あれじゃあ減速間に合わないぞ!?」
インプレッサのブレーキランプは一瞬。それだけでひょいと旋回してのけた。
「嘘……だろ?」
それを見ていた女性は団扇で仰ぎながら呟いた。
「やはりプレアデスのあの魔導車は特殊ですわね。」
もちろん貴族ママだ。
「まさかあれほどとは……少し侮っていました。」
中性天然水は目を見開いていた。
「あれの本領発揮ですわね。」
「いっけー!いんぷれっさ!」
「がんばれー!」
二人はまるで遊園地のヒーローショーでも見ているような応援をしていた。
「……子どもたちは大はしゃぎですわね。」
「ルークくんも、リーシャちゃんもあの魔導車を応援しているんですね。」
「確かにあれは速かったわ。肝が冷えるくらいには。」
「え。」
現代でいう絶叫コースターのようなものだ。
無理もない。
目の前に茶色い何かが走っていた。
「あ。馬だ。」
馬はざっと時速40キロほどで巡行してそうだった。
「やっぱゆっくりだな。それくらいしないとな。」
そう横目にあっという間に抜き去っていく。
「そーれ。第5コーナーだ!」
しっかりと減速し、インプレッサは無理も無駄もなくきれいに旋回していく。
「そーれ。アウトインアウトー!」
そうしてインプレッサはあっという間にラグナ・セカの名物。コークスクリューに来ていた。
「コークスクリューは結構危ないんだよな。」
コークスクリューはかなりの難所。
左へ曲がればすぐさまかなりきつい下り坂が出現し、すぐ右に曲がるという先を知らなかったらびっくりどっきりのトリッキーコースなのだ。
それを知っている俺はそんなに驚かないが。
うん。グ〇ンツーリ〇モは偉大だ。
さて、話は移り変わって既に魔導車が1周目を終えていた。
「さすがにレース用魔導車。かなり性能はいいわね。このコースをもう周回してきたわ。」
貴族ママはその技術力に感心していた。
「どうやら1周に130秒程のようです。」
「速いわね。あれだけスタートに遅れてたらやはり、プレアデスは勝てないのかしらね。」
少し残念そうに呟いた貴族ママに中性天然水はしかしと言った。
「あれだけ速いのです。そう簡単に負けるとは思いませんが。」
ォォォォォォン……オオオオオン……ゴオオオォォォォォ!!
「まさか。」
最終コーナーを抜けて現れた蒼穹を纏った車。そう。インプレッサだ。
颯爽と現れたインプレッサは魔導車より遥かに速い速度でホームストレートを走り抜けていく。
「……175秒。」
中性天然水は小さくつぶやいた。
「え?」
「今のラップタイムです。彼は、このコースをスタートして175秒で戻ってきたのです。待ち時間も含めて、で。」
空間が凍り付いた。
「うそ……そんなに……!?」
「とんでもない魔導車ですね。あれは。」
「あんなもの、一体どこで手に入れたの……!?」