107:RX-8、猛威を振るって。
「おねえちゃん。頑張って。」
「もちろん。勝ってくるわ。」
窓を閉め、RX-8の回転数が7000回転をキープする。
5、4、3、2、1。
「スッタートォ!」
それを聞き届けるや否や、RX-8は急加速し、一つ目のコーナーをひょいと旋回する。
GC8とは全く違う旋回。
RX-8特有のアドバンスドフロントミッドシップレイアウトが引き起こす旋回性能は現代のスポーツカーにも引けを取らない。
それに加わる天才的なドライビングセンスが現代のハイパワーマシンと対等に渡り合うことができるほどのポテンシャルを秘めていたのだ。
「右に、左に。こんなコースを先輩たちは走っていたんですね。」
全力で攻めるのはとてもじゃないができる気はしない。
片や崖、片や壁。
そんなトリッキーなコースを攻めていた先輩達には脱帽しますよ。
そして、極度に短い。
だから、もうゴールですね。
「今、GRヤリスのファステストラップを抜き去って、ゴールッ!」
「3台の争いはRX-8の完全勝利となりましたぁ!」
「彼女もRX-8をよーく熟知していらっしゃる。ガードレールギリギリをドリフトして流していく。生半可な度胸じゃできない技ですね。」
「初めてのコースというのもありますし、彼女も恐らく全力を出し切れたわけじゃないでしょうし、それを考えると末恐ろしいタイムですよ。」
「ええ。かつてGC8が叩き出したタイムに近いですよ。」
「GC8?インプレッサですか。その人は今回出ていないのですか?」
「彼は12年前に事故死されたようで。」
「それは……ご愁傷様です。」
「今回のRX-8の彼女はそんなGC8のドライバーの後輩だそうで。」
「なるほど。そうだったんですね。その人が技術を教えたんでしょうか。」
「きっとそうでしょう。」
そんな会話を車から降りてきていた葉月が聞いていた。
「先輩もまたもう一度日の目を浴びれましたね。」
「おねえちゃん!優勝だね!優勝!」
「そうだね。莉奈ちゃん。」
「私も5位とったよ!5位!」
「そんなに若くして5位を取るなんて、将来有望だね。」
「えへへ。でしょ!」
「ええ。」
葉月は莉奈に優しく微笑み、「さてと」と呟いて膝を叩き、立ち上がる。
「キャリアに積んじゃいましょうか!」
「そうだね!」
彼女らは車をキャリアに詰め込み、会場を後にするのだった。
「そういえばさ。」
「どうしたの?」
「どんな人だったの?インプレッサの人って。」
「すごくユニークで面白い人でしたよ。」
「面白い?」
「ええ。会えばわかるんですけどね。」
首都高で彼女らはのんびり、ガレージへと向かっている最中のことだった。
横から1台、蒼い車が追い抜いていった。
「あれがインプレッサだよね。」
「そうだ……ね!?」
「どうしたの?」
「あのインプレッサのナンバー……!」
「あっ私たちと同じだね!」
「違うの。あのナンバー、先輩のインプレッサと同じなのよ……!」
「え?けど、先輩さんのインプレッサって……」
「事故ってどこかに消えたわ。」
「な……なんで、そこにいるの……!?」
「本当に。」
その直後、インプレッサの前で事故が発生した。
強引に車線変更しようとした車がバランスを崩し、スピンしたところに車が突っ込んだ事故。
まさしく大事故。
インプレッサも巻き込まれてしまうと誰もが悟ったその、直後のことだった。
インプレッサは突っ込んだ車たちを軽くドリフトし、ひらりと躱して通り過ぎ去っていったのだ。
「……すごい。」
「あの動き……先輩そのものだ……!」
「それって、どういう……!?」




