99:今回はローリングスタートなのね。
ここはモナコ。モンテカルロ。今回ここを走るのはF1ではなく市販車たちである。
「さーてさてさて。後ろからじっくりとその走らせ方、勉強させていただくぞ。」
〘I’ll win for sure!〙
インプレッサに乗ったプレアデスはニヤリと笑みをこぼしながらそう呟いた。
「信じらんねえよ。なんで俺が最下位なんだ?セッティングもそろってないにしろ技量に関しては俺がトップクラスのはずなのに。」
疑問を口に溢しながらランエボは3000回転を維持していた。
〘ま。技量の差ってもんだ。〙
「うげぇ……」
〘ま。確実に一つのコーナーを拾っていけば勝機はあるんじゃないか?〙
「そうかもしれんが……」
〘足回りは弄ってもらったんだろ?〙
「あいつの頭を疑ったな。俺は。ライバルだろうに。」
〘スポーツマンシップって奴だろう。〙
「かもな。」
〘もうそろそろスタートだ。気をつけろ。〙
「もちろん。」
全車両のエンジンの回転数が急上昇する。
まだ信号は赤。
しかしその赤の信号は1秒ごとに減っていく。
「5。」
平志が小さく言った。
それと同時に1つ目のライトが消える。
「4。」
プレアデスが続いて言った。
それと同時に2つ目のライトが消える。
「スリー。」
ジュリアがキュッとハンドルを握りなおして言った。
それと同時3つ目のライトが消える。
「トゥー、だヨ。」
アルバは左手をシフトレバーの上に乗せる。
それと同時に4つ目のライトが消える。
「ワン。」
A110のドライバーが前をじっと見つめながら静かにそう溢す。
それと同時に最後のライトが消える。
そして横一列に青い信号が点灯する。
それを確認したドライバーたちは自らの車のアクセルを踏みぬく。
全車両はロケットスタートでもしたかのように加速していく。
その筆頭はやはりインプレッサとランエボだった。
「第一コーナーまでに順位を上げる!」
インプレッサはジュリアと911を右へ左へとパスし、それに追従してランエボもすり抜けていく。
「A110には追いつきそうにないか……」
手を伸ばしてその背中を掴もうとするがあと一歩のところで交わされる。そんな気さえした。
「速い……!」
A110の第一コーナーのコーナリングは俺の知っている曲がり方じゃない。
ブレーキが一瞬。本当に一瞬だった。
そして壁スレスレまで寄せる。
流石にあれほどの技量と度胸は俺にはない。
下手すれば一平ちゃんにもないんじゃあ……?
それにラインだけじゃない。
タイヤがギリギリ耐える速度域で曲がっている。
そんな感じがする。
まるでサイボーグだ。
的確に最適な性能で走るサイボーグ。そんな風に感じる。
「おっと。俺もか。」
ブレーキを踏み込み、インプレッサのフロントは思い切り沈み込み、右へ思い切り切り込む。
それにまるで当然とでも言わんばかりにリアが振り子のように振り出され、ドリフトという名の旋回で第一コーナーをクリアしていくのだった。




