最近はヴィラン勝ちが主流なんでさァ
今回は話が脱線する影響でまあまあ長いよ!あくまで麦畑基準だけど( ・∇・)
…この世で犯してはならない、最も残酷な罪?それを、私が?
「待て待て待て。そもそも【最も残酷】って何だ?殺人とか??」
殺人罪。文字通り、人間を殺す行為に対する罪のことを指す。
しかし、これは人間が他の人間を殺した時に成立し、それがさらに他の人間に露呈したときに法律によって罰せられる。
「人間が他の生命体を退けてまで数を増やせるのは、持ち前の知性によるもの。ま、同族だと話は別だけどね〜。」
アストラは、私の考えなどお見通しだと言わんばかりに怪しい笑みを浮かべる。…私、やっぱり、殺人しちゃったのかなぁ。手に包丁持ってたし。なんかあの包丁、すっごく手に馴染むんだよなー。
「さてと。…えーっと、通称【生物史上最低最悪の大罪】が何か、だって?」
何だろう。決して「何」とは言わないけれど、聞き覚えのある名称な気がする。まあ、最近は似た言い回しが多いし…これぐらいは問題ないだろう。
「フフフ。このワタシが特別に教えてあげる…。痛っ。」
ティーンネイジャーな見た目とは裏腹に、少し大人っぽい目つきを努力したアストラだったが、それは徒労に終わることになった。
彼女は、何も無い場所で突然転んだ。
その上、刃物を突きつけられて平然としていた奴と同一人物…とは思えない程、大いに動揺していた。私は失礼を承知で笑うしかなかった。
酷く、滑稽だった。
「罪人?の私が言うべき台詞ではないが。お前、ダサいな。」
「ヒドイ!今、「お前」って!!」
私の辛辣でストレートな表現が心に刺さったらしい。反応する所が変な気もするが、とにかく今にも泣き出しそうな顔をしている。…それすらも可愛く思えているのは、私の道徳心が薄いせいか。それとも、時代の影響なのか?
「あ〜、もう!さっきの答えだけど。大ハズレ。君の予想は近いようで遠い答えだ。」
呆れたようにサラッと白状したものの、アストラの表現はずっと曖昧。でも、真面目には答えてるかな。
というか、近いようで遠いって…?
「ちょっと待っー」
「とりあえず、最後まで聞こうか。…で、君は生前に清算出来なかった罪への償いをしなくちゃいけないの。どうすれば償えると思う?」
アストラは私に答えを聞いたようだが、私は沈黙を貫いた。だって、喋るなって言ったのはそっちだもんね?
彼女も意固地なものだ。「喋っていいよ!」とだけ言えば、全てが解決するだろうに。意地でも私から話させようと必死らしい。時間の無駄とは、まさにこの時間のことだろう。お互いに。
前言撤回。私に害は無かった。だって、死んでるし。今の私は事実上、立体映画を見に来たお客様だ。
「…その罪を償うには。少しだけ、追加でお仕事をする必要がある。…ハイ、大正解♪」
結局、言い出しっぺが折れた。任天堂の大人気シューティングゲームの司令官みたいに、勝手に答えを補足して誤魔化した。誤解がないようにこちらでも補足しておくが、あのゲームのじっちゃんは「黙っているということはYESということじゃな?」と言っただけで、アストラのような記述式ではなかっt
「脱線してるよ、ライター。」
「えっ?」
バースデーパーティーでも開くのかな?
「別に。何でもないよ!」
アストラは何事もなかったかのように再び爽やかスマイルに戻った。
「さて。やーっと真の本題。そのお仕事の内容なんだけど。それは…」
「それは?」
私は、思わず存在しない柵から身を乗り出した。すると、彼女は一層と笑みを深める。
「ミライ改変」
…おっと。とんでもなくPowerなwordが聞こえたな。驚きすぎて英単語が出てきてしまった。
「スケールの大きい話だ。それを罪人(仮)の私にやれと?」
冷静を装うとするが、声は震えてしまう。すると、アストラは予想に反して私の頭を優しく撫でた。そして、私の隣にどことなく現れた椅子にちょこんと座ってこちらを向いた。今だけは、此処が死に遠い世界だと錯覚しそうだ。
(温かい…?)
私の白くなったページに、少しだけ色が戻った。
「うんうん。信じられないのは分かるよ。未知の事柄に遭遇すれば、はじめはみんな信じられないものさ。」
そうなのだろうか。
「そうだよ!君も、思い出さずとも感じるはずさ…。人間の言う"記憶"というのはそこまで重要じゃないんだ。大切ではあるけどね。」
【重要ではないけれど、大切なこと】
アストラの言葉を何度か復唱してみる。【おもいで】【重要なこと】【大切なこと】…。
「頭の中は、スッキリしたかな?」
私がある程度落ち着いた頃、アストラが柔らかい声で語りかけた。
なるほど。要するに、私はこの少女になだめられていたわけだ。
「お陰様で。」
それだけを返した。彼女には、それで充分だから。
「オーケー!続けるよ。実は、カミサマは唯一神ではなくて沢山存在する。それで、その中でもここの世界の管理者…つまり、ワタシよりもお偉いさんがいる。彼は捻くれ者で創造主が作り出した世界を歪めるのが好きなんだって。」
世界を歪める。神の所業は凄まじいものだよ、本当に。でも、歪めるって。
「そーれでねっ。私がそれを阻止したいんだけど、精々出来るのはアイツが歪めた世界をまだ始まっていないことにするってことだけ。だから、君の出番ってわけ!」
なるほど。整理すると、アストラは彼女の上司の勝手に対して怒っている。しかし、神様達のルールで彼女自身は動けないから、私を含めた【罪と懺悔の間に送られてきた罪人】にミライを良い方に矯正させてるってところか。
「そうそう!そういうこと!!最近はヴィラン側が活躍し過ぎて困ってたんだよね。」
物語のポジションがひっくり返ったり、裏舞台が表舞台になったり。挙げ句の果てに人類救わずに滅ぼすのが物語の趣旨になってたり。数え始めたらキリがないらしい。
「別に、悪役を否定はしない。そんな作品があったって良い。でも、ありすぎなの!一気に、沢山!!」
アストラが左手を力一杯挙げた後に思い切り横に振ると、何処からか巨大な本棚が出現した。
「これは、異世界キャビネット。此処ではない別の世界に行くための道具の一つ"記憶の本"を収納する棚。これから君はこの子に大変お世話になるでしょうね。」
含みのある言い方には引っ掛かるが、今はこれに頼るしかなさそうだ。
「これは、君にとっては極めて常識的な本棚。知りたい知識を言えば勝手に探して持ってきてくれる。読ませることも可能だ。」
ここまで最先端な本棚な常識ではない気がする。
「これは、なんでも入るクローゼット。必要に応じて着替えができるよ!」
服ね。オシャレなのだと良いな。
あれ。話の展開が濃すぎて話題に出せなかったけれど、そもそも私の見た目ってどうなっているのだろう。いくら記憶がなくなっているとはいえ、これはー。
「待って!!身体がある??」
今世紀最大の驚きかもしれない。先程まで存在しなかった透けない肉体があるではないか!
私が混乱しているのとは裏腹に、アストラの知恵熱は冷めていた。
「あー。それね。前も軽く説明したけど、君は死んでるから正確には概念しかないの。魂みたいなやつ。今の人型になってる君は、ワタシの趣味。」
趣味?
嫌な予感がして、私は新しくできた肉体を観察してみる。…人間だ。柔らかい曲線が身体を構成していることと、胸の膨らみが感じられるので第二成長期を迎えた女性だろう。髪は長く一つでまとめられていて、美しい銀色だ。
もちろん、服も着ているわけだが…。メイド服??しかも、ミニスカ。
「…表に出ようか。」
「ヒイッ!!」
アストラは、怯えるフリをして素早く私の背後に回り込んだ。そして。
「ドーン!」
(えっ)
私を異世界キャビネットの方に突き飛ばしたのだった。
「うわあっ!?」
慌てて背後を見ると、アストラが非常に楽しそうな表情を浮かべて私を見送っていた。
「それじゃ、頑張ってね☆
最初は予備知識要らないチュートリアルだから!」
そういう問題じゃないんだよ…!
結局、お出掛けは次回に持ち越しになっちゃった…。アストラちゃん、寂しがりやだからよく話が脱線するんだよね!




