さあ、皆様ご一緒に!
お待たせしました!滑り込みでGo!麦畑だよ^_−☆
アイドルってキャワだよね〜。マジ萌える(ギャル語?)
何処からか、音楽が聞こえる…。
これは、J-POPの部類か。それも…始まりのイントロだ。ネット社会でよく聞くアップテンポなJ-POP。ボカロほど速くはないが、8ビートが心を躍らせる。
「ハッ!!」
リンネミカ…ココでは【朝日花あさひはな】が我に返る。そうだ。私は今「アイドル」なんだ。
可愛いドレスに身を包み、舞台がライトアップされるのを待っている。そして、目の前には彼女の歌を楽しみにして来たファンのみんながいる。
ー期待されている。
そう感じた瞬間、私の心臓は高鳴った。こんなにドキドキしたのはいつぶりだろうか。私は目の前のマイクに手を掛けた。
「痛っ?!」
真っ赤な液体が手首を伝う。手の平が熱い。熱い、熱い!!
まるで手だけが別の生命体になったようだ。いや、手から侵入したウイルスが全身を乗っ取ろうと蠢いている!
ここでアサヒは再び我に返った。もうすぐ曲が始まってしまうからだ。
「HANA!HANA!Princess!HANA!!」
このままではマズイ。せめて、傷口を隠さなければ。
行きどころを失って暇になっていた右手をポケットに誘う。すると、中から柔らかい布が出てきた。コットン100%のハンカチ。幸運なことに、血の色そっくりな赤色だ。
これなら傷を隠せそうだ。
自然な腕捌きでハンカチを固定してマイクを握る。先程は油断して気がつかなかったが、1番握りやすい所に小さな棘がある。なんて性格が悪い。仕込んだ奴は地獄行き確定だな。
本来なら悪態をついてやりたかったところだけれど、今はライブ中だ。ステージを台無しにするわけにはいけない。
ライブということは、掛け声とかやった方が良いよね?えーっと、確か…。
「みんなー!盛り上がってるーーー?」
「whooooo!!!」
良かった。合ってたみたい。
「今日は来てくれてありがとう!早速1曲目いっちゃうよーっ!!」
左足つま先で空間を鮮明にした後に右手を振ってリズムを刻む。ファンも彼女のフリに合わせて腕をシェイクしコールする。中にはペンライトを握っている人も沢山いた。
満を期して歌い始めようとしたアサヒだったが2階席からキラリと光る何かがあることに気づいた。まさか、あれはーー
ーーー毒矢?!銃じゃないんだ…。
朝日花は視力が非常に良いため、ステージからでも2階席はよく見える。それにしても、なんでそんなに狙われてるんだろう?
《それはね、彼女が裏社会の男と結婚したからだよ☆》
どこからか放たれた情報が頭の中に流れ込んできた。どこから流れてきたのか。まさか、テレパシー?…そんなことはこの際どうだっていい。とにかく非現実的すぎて頭が追いつかない。
つまり、アサヒは表社会のアイドルだけど、うっかり裏社会と繋がりができて狙われてるってこと?
(あ、ライブ!!)
曲が始まることに危機感を抱いた彼女だったが、それは杞憂に終わった。
何故かAメロが始まらないのだ。イントロは流れ続けているというのに、それ以外はコールどころか物音ひとつない。
慌てて歌おうとした近づけたマイクを遠ざける。おかしい。いくら曲が流れないからといってファンのみんなも静かになるなんて、一体何があったのだろう。
「っ!?みんな動いてるじゃない!」
ファンのみんなは黙々とライトを動かしながらアサヒに注目している。しかし、その口は硬く閉じられ沈黙を貫いている。
「なんで…?」
「やあ。ご機嫌いかが?お嬢さん。」
気配に気づき振り返ると、そこには黒ずくめの男がいた。
アレじゃん。黒タイツの上位互換のやつ。顔がはっきり判別出来るタイプだ。
心の中で突っ込みつつも、視線は男を貫く。男は、何処ぞの兄貴とは違って柔和な表情を浮かべている。しかし、殺意は氷のように冷たい…気がする。
なにせ、リンネはまだ新人。実践経験は皆無である。この前のメイドは実質冥土だったし。
「あの。貴方は暗殺者さん…ですよね?」
アサヒの発言に男は目を見開いた。…そこまで驚くことなのだろうか。さっきの毒矢スナイパーも黒ずくめだったーー。
「!ヤバっ」
黒ずくめの男に気を取られてスナイパーから視線を外してしまっていた。これは痛恨のミスと言えるだろう。実際、矢は既に放たれていた。
「速くない?!」
想像以上の速度に狼狽えたがー
「とうっ!!」
鍛えられた動体視力で矢を捉え、紙一重で回避することに成功した。
躱しはしたが、髪には掠ってしまっていたらしい。毛先がチリチリしている。
(ああ…まだジューっていってる…!)
自分の髪がリアルタイムでステーキされるのを見るのは気分が悪い。
「せっかくセットしたのに!!」
キッ、とスナイパーがいた場所を睨みつける。既に姿は無い。
「お生憎様。私、貴方の心臓はいつでも射抜けるの。」
髪留めに使っていたヘアピンをひとつ抜き取ると、そのまま指で弾き飛ばした。飛ばされたピンは空間を切り裂き観客席の隙間に潜んでいたスナイパーを射抜いた。
「グハッ!!」
我ながら凄い威力だとアサヒは関心した…というより、ちょっと引いた。多分だけど死ぬ前はこんな物騒なんかしていなかった気がする。
「バァン♪」
とりあえず決め台詞を言っておこう。何故かは知らないけどアストラに「言えば心も射抜くから。マジで!!」と説得されたので。
「グッ…!」
黒ずくめの男がよろける。
(いや、お前かよっ!?)
てっきりスナイパーが射抜かれると思っていたアサヒは驚いた。いや、射抜かれてるんだけどね。物理的に。
しかし、先程からファンがずっと同じ行動を繰り返しているのが奇妙だ。普通に考えれば、ファンこそ歓声を上げると思うのだけど。
…同じ行動?
そういや、アストラが「暗殺ってリズムが大事なんだよ!」とか言ってたな。
(まさかっ…!)
アサヒがファンを凝視すると、握られているのはペンライトに見せかけた爆弾だった。
「御名答。君は既に四面楚歌。逃げ場はない。」
冷静に戻った男が言う。てっきりこの黒ずくめがナイフだのなんだので攻撃してくると勘違いしていた。実際はファンに偽装した暗殺者の爆薬一斉投下作戦だったらしい。
幸いなことに爆弾は小さい。どちらかと言えば爆竹に近い気がするが、流石にあの数をくらうわけには…。
「少し残念だが…死んでもらおう!」
バッと勢いよく手を挙げるとペンライトがステージに次々と投げ込まれた。音がえげつない。先に耳を塞いでおくか。アサヒはポケットを再び探ると耳栓が出てきた。ご丁寧なことに、目立たない自然な色だった。
「ま、音以外もくらうつもりはないけどねっ!」
アイドルステップで右へ左へ。ついでに習得しておいた体操技術も用いて爆発を回避していく。男は挙手と同時に手元のボタンを押してステージ外に逃げていたようだが、彼女には男の位置が手に取るように分かった。
《ファンの挙動を見逃さずに反応する技術、それがファンサ!》
絶対に違う。合ってるけど違う。
頭に響く鬱陶しい声を無視してギアを上げる。
おっと、目の前に爆弾が!
「バク転!」
空中に爆弾が!
「バックトラップ&トリックシュート!」
尚、誘発しないように足捌きは丁寧に。
おっと、まだスナイパーがいた!!
「左ステップからの〜」
左足を軸に身体を捻り…
「超跳躍!!」
およそ人間ではない程のしなやかさで素早く距離を詰める。そのままスナイパーに掌底をくらわせて気絶させたので、それ以上の狙撃は無かった。
そんなこんなで黒ずくめの男に辿り着く頃には他の暗殺者は全滅していた。
「フッ。まさか、ここまでとはな…。」
これがボス戦ってやつか〜。コイツ、ロングコートだけど近接戦出来るのかな?
「よ〜し!覚悟☆」
せーので、パーンチ…
「がアッは!!」
「え?」
アサヒの目の前で男はひとりでに倒れた。無論、彼女は何もしていなかった。
「え?あ、あのう…。」
「ア、花、ちゃん…と言ったな。」
は?花ちゃん??
「オマエ、めっちゃどタイプ…。」
惚れた女の前で男は果てた。
「…気絶ENDじゃん。」
いくら戦闘能力があっても、戦意がないと負けるわな。ある意味、彼の毒牙を抜いたアイドルの勝利といったところか。
《あのサァ、散々無視しやがったことは許してあげるけどさぁ!というかそれが正解なんだけど。》
アストラが声をあげる。日は既に明けているようだ。
《忘れてないよね?ミッションクリアは「一曲踊りきること」だって。》
背後のステージからは、未だ始まりのイントロが流れ続けている。
「えっ。」
《本当は黒ずくめくんのポケットに修理機材が入ってたんだよね。でも、アイツが変な転び方したからさ〜》
クスクスとした笑い声が頭を突っつく。
慌てて男のポケットを確認すると、そこにはバラバラに砕け散った機材が無惨に朽ち果てていた。
《てなワケで!修理、頑張ってね〜!》
私を過労死させる気か?
アサヒ…リンネにとっての困難は、まだ始まったばかりであった。
時間ないんで後書きはなし!…あ、14:00になっちゃったから書くわ。そんなわけで難易度Eってこんな感じだよ。訓練してからだと雑魚な敵か、強くてもチョロい敵ばかり。どちらかというと労働の疲労の方が大きいね!毒くらった状態で後片付けと1人ライブ(気絶暗殺者加えていいならわりといる)とか、カワイソー。




