8:王都ぶらぶら。貴族ママと中性天然水。
ということで。王都をぶらぶらするぶらぶら旅に出ちゃいましょう。
待っててインプレッサ!君の燃料はちゃんと作って見せるよ!
「すごく上機嫌そうですね。」
「まぁな!これでインプレッサの燃料問題は解消したといっても過言ではないしな!」
「ところで何をするのですか?これから。」
「そうだなぁ……まだ考えてないかな。」
「それでは一度城へ戻りましょう。そもそも貴方はお金を持っていないでしょう。」
「よく分かったな。」
「あの口ぶりからするにお金は持ってなさそうだったので。」
「それじゃあ俺はインプレッサの点検でもしておくとしよう。」
「貴族ママ………ですか。」
あの方、プレアデス以外にそんな呼ばれ方はしたことがありませんでしたね。
そう考えるとプレアデスは不思議な方ですね。
あの魔導車にだけは真摯でいて隙が無い。
それでいて他のことには隙だらけ。
武術もしてない動きで一般人と比べてごつごつとした手。
人にはまったく興味を持たない。ただただ魔導車に全ての情熱を注いでいる。そんな風に感じてしまいます。
初めて会った時にはごつごつとしていてズボンと上着が一体化したような服を着用していましたわね。
来る前に急いで着替えさせましたが。
村で服が売っていて助かりました。
プレアデスを私の従者にできないでしょうか。
「……なんだか、無理そうね。」
プレアデスの情熱は全てあれに向けられたものだから。
「……それにしても彼の魔導車。あれは本当に魔導車なのかしら。」
普通の魔導車は非常に静かです。
しかし、あれは腹の底から響くような唸り声をあげる。まるで生きているかのような、そんなものを感じ取ってしまいます。
本当にあれは魔導車なのでしょうか?
異世界の魔導車なのでしょうか?
異世界は優れているようでこちらに劣っているのでしょうか。
私たちにはわかりませんね。
コンコン。
「要件は?」
「ルーシャル様。マシューでございます。」
「ああ。極秘騎士団の。入りなさい。」
「失礼します。」
マシューはルーシャルの目の前に立つ。
「腰を掛けて構わないわ。」
「それでは失礼します。」
「要件は?」
「プレアデスさんに行ってみればと言われましたので。……ところで御子様は?」
「中庭で遊んでいますよ。にしても第4王子が騎士団長を務めている極秘騎士団が何の用ですか?建前なしでも何かあるのでしょう?」
「ええ。ルーシャル・ローリンソン伯爵夫人に話が丁度ありました。」
「要件を。別に私は王子であっても然るべき場所でないのであれば基本的に皆同じ対応をする主義ですので、口調修正はあきらめくださいまし。」
「それは気にしていませんよ。私が気になっているのはルーシャル様。貴方は彼にどのようにして会ったのでしょう。」
「あら。彼の素性が気になっているのかしら。」
「ええ。彼は何処から現れて何処で過ごしていたのか。それを知りたいのです。」
「残念ですが、私たちが出会ったのは賊に襲われ、出られなくなった所を救出されたのが初めての出会いですので素性に関しては何も言えることではありません。」
「なるほど。承知しました。それでは、ここからは世間話としましょう。」
「ええ。」
張りつめていた空気は解け、ゆったりとした空気が流れる。