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マウス  作者: 麦畑迅
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「とりあえず謝っとく」は地雷

前回のあらすじっ

目潰し光線を浴びて目を覚ました主人公。しかし、目の前に広がるのは背景のない謎空間だった。そして、うさ耳ポニーテールガールのアストラと出会ったのでここはどこだと尋ねてみた。すると、彼女は得意げに自らが描いた簡易地図に指を差したのだが、「罪と懺悔の間」…?

どゆこと??

「はい!説明ご苦労様♪」


アストラは誰もいない空間に語りかけた。中々()()()()()()だなーとは思っていたけれど、まさか1人演劇を始まるとは思ってもみなかった。でも、ここはおそらく現実世界ではない。この中途半端で気持ち悪い空間が存在するのだから、一見何もない空間に誰かを呼び寄せたりこちらから別の空間に話しかけたりするぐらい出来るのではないだろうか。


(まあ、現時点では確認のしようがないけどね。)


それよりも。


「アストラ。その、罪と懺悔の間って何?」


ちょっと遠慮がちに話しかけてみると、彼女は素早く戻ってきた。…それはもう、1秒にも満たない時間で。


「知りたい?知りたいのっ??」


彼女は走って来た(?)勢いのまま、私の顔を覗き込んだ。怖いって。軽くホラーなんだけど。うさ耳美少女がホラー現象に見えるって、相当ヤバいと思うのだけど!


「あ。でも、M⚪︎s⚪︎deって美少女アバターが出てくるホラg」


「君ィ。聞いといてその態度はなくない?」


肩を反射的に震わせた後に振り返ってみると、そこには変わらぬ笑みのアストラが。気づかないうちに、肩に手を置かれていたらしい。いや、だから!怖いんだってば!!


「さてと。罪と懺悔の間の詳しい説明をするね。」


クルリと回転した勢いでスカートがふんわりと揺れる。私の脳裏に、【誰かが作ってくれたであろうオムライス】の映像が蘇った。


「罪と懺悔の間は、名前の通り生きている間に犯した罪を懺悔し、清算する場所なの。でないと魂が濁っちゃって、次の人生が送れなくなっちゃうからね。」


魂が濁る。心が醜いから濁るのではなくて、罪が清算されていないから濁るのか。呑気に考えていたが、かなり深刻な事態かもしれない。だって、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになるのだから。


「でね、この間を管理するのがカミサマであるワタシの仕事なの!」


彼女は胸を張って仁王立ちしている。おまけに、ドヤ顔だ。顔のせいで可愛く見えているが、相当ふてぶてしい。


「それで…。私は、一体何の罪を?」


「それな!よくもやってくれたな、オイ。」


突然、アストラの口調が荒くなる。私の犯した罪が、それほど重かったのだろうか。いや。そもそも、此処に来た時点で刃物を握りしめていたのだから、ロクなことではないことは分かりきっている。


「お前のせいで、ワタシは大変なんだ。分かる??主に人間が真っ当に生きてくれればワタシの役目なんてなくなるんだよ。なのに、オマエラときたら…!」


よく分からないが、神様も大変なのだろう。聞く話によると、神様には寿命がないらしいから人間の何百…何千倍以上の年月を同じ空間で過ごさなければならないのだろう。それに、そこでする内容が罪人の相手なのだから、人間基準で考えるとたまったものではないだろうし。


「ご、ごめんね…?」


とりあえず、自分も彼女の心労の原因になっていることは明確なのだから、素直に謝っておこう。


しかし、それが間違いだった。


「ハァ。これだから、人間は。頭は良いのに、肝心な時にボロが出る。とりあえず謝ればいいと思ってる。」


アストラの目は、確実に死んでいた。


「それはそう。複雑な人間界を生き残るには、同族間でのコミュニケーションは最早必須とも言えることだからね。でもさ、きちんと原因を理解しないで謝るなんて、無駄だと思わない?」


『どうせ同じ誤ちを繰り返すだけなのだから』


アストラ1人が発したとは思えないほど重なりに重なった言葉が、私の心を突き刺す。ふと手元を見ると、足元に置いたはずの包丁をまた握っているではないか!

無意識のうちに勝手に腕が動いたのは驚きだったが、それよりも衝撃的だったのはその刃に赤黒い液体がべっとりと付いていたことだ。


おそらく、今の私は言葉にならない声を発していることだろう。目の前にいたはずのアストラは消え、目の前で事切れているのは人間の子ども。もちろん、血まみれ。刃物で刺されたのか、何処かでぶつかったのかは分からないが損傷が激しくて吐き気がする。


吐き気がする。キモチワルイ。でも、()()()()

それは、当たり前のことだ。自分の肉体は既に朽ち果てているのだから、吐けるはずかない。


じゃあ、どうして吐き気がする?


心臓がバクバクと、必要のないリズムを刻んでいるのが分かる。青ざめたまま上を見上げると、そこには薄ら笑いを浮かべた()()がいた。


「うわああああああ!!」


驚きのあまり尻餅をついてしまいそうになるが、いつの間にか背後に回り込んでいたアストラにキャッチされた。彼女の表情は、先程とは打って変わって穏やかな表情になっている。


「知りたい?君の罪。」


宇宙を飲み込むブラックホールのようだけれど色彩豊かな瞳。私は、アストラから目が離せなくなっていた。




「君はね。この世で犯してはならない、最も残酷な罪を犯したの。」





頭の中が、真っ白に染め上げられた。

シリアスだねー。それでもって、プロローグが長くなる!

まあ、仕方のないことさ。だって、主人公の罪は許し難い罪だからね!!

言い訳ご苦労様。

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