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98:ドリフトってなあに?

「実はもう一つあるんだ。」

「え?」


 まるで時が止まったようだった。

 プレアデスは「ま。こっちが本題なんだがな。」と言って淡々と話しだす。

 ……先に本題話しなさいよ。


「オーバースピードでブレーキをかけてそのまま強引にタイヤを切るとフロントグリップ力だけが強すぎてタイヤが曲がりすぎた末に内側に巻き込む奴があるんだ。」

「どういうこと?」

「簡単に言えばスピード出しすぎたからブレーキをかける。そしたら車は前に沈むだろう?」

「ええ。」


 貴族ママはハコスカを運転しているため、そういうことは直感で理解できるのだ。


「もっと速度が出てて一気にブレーキをかけるともっと沈み込む。」

「なるほど。」

「言ってしまえばフロントタイヤは強引に地面に押し付けてることにもなる。」

「そうね。」

「手を合わせてみてくれ。」


 貴族ママはいただきますとでも言わんばかりに手をそろえる。


「ずらそうと思ったらすぐずれるよな?」

「ええ。」


 するすると手は自由に動く。


「じゃあおもいっきり両方の手を押してずらそうとしてみてくれ。」


 なかなか動かない。


「……動かないわね。」

「摩擦が強いってことだろ?」

「そうね。」

「それがフロントタイヤでも起こるんだ。」

「!」

「だからハンドルを思い切り曲げちまうと荷重がすっぽ抜けたリアが飛び出してフロントを巻き込んで回っちまう。これがオーバーステア。回ることをスピンっていうんだ。」

「なるほどね。」

「そしてドリフトはこのオーバーステアを制御する技術なんだよ。」

「そういうことなのね。」

「ちなみに制御する方法は意外とシンプルでな。」

「シンプル?」

「アクセル踏めば回るし、はなせばグリップは戻る。あとタイヤを曲がる方向とは反対側に切る。これをカウンターステアって言うんだ。略してカウンターな。」

「かうんたー。」

「カウンターもやりすぎたら戻っちまったり明後日の方向に車が向くからほどほどにな。」

「なるほどねえ。」

「ちなみに峠道でミスったら谷底行きか壁に衝突の二択だな。」

「え。」


 また時間が止まったようだった。

 どんな技であっても命をかける。

 あなたは何でそこまでするの?

 ……でも、そうやって限界を超えようとする人が、この世界を前に進めるのかもしれない。

 いえ、きっと先人が居たのよね。


「ま。俺はサーキットで練習してたからそうなったことないけど。」


 私は少しほっとした。

 本当に危険なことはしてなかったようで。


「ちなみにドリフトに入るのにも何個か種類があるんだ。」

「……あるのね。」

「ああ。あるんだ。」


 プレアデスがウキウキしながら言い始める。


「サイドブレーキにブレーキング!フェイントモーションにシフトロック!おまけのパワーでゴリ押すパワースライドにクラッチキック!いやぁ。いいよねぇ。」

「けど。やっぱ究極は慣性ドリ―――」

「ぷしゅぅぅぅぅ」

「(。´・ω・)ん?どうした?」


 今ので一発で頭がオーバーヒートしちゃう……

 何今のマシンガントーク……

 怖すぎる……




「……って感じでした。」

「なんだ後半の奴。」


 全員が身震いしたのだった。

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