だーいじょーぶ、大丈夫だって!(嘘)
やっべ、またサボりかけた…。お待たせしました!麦畑だよ〜d(^_^o)
1ヶ月も開けてしまってごめんなさい(><)
麦畑は習慣が苦手なのです。
リンネは、やっとの思いでクローゼットに手を掛けた。
「あの野郎。散々弄びやがって。」
ズタズタにされたメイド服を脱ぎ、掛けておいたハンガーに再び戻す。すると、破損していた部分が塞がり新品さながらの仕上がりに復元された。
「うおっ。凄いな!このクローゼット。いや、この空間自体が異常なんだっけ。」
さて。服が綺麗に出来たというのならば、すなわち…。
「髪も洗えるってことか!!」
分かってやってくれ。リンネは疲れているのさ。あまりにも疲労しているときは、人間は思考を放棄するものだ。
程よく温かいシャワーに全身を投じる。身体の汚れを落とすと同時に傷も癒えているようだ。
「疲れた〜。帰ったら寝るものだと思っていたけれど、不思議なことにココだと眠くないんだよね。」
何せ、人間で言う"一生分"を知らない世界で過ごした上にその殆どが劣悪な監禁生活だったから。上手く寝れない、寝かせてもらえないことが日常だった。
あれ。よくよく考えたら私ってまた死んでここに戻ってきたんだ。つまり、生きるための欲求自体要らないのか。ふふふ。楽でいいな〜。
リンネの機嫌は上々だった。
ふう。
はーい。息を吸って。吐いて〜。
「おーい!」
ひと段落すると、リンネは冒険に出かける前よりも健康な肉体を取り戻していた。
「アストラぁ、あっそびっましょ♪」
知ってると思うけど、私って結構頑張った気がするんだよね。いくら罪人?とはいえ普通の人間の2倍は動いたんだから話ぐらい聞くよね??みたいなテンションで呼びかけてみた。
間も無くして、ガクブル状態アストラさんのご登場だ。どうして震えているんだろうね?
「怖っ!アンタ、今までに見ないパターンだよ!!罪人だとは思えない。」
アストラは、ご自慢の耳を垂らして顔を全体的に隠してダルマ座りに近い体勢をした。チラッと覗かせるさくらんぼの目が潤っている。残念ながら、もう片方の目はここからではよく見えない。
「罪人がどういった存在なのかは知らないけど。間違いなら、さっさと私を地獄だか天国だかに送ってくれ。これじゃあタダ働きのブラック企業だっ!」
リンネからしてみると、これは当然の物言いであった。考えたくはないが、このポンコツ神様が一般の魂に冤罪をかけてしまったかもしれないからだ。
しかし、アストラからは予想通りの答えが返って来た。まず、リンネ(仮名)が罪人なのは間違いないらしい。リンネ自身も、包丁を持ってたことは認識しているので覚悟はしていた。
「ささ。そんなことより次のお仕事だよ☆」
アストラは素早く身を翻すと自分の手をクローゼットの中に突っ込んだ。
みるみるうちにクローゼットは肥大化し、中からは真っ黒な机が出てきたのだが。
「ねぇ。これって勉強机だよな?しかも、これは…。」
「もっちろん!これはのび犬のー」
とりあえず、リンネはアストラに一発を入れた。
「グハッ?!」
どっかのギャグ漫画のように、一文字変えれば許してもらえると思ったのだろうか。いや。想像出来てしまった時点で敗北の未来は変わらないだろうな。
「とうとう脳内お花畑になったワケ?肝心の貴方が創作を止めてどーすんだよ。」
「オッシャルトオリデス」
カミサマって、なんだっけ。
「で。いかにもタイムマシンが入ってます的な机で勉強すればいいのか?」
「!そのとーり♡」
リンネが本筋に戻ると、アストラは意気揚々と説明を再開した。
「最初に言っておいたでしょ?さっきまでのはチュートリアル。予備知識がゼロでも行けたの。でも、今回は違う。それは、それはたくさん詰め込まないと…!」
【沢山の勉強】と聞いてリンネは思わず息を呑んだ。そんな彼女の表情が快感だったのか。アストラは頬を赤らめながら説明を続けた。
「大丈夫よ。最初はゲームで言う最低レベル[E]にしてあげるから!」
正直、[E]と言われてもいまいち実感が湧かない。リンネは「記憶がないが知識はある」という面倒くさい状態にあるため、自身の学力がどのくらいなのかを理解していない。比較材料もないので。
「アストラ。勉強ってどんなことをすればいいの?」
ちょっと上目遣いで心配そうに聞いてみる。真名を教えてくれなかったアストラのことだ。どうせ、見た目も変えられているのだろうと思った。つまり、今のリンネの姿はアストラにとってドストライクなはずだ。
予想通り、アストラはより一層顔を赤くして呟くように「暗記…」とだけ答えた。メンタルが回復したリンネはついでに自分のことも聞き出そうとしたが、アストラは腐ってもカミサマ。欲しい情報はあまり手に入らなかった。
「なるほど。話をまとめるわよ。まず、今回の遠征先は予備知識が身につけやすく、難易度も低めな[Eランク]の世界である。そして、[E]の予備知識の習得方法は全て暗記であり、量も少ない。こんな感じでオーケー?」
リンネの話にアストラは頷く。結局、勉強机に付いている引き出しの中身はただの筆記用具と集中用グッズだった。容量は無限で、望めばすぐに出てくる便利仕様らしい。それがこの空間のメリットだ。
「えーっと。異世界キャビネットは、確か…。」
リンネが手を横に振ると、手の動きに合わせて空間に本棚が出現した。例えるならば、VR空間での召喚に近い気がする。
「おっ!出てきたな。それで、[E]のコーナーは…って、多っ!?」
Eランクの世界はかなりの数がありそうだ。今出現させた本達はみんなEランクらしい。
「[E]は数が多いけど、その分ひとつひとつがすぐに終わるよ。それこそ、チュートリアルよりも短い。」
得意げな受け答えに頭がひりつく。
チュートリアルよりも短い?
「待て。参考のために聞きたいんだけど、チュートリアルはどのランクなの?」
チュートリアルだから世界ランクに当てはめられるなかが不明だが、これから仕事をするにあたって役に立つだろう。しかし、アストラの返事は絶望的で。
「んー?[C]だよー。真ん中かそれよりちょい下だから、世界の数的には1番多いよん。」
もし、ここに時間感覚があったら。今は夜中を回っているのだろう。クラリとしながらもリンネは目の前にあった1冊の本を手に取った。
「…アイドルの世界?」
アイドルの世界。アストラによれば、ステージに立って1曲を無事に歌いきれば良いのだとか。一般的な曲の長さは5分以内だ。イントロが短い曲だと3分近くで終わるものもある。なんだか馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「舐めないでもらいたいね。いくらアイドルが大変といえど、時間にして前回より全然短い。多分妨害が入るんだろ?でも、歌いきれば終わりなんて…。」
少し前まであらゆる拷問を受けてきた身だ。途中で抵抗しまくったこともあり、アイドルをこなす度胸は身につけてきたのだ。アイドルくらい、私の…。
「敵ではない?本当にそうかな??」
アストラは含みのある笑みを浮かべると、リンネの取った本に3回触れた。すると、その上に無数の本が積み上がった。厚みはそこまでない。ただし、冊数が多い。
「じゃ、早速始めようか。まずは『銃弾を華麗に躱す方法』とか、どうかなっ?」
待て待て待て。どうして、アイドルの世界…しかもライブに「銃弾」が登場するんだ?もっと、人間関係のもつれ的なことじゃないのか??
リンネは戦慄した。この前は戦場にも駆り出されたけれど、銃弾は防ぐのが基本的な戦術だった。それを、躱しながら歌って踊るって。
「あのさ。[E]って暗記だけなんじゃ…?」
てっきり、頭にアイドルに関する知識を入れ込んで踊ればいいと思っていたのだけれど。
「何言ってるの?身体に暗記もするんだよ?」
待ってましたとばかりに輝く笑顔を浮かべるアストラ。
カミサマって、みんな悪魔だ!
その後、リンネは歌唱やステップのレッスンに加えて合気道や回避型の戦闘技術を身につけることになったのだった…。うへへ( ^ω^ )




