10:インプレッサ。力を示せ。
そうして次の日。
俺はどこで寝てたのかって?
ベンチ。
整備士はその日で寝泊まりするときにベンチで寝泊まりするもんだ。毛布をかけて眠るのは案外床で寝るのと同じくらい心地いい。
え?結局堅い?確かに。
ちなみに作者は枕が無くても右腕を枕にするから問題ないらしい。
更にその次の日感覚がなくなった上に頭をどけたらすごい腕がしびれることが稀にあるそうな。
そんなこんなで俺はそのコースへとインプレッサを運んでいた。
「ここかぁ。」
俺からすればまずインプレッサが負けることはないと思う。
国王陛下もそれくらいわかると思うんだが。
イメージが湧かなかったのだろうか。
にしても、結構複雑なコースだ。
形としてはラグナ・セカみたいだ。
というかまんまそれじゃないか?こんなものを国の郊外に置いているのか……
……嘘だろ?どんなレース好きだよ。
「馬力は320の方で十分だろう。燃費が心配だ。」
ただアスファルトがあるっていうのはどういうことなんだ?
この感じからして石油はない感じだが。そういう(アスファルト精製)技術はあるのか?
興味ある。
そして1匹と2台はスタートグリッドに並んだ。
順番はポールポジションが馬、次に魔導車、そしてインプレッサか。
初めて見たが、魔導車という割にはかなりしっかりしている。
今はとりあえずスタート位置に各車両を置いただけだからな。
ただ俺はその魔導車を見てかなり驚いた。
「なんだこりゃあ。ブレーキはないんじゃないのか!?」
魔導車にはゴムが使ってあった上に、ホイールの奥にはディスクブレーキが覗いていた。
「なんであるのに一般の物で使わないんだ?特別仕様なのか?」
その頃、ある青年が呟いた。
「なるほど。スバル・インプレッサのWRX、STI。それもバージョンⅥか。こりゃ勝ち目がなさそうだ。音からしてかなりのチューンドだろうな。」
その青年は身なりが整っていた。
まさしく貴族であろう。
「俺たちが作ったあの魔導車ですらせいぜい68馬力のトルク60kgmなんだ。にしても魔導エンジンのトルクの太さには手を焼くよ。軽自動車並みの性能でスポーツカーとやり合うのは無茶が過ぎる。」
はぁ…とため息をついて青年貴族は続ける。
「負けるな。この勝負。いくら930kgの軽量車体とはいえどな。」
「主様。そろそろお時間です。」
「そうか。それじゃあ乗り込んでくるよ、カーシャ。」
「行ってらっしゃいませ。ヒューズ・アルバート様。」
「ああ。行ってくるよ。」
レース開始まで残り数分を切った。
普通は車の中だろう。ただ、俺が想像もしてなかったことがある。
「いや……まさかさ……」
俺はコースのど真ん中に立っていた。
その隣には豪華な服に身を包んだ18歳くらいのお貴族様と騎手が立って居た。
「ル・マン式スタートかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」