モダンからの世紀末
はーい!麦畑だよ(^^)v
リンネちゃん、今回は何になるのかな〜?
「ヒャッハァーーー!金を寄越せえェェエ!!」
…何コレ?
リンネ…ユウキは目の前の光景に呆気を取られていた。現在、彼女は不良じみた輩に囲まれているのだが彼らが踏んでいる大地は困窮を極めていた。
いやいやいや。ナイナイ。こんなテンプレな世紀末ってないだろ。そもそも、私ってさっきまでアイドルやってたよね?
「聞いてんのかァーーー?」
あー。なんかヒャッハーが言ってるな。
「おい、そこのお前!ぴょんぴょんしてみろぉ?!」
「えっ。」
謎の指示が来た。
はい?ジャンプするってこと??
「早くしろぉ?!」
ユウキはワケが分からなかった。しかし、現状が分からない以上、下手に動くのは危険であることは容易に想像できた。そのため、かろうじて正気を保っている頭で指示に従うことにした。
「よっ…と。」
彼女は軽いジャンプをしてのけたが、飛び立った地面からは強大な砂塵が舞った。そういや、ヒャッハーに垂直跳びを強要された時ってカツアゲの合図だったよね?
「砂嵐ィ!?」
ヒャッハー達は大いに動揺しているようだ。正直、砂嵐を起こした張本人も驚いていた。
…あれ。もしかして私、既に人智を超えている?
いくら1度死んでるからといっても身体は同じなはずだからおかしい気が…。
あー。もういいや。一旦保留で!
とりあえず、彼らの話を聞いてみるとしよう。アストラの話だと、ハイな半グレ連中には強気で接した方が良いのだとか。
「オイ。」
だから、コチラもハイになってみようかな。
「あ、ああ゙ん?」
せっかくなので、神様流『戦闘を最短で終わらす方法』を紹介しておこう。なぁに、そんなに難しいことじゃない。
「必殺!急所蹴り!!」
アイドル時代身につけた強靭な足をヒャッハーにお見舞いする。一応言っておくが、股間ではない。流石に可哀想だし。
「グアダバァ!!!!」
ユウキが振りかざした足は正面にいた男の脳天にクリーンヒットした。ユウキはヒャッハーが例のやられ台詞を言わなかったことを少し残念に思った。
そして、男が地面に埋められた瞬間。彼の仲間は深海から引きずり出された魚のように突っ立っていた。そりゃそうなるよね、地面が八方にひび割れたんだから。
態勢を整えたユウキはくるりと向きを変え、他のヒャッハー達を見据える。
「…で?」
アサヒの名残りなのか、彼女の顔は笑っていた。しかし、放たれた声はドスが非常に効いていた。彼女の発したたった1語がその場にいた不良全員を気絶させてしまった。
「きゅうう…。」
静寂が、殺風景さを際立たせる。
「…ん?あらま。」
ここで、ユウキは正気に戻った。
「ヤバイ、やってしまった。」
なんてこった。いくらチュートリアルだの修行したからって、ここまで強くなるものだろうか?自分が出力抑制しなければいけない日が来るなんて、思いもしなかったなー。
あれ。ということは、私の生前は人間の中では弱い部類だったのかもしれない。例えば、【文化部所属の学生】とか。
「…ブンカブ?」
ユウキは、勝手に浮かんできたワードに違和感を覚えた。
▲▲▲▲▲
「あっぶな。アイツ、マジでやばいやつだろ。」
アストラは無意識にそう呟いていた。
おさらいになるが、アストラの下に来るのは「この世で犯してはならない、最も残酷な罪を犯した者」だ。つまり、罪と懺悔の間に来る人間は精神が壊れているケースが殆どだ。壊れ方にもよるが、ここへくる人間は大抵無気力になる。なるはずだった。
「なんで…、何故?」
そう悩むのも必然である。どんな存在でも、突然起こる例外には戸惑うものだ。
アストラは自身の頭に指を差し込んで記憶を引っ張り出した。
ー
「イタタ!!」
目の前には、四肢を痛めた細身の人間が1人。
「ジッとしなさい。傷口が開くでしょう?」
ワタシは優しく綿を彼女の傷口に当てる。まあ、ココはなんでも出来る場所なんだから、そんな真似をする必要なんてないんだけどね。
「開くも何もないわ!そもそも毒なんだから傷口どうこうのレベルじゃないし。」
彼女はそこそこお怒りらしい。
「まあまあ。落ち着きなよ。」
気休め程度に精神の安定を図ってみる。
「落ち着けるかっ!!」
あーあ。やっぱり、効かなかった。
「色々と想定外だったんだよ。」
仕方ないから、少しだけ経緯を説明してやろう。
「本来なら普通に曲が始まってた。で、毒をくらった状態のキミが苦しみながら歌うの。勿論、曲中も攻撃は続く。そして死ぬか生きるかの瀬戸際になってー。」
わぁ。信じられないって顔をしているね。でも、コレはキミのためでもあるわけだし。お仕事なんだから。
「ーギリギリ死なずに歌い切る。あとはアストラちゃん直伝の天使の微笑みで暗殺者共の脳を焼くって寸法!」
だったんだけど…ね。
「ホント、想像以上だわ。まさか、毒の存在を忘れてたなんて!キチガイなんだな、キミは。」
その時初めて、ワタシは彼女と意図的に視線を交わした。その時の目なんか、とんでもなかったわ。とてもリアクションしにくい表情…感情の読めない顔だった。
「アンタの方がイカれてるわよ。もし予定通りに進んでたら冥土の再来じゃない。」
彼女は静かに言った。言葉に皮肉が入っているところが、実に彼女らしい。
「あのね、勘違いしないでほしいんだけど。シナリオを作ったのはウチの上司だから。ワタシが干渉できるのは、あくまで改変まで。つまり、根本のストーリーは変えることが出来ないの!」
そうなんだよねー。それが、このシステムの面倒くさいとこ。結局のところ、被験体が重すぎるストーリーに耐えられなくなるんだ。
「なのに、キミは変えてしまった。コレが何を意味するか、お分かり?」
絶対このことは口にするつもりはないし、出来ないけれどさ。もしかしたら、ワタシはキミに期待しているのかもしれない。
「どういう意味?」
ああ。キミは理解していなくていいんだ。その方が幸せだからね。
「死ぬまで一緒に働こうってこと。」
くだらない暗喩に意味はない。この記憶は消してしまおう。
「私、もう死んでるじゃん。」
ワタシのジョークに笑うどころか、正論をかましてきた。ホンット、可愛くないなぁ。
ー
「はあ。鬱になりそう!人間との対話は疲れる…。」
アストラは引っ張ったものを燃やした。濁った糸のようなソレは炎によってたちまち透明性を取り戻す。
「ふぅ。これで元通り!」
アストラは脳を修繕すると気持ちが良さそうに伸びをした。
「にしても、この人間はレアケース。なるべく大事にしなくちゃ。」
そして、目を輝かせながら手に持った水晶玉を見下ろす。
「だって」
水晶玉越しには先程彼女が落としていった包丁が横たわっている。
「その方が折りがいがあるじゃない?」
アストラは銀色を指先でなぞった。
と、いうわけで。ユウキ(リンネ)は雑魚ヒャッハーを倒しましたとさ。
普通に次回もこの世界線だよ。




