TPO?やっべ、忘れてた
おやつの時間!麦畑だよ(^人^)
久々の更新となってしまったけど、楽しんで!
「…んぁ?」
おや。ヒャッハーが気絶から回復したらしい。日が沈むまでの静寂は、ユウキが十分に反省する時間となっていた。
「目が覚めた?」
ユウキは短く尋ねた。
「ハイ…。調子乗り過ぎてました。ごめんなさい。」
昼時の威勢は何処へ行ったのやら。正座したヒャッハーはしおらしく答えた。
「こちらこそ。いくらそちらに非があるとはいえ、僕がやり過ぎた。怪我は大丈夫?」
「…ん?」
「…あれっ?」
どうやら、他のヒャッハーも気がついたらしい。彼らは先に起きていたヒャッハーとユウキを見て状況を察した。そして、慌てた様子でユウキの目の前まで来て正座をすると、勢いよく頭を上から下へ振り下ろした。
「すみませんでしたァァァァア!!」
これが、俗に言う土下座というものだ。しかし、勢いがつきすぎたのかヒャッハー達の頭は地面へとめり込みかけていた。
「お、おう。もういいぞ。」
自分にも非があるので、ユウキもたじたじになっていた。
ユウキの許しを得たヒャッハー達は一斉に顔をあげた。改めて思うのだが、ヒャッハー達のシンクロ度がとても高い。ユウキに絡んできた時も綺麗なフォーメンションを築いていたし。
「さて…と。お前らの目的はなんだ。追い剥ぎか?」
ユウキは元の調子を取り戻してきた。
「いいえ!違うのであります!!」
ヒャッハー達はハキハキと答える。
「え。違うの?」
思い返してみよう。君らにとってはページを1枚戻すだけの簡単な作業だ。頭なのか、物理的なのかは分からないけれど。
彼らは初対面時に「金を寄越せ」とはっきり言っていた。言っていたではないか。では、何故いいえと答えたのだろうか。
「実は、その。『金を寄越せ』というのは、こちらの挨拶的なものでして。俺らは金を殆ど持っていないので『金を寄越せ』と言われたら『そんなもんねーよ!』と答えるのが一般的な流れなんです。まあ、たとえ持っていても『持ってる』と答えないと思いますけどね。集られるだけなんで。」
ヒャッハーの1人はすらすらと弁明をした。つまり、彼らは困窮しているからカツアゲ口上は冗談の範疇で、本当にやるのは御法度という暗黙の了解がある…ということか。
「あー…。」
やっちまったなぁ。
ユウキは頭を抱える。だって、分かりづらいじゃん!普通に、襲われてると勘違いしちゃうじゃん!!でも、うっかりとはいえどボコしたことに変わりはないことだし。
「すみませんでした。」
ユウキは静かに土下座をした。
△△△△△
「うっわ。地獄絵図!何があった?お前ら。」
厚化粧?のギャルがいたってまともな台詞を吐いた。
「ハッ!!姐さん…。」
ヒャッハー達が慌てた様子で応対する。
「姐さん?」
ここで、ユウキは正気に戻った。
「しょ、紹介してなかったっすね。彼女は、俺らの育ての親です。ただ、年齢が若いから姐さん呼びに落ち着いたんです。」
ヒャッハー達の育ての親だって!?
「よう。アタシはテツだ。お前、新参者か?」
テツは落ち着き払った様子でユウキに挨拶した。
「あ、えっと。はじめ…まして。僕はユウキと言います。先程はご子息に無礼を働いてしまったようで…。」
事情を説明すると、テツはニヤついた笑顔を浮かべた。
「ハハハ!そりゃあね、コイツらが悪いわ。お前ら、ユウキは多分ココの住民じゃねぇ。だから、挨拶が通じないのも当たり前だ。」
「ええっ。ということは、裕福街出身すか?」
ヒャッハー達は驚いた様子でユウキを見た。丁寧な神様の図らいで、ユウキの服はボロボロの簡易着になっているからだ。
「裕福街?」
ユウキは初めて聞く情報に少し戸惑った。
「おや。違うのかい?」
彼女は不思議そうにユウキを見る。どこの世界でも、困窮している地域があるならば裕福な地域があることは容易に想像できることだ。もし、世界が滅ぶ寸前ならそもそも裕福街というワードは出てこない。頭の中が整理できたユウキは、次に自分が取るべき行動を黙考した。
「すみません。あの、僕、覚えていないんです。何処から来たのか。」
ユウキは、記憶喪失ということにした。実際、嘘ではない。出生はリンネが焦がれている情報の1つだからだ。
「…なるほど。」
「まじっすか。それは大変じゃないですか!」
一応、彼女らも納得してくれたようだ。
「ところで、何故僕が裕福街出身だと?」
ユウキは疑問を口にした。
「何故?…挨拶を知らなかったのもそうだけど、どちらかというと髪の毛ね。荒れてはいるが、艶がある。」
テツはユウキに近づいて髪の毛に軽く指を通した。どうやら、アストラの変装技術もまだまだだったようだ。あるいは、わざと大雑把にしたか。
「そうなんですね…。」
くそう。アストラのやつ。とはいえ、今回の任務は彼女達の案件で間違えなさそうだな。
「喋りづらそうだな。敬語じゃなくていいぞ。」
「あ、はい。ありがとうござ…ありがとう。」
ユウキは軽くお辞儀をすると、大きく周りを見渡した。目に映るのは、砂、砂、砂。
「…砂しかないだろう?でもな、そうとも限らない。」
テツは適当な所に手を突っ込むと、中から何かを取り出した。砂から出てきたのは古ぼけた缶詰だった。
「裕福街の奴等はな。身体が余裕で埋もれるくらいの金があるんだ。だから、気に入ったものがあったらすぐに買っちまう。でも、期限や耐久性は気にしていないからすぐに駄目になる。駄目になったらその辺にポイ捨て。その繰り返しさ。」
期限切れの缶詰は未開封のままだった。
「そのお陰で、アタシ達もなんとか食いつなげているがね。代わりに、腹を壊すことも何度かあったが。」
彼女は苦笑いしながら、缶詰の爪に手をかける。すんなりと開いた缶詰からは甘ったるい臭いがした。
「うっわ。ハズレだ。」
液体は透き通った黄色だった。
「…蜂蜜?」
ぱっと見、そこまで危険な感じはしない。むしろ安全な部類な気がする。
「お前んとこでは蜂蜜と呼んでるのか?アタシはどーも、この感じが気持ち悪くてね。息子どもは気に入っているようだが…。」
「アッ、甘々液体!!姐さん、それちょーだい!」
「ズルイ!俺のっす!!」
「いいや、俺んだ!!」
ヒャッハー達は目を輝かせながら缶詰に手を伸ばす。
「そんなに好きか?ま、仲良く分けなよ。」
ギャルがヒャッハーの1人に渡すと、彼らは嬉しそうに走って行った。
「彼らは何処へ?」
ユウキは不思議そうに尋ねた。
「ウチラのアジト。食べる場所は決めておかないと危ないからね。」
確かに。ここまで貧困化が進んでいる場所なら、食べ物の取り合いになるだろう。
「あらら。またハズレか。」
テツは呆れた様子で新たな缶詰を掘り出す。その指先は震えている。
「あの。ソレ、僕が開けても良い?」
彼女から缶を受け取って指をかける。少し苦戦して出てきたのは、少し濁った半透明の液体だった。
「本当だ。葛湯でもない限り、食べるのは厳しそうだ…。」
葛湯といえば、植物から作られる物質にお湯をかけて作るとろみのある飲み物だが、この世界にはあるのだろうか。
「そりゃそうさ。ソイツは食べ物じゃない。」
テツは顔を暗くする。
「食べ物じゃない?保存液か何かか?それにしては、酸気もない液体だな。」
ユウキがそう考察すると彼女は自嘲気味に笑った。
「ソレはな。裕福街の中でも上の奴等がより人生を面白おかしくするための代物さ。」
缶のラベルは掠れているが、ほんのりと消費期限と書かれている。
「使い物にならないのか?」
ユウキが尋ねると、テツは否定の意を示した。
「言ったろ。仮にも、裕福街の商品だ。食えないが、使い道はある。」
空はすっかりと夜に染まっていたが、星は見えない。
消えかかっている消費期限は、まだ切れていなかった。
うーん。ガチで世紀末してきちゃった。ユウキの任務ってなんなんだろーね?




