100:これがモナコ・モンテカルロとアルピーヌA110
ハイ、アンフィニ祐です。
100話記念で文字数倍増させました!
「張り付いて行かせてもらうぞ。アルピーヌ!」
インプレッサはアルピーヌの後ろにピタリと張り付く。
アルピーヌはそれに全く動じることなくまりも無駄もなく旋回する。
それに対して車体を思い切り振り回して旋回するインプレッサ。
「走り方とセッティングが根本的に違うか。」
〘I’ve never seen anyone drive like that...!〙
一方、ランエボはというと。
「おいおい嘘だろ!?」
プレアデスの後ろに張り付いては居るものの、911とジュリアに追い回され、とてもではないが2位を狙える状況ではなかった。
「パワーがありすぎるのも考え物か……。」
このパワーなら絶対制御できる自負はあったんだが、とでもじゃないがこんなところでそんなパワーをF1出もないのに振り回せる自信はもうない。
ランエボは上位争いに入るのを半ばあきらめるのだった。
しかしインプレッサはあきらめてはいない。
A110に追いつこうと必死に走る。
1位の座を奪い取ろうと必死に手を伸ばす。
しかしどうしてもそれはひらりと躱されてしまう。
そんな気がしてならなかった。
「遊ばれてる……そんな気すらしてきたよ。」
旧車なのにインプレッサと張り合える時点でおかしいものなのに、こんなに余裕たっぷりとして走れるだろうか。
「何か……違う。根本的に。」
走りの帝王かよ。アンタは……!
A110はまるでジェットコースターのようにモナコを攻めていく。
それに対してプレアデスはドリフトで何とか追いつこうと踏ん張る。
しかし限りなくロスの少ない走法とロスが多い走法ではどうしても差が出来てしまう。
どうしてもコーナー立ち上がりでワンテンポ遅れてしまうのだ。
考えているうちに景色が変わっていた。
「トンネル……か。」
この先にはヌーベル・シケイン!
壁に刺さりかねない危険なコーナー……アンタはどうやるんだ?
プレアデスはハンドルをぎゅっと握り、左足をクラッチペダルの上にそっと乗せる。
いつでもブレーキを掛けられるように。
「……ここだ!」
〘I’m gonna throw it around!〙
インプレッサは思い切りブレーキをかけ、一つ目の左コーナーを右へ一度振りかぶり、左に切り込む。
できる限り大きく方向を切り替えるためのフェイントモーションだった。
A110はまたもやスルリと突破していく。
しかしこのコーナーはシケイン。左のすぐ後に右が待っている。
ブレーキを掛け、強引に方向転換し、アクセルを踏み込む。
ほんの少しだが、コーナーで2台は距離が縮まった。
そりゃそうだ。アクセル全開のインプレッサとアクセルがあまり踏めないA110では距離を詰めるには十分すぎる条件だった。
「それっ!」
〘I’m switching back!〙
シケインの最後の左コーナーをもう一度逆ドリフトし、ギリギリ届かなかったその車間は間違いなく追い上げていた。
「シケインとかの複合コーナーではこっちが勝っているのか……!」
まだ、勝機はある!
こういうガクッとスピードレンジが落ちるコーナーでは勝ち目があるのならモナコの後半で一気に詰められる可能性がある。
「諦めねえぞ。俺は……!」
インプレッサのエンジンは吠えあがる。
まるで彼の意思に応えるように。
マフラーからはバンバンと威嚇する。
彼の闘争心を体現するかのように。
インプレッサは食らいつく。
絶対に逃がすまいと。
「あいつらに追い付くのはもう無理かなぁ?」
〘そんなことはないと思うぞ。ヌーベル・シケインで詰められるだろう?〙
「そりゃあアイツのインプレッサに負けはしないが……」
〘なら勝機はあると思うぞ。〙
あのアルピーヌ、予選でヌーベル・シケインのコーナリングはかなり理想的なラインを通っていた。
ただ、俺に言わせてみればビビりすぎているようにも思う。
トンネルでスピードがかなり出ている中いきなり撃ちだされるシケイン。
そりゃあこの上ないほどに警戒するだろう。
警戒しすぎるが故に減速しすぎる。
それと比べて考えるなら。
「よっこらせっと。」
ランエボはアルピーヌのラインをなぞるようなライン取りをし、インプレッサほど角度の大きくはないドリフトで流れるように通過していく。
インプレッサの数段速いスピードで。
「すごい速いネ!」
「負けてられないわね。」
911とジュリアも続いてヌーベル・シケインに突っ込んでいくのだった。
「今回のレース、誰が勝つんだろうな。」
「どうでしょうね。」
ソーメン副団長が言った言葉に小さく貴族ママはつぶやく。
「私は今回も彼が勝つと思っているんだが、ルーシャル伯爵はどう考えているんだ?」
「………そうね。私は先頭を走ってるクルマとプレアデスがいい勝負するんじゃないかしら。」
「同感です。」
「まさか。」
彼らの目の前に映っているのはプレアデスのインプレッサがA110を追い回しているその姿。
すぐさま追い抜かしてしまいそうな、そんな状況だったのだ。
「ここはモナコ・モンテカルロ。そうそう簡単に追い抜けるポイントは存在しないわ。」
「ええ。片手で数えられるほどしかこのコースで追い抜ける箇所が存在しません。それもコース幅が狭いというのが大きな原因なのですが。」
「なるほど。仕掛けるポイントが少ないということか。」
「ええ。このコースでは他のサーキットと比べて順位の入れ替わりが少ないのです。
ましてやこのコースはたった2周のみなのですから仕方もありません。」
「二周のみ……確かこれほど狭いコースでの集中力を保つための措置だったな。」
「ええ。精神的にも並大抵の者が走れるようなコースではありませんから。」
「つまり、狭いコースで踏み抜ける度胸が相当なければここを何週もするなど無理ってことよね?」
「その通り。ルーシャルさん。」
「かなり詰まってきたな?」
インプレッサはテクニカル区間でほんの少し、じわじわと詰めていたのだ。
確かにアンタはすべてのコーナーでグリップ走行する上では最高の走りだ。
間違いない。
F1の走り方によーく似ている。
ただ、F1と決定的に違うところも観察すれば必然的に出てくる。
アンタ、ほんの少しだけリアを滑らせて曲がってるだろう。
早さだけを突き詰めた究極のドリフト、慣性ドリフトを自然とやっている。
F1ではそんなことはできない。強烈なダウンフォースでほぼ滑らないからな。
「正直、クルマの性能がもし互角だったなら……」
勝てなかっただろうな。
正直俺が追いついていけてるのはインプレッサの足回りと500馬力のパワーがデカい。
素の技量的には一平ちゃんクラスなのかもしれん。
ただ、走り込みの量が違いすぎる。
それが一平ちゃんを置いていくのに十分だった。
「地元特化型のレーサー。まさかこれほどとはな……!」
2台はついに最終コーナーを立ち上がり、ホームストレートに差し掛かる。
A110のサイドからインプレッサが追い抜きにかかる。
しかし、それをさせじと加速するA110。
「おいおい嘘だろ……!?」
〘So fast...!〙
こいつの加速から逃れられるのか……!?
「く……!」
サン・デボーテ……!
インプレッサがブレーキを掛け、リアを流す態勢を整える。
A110は相変わらず、ある程度の加速をしてそのまま川に流されるようにするりと旋回していく。
「まだまだ……!」
インプレッサがリアを流し、正面が壁を向く。
直角のドリフトであった。
しかし何かおかしい。
隣からスキール音が聞こえて……!?




