ラリっても知能は正常でいたい
お久!になってしまった麦畑だよ(-.-;)
世紀末編は転換期に突入するよ〜
それにしても、とんでもなく痛気持ち良かったな…麻薬。
浮世離れした感覚が、徐々に冷めていく。
一筋の風がユウキの頭を撫で、心に熱を灯した。
「この麻薬…は、塗るタイプらしいな。食えはする…が、別に美味しそうではないし。おそらく、経口接種だと効果が薄いんだろ。」
ユウキは分析する。
「お前なぁ…。もしかして、裕福街の奴隷だったんじゃないか?」
テツが半ば呆れたように言う。
「どうして?」
「いや…嬉々とした表情で麻薬を傷口にねじ込む奴なんて、既に薬漬けになってる他ないだろ。それに、誰かの奴隷だったのなら情報に拙くても頷けるし。」
なんてことだ。自分が麻薬を試したのはあくまでその性質を調べるためだけだと思っていたのに、知らぬうちに笑みが漏れていたらしい。
ユウキは人間の心身の分離に驚かされた。
「そう…なのか?まあ、それは後回しだ。」
全身の痺れが取れてきている。
ユウキはテツを押し退けて自力で立ち上がった。
「お、おい!まだ寝ていないと…。」
「大丈夫だ、テツ。既に異常は取り除かれた。」
アストラの野郎。本当は私を苦しめるためだけにこんな茶番をやっているわけではないだろうな?あるいは、そもそもあの空間が【狭間】なんてものではなくて、単なる【地獄】なのか。
どちらにせよぶん殴ってやる。次は、絶対に当てる。
「無理はするな。おそらく麻薬のせいで神経が麻痺したままなのだろう。下手に動くと、命に関わるぞ。」
なるほど。テツがヒャッハー達から姐さん呼びで慕われているのも理解できる。でも、そんなバチコンメイクで言われてもなぁ。イケメンだけど!
おっと。いけない、いけない。僕は記憶を失くした人間【ユウキ】。ちゃんとやることはやらないとね。
「本当に大丈夫なんだって。ほら、ちゃんと呂律が回ってるだろ?」
記憶を取り戻すためにも。
「ハァ。アンタは止めても立ち止まらないタイプみたいだ。ハッキリと喋れるようだし、立ち話をするのは許す。ただし、それ以上はするな。」
テツは譲歩しつつも肝心なところは譲らなかった。
「分かった。そうする。」
ユウキはテツの主張を受け入れた。
「それでいい。で?なんか話したいことがあるみたいだが。」
テツが促す。
「そうそう。僕が言いたいのは麻薬と裕福街についてのことさ。」
流石、世紀末のリーダーさん。物分かりが素晴らしい。
「なんか思い出したんすか?」
ヒャッハーが聞いてくる。なんというか、慣れるとコイツら子どもみたいだな。
「いや。その辺はさっぱり。」
「そうすか…。」
ヒャッハーは俯いてしまった。どうやら、ユウキが良くない思いをしたと思って気まずくなったようだ。ユウキ…リンネは思った。正直なところ、そんなにしょんぼりしなくて良いのに…と。
君たちに言っても通じないだろうけど、これは仕事なんだから。寧ろ罰とはいえ第2、第3…と人生を送れているわけだし。元を正せば、やっぱりアストラが悪いし!
あ、待てよ。設定自体は邪神のせいなんだっけ。どうでもいいけど。
「そんなわけで、とりあえず聞いてくれ。あくまで僕の予想でしかないのだけど、裕福街の連中は近いうちに死ぬと思うよ。」
ユウキは回復して休めた頭を再び働かせ始めた。
「近いうちに死ぬ?それは、本当なのか??」
テツが食い気味に聞いてくる。そりゃそうだ。憎き相手が余命宣告されたのだから。しかし、安心してほしい。復讐の時間は残されている。
「死ぬといっても、数年はあるかもしれないけど。ただ、長持ちはしないと言ったんだ。だから、環境が変わる前に先手を打った方が良い…。」
ユウキは、チラリとヒャッハーの方を視認する。ヒャッハーの目は、盛大に輝いていた。
「遂に、裕福街の奴等をギャフンと言わせるんすね!やったぁ。」
「コラ。ちゃんと話を最後まで聞きなさい。」
ヒャッハーはテツから拳骨をもらった。
「イテェ!」
ヒャッハーが呻き声を上げる。テツって、姐さんよりもお母さんが似合ってると思う。その調子でヒャッハー共に教養を与えてくれ。
「ありがとう、テツ。」
ユウキは一言お礼を言った。
「別に良い。アタシもさっさと知りたくて堪らないからな。」
テツさん、目がギラついてますよー。
「あはは…。」
「それより、ひとつ確認されてくれ。裕福街の連中が持たない理由は?」
テツは冷静だ。感情は復讐諸々に向かっているようだが、あくまで客観性は失わない。物事を冷静に見極めることこそ、生き残るコツだからだ。
「麻薬の特徴が根拠かな。アレは効能が強すぎる。おそらく、一発目でアレを喰らえばジ・エンドだ。」
僕は例外。ま、ある意味本当に天国に行けるから効果は神様のお墨付きだ。
「接種方法が軟膏且つ傷口なら効果大なのも、すぐに効果が欲しいと言っているようなものだ。その上、ここに麻薬の缶詰が散乱しているところから考えて量も充分にあるとみた。」
ヒャッハーが息を飲む。とにかくヤバい事態であることは初見の人間も理解せざるを得ない。
「奴等は今頃酔いに酔いまくってることだろう…。ロクに思考出来ないくらいには。」
でないと、此処まで襲って植民地にしてそうだからなぁ。金持ちの権力者って、更なる刺激と発展を求める者が多いし。
「なんというか…。最悪だな。」
テツの語彙が少なくなってきた。
「僕も同意するよ。要するに、裕福街は自らの欲で身を滅ぼしていくわけなんだけど、それだとパッとしないだろ?それに、此処の環境と経済力では未来永劫安全とは言い切れない。どうせなら豊かに暮らしたい。そこで、だ。」
ユウキは考えをまとめるフリをするために口元を手で覆い隠した。
「奴等と取引をしてみたらどうだろうか。上手くいけば裕福街の資源丸ごと君たちの自由に出来る。」
現状の何かに不満があるのなら、改善するためにあれこれ試行錯誤する必要がある。暴力は駄目だ。長続きしない。幸せを勝ち取るのならば、それは永続させなきゃもったいない。さて、改善を施すためには、まずは改善する点を明確にする必要がある。
「例えば、君たちは裕福街の人間を敵視しているけど、根本的な願いは衣食住に不自由ない生活を送りたいってこと。僕の認識は間違いない?」
ユウキはテツを見つめる。
「…ああ。奴等は憎いが、それ以上にコイツらの生活が第一だ。」
テツがヒャッハーを手繰り寄せて肩を掴む。
「姐さん…!」
「OK。じゃあ、ここから発想を展開していこう。次に、衣食住に不自由ない生活とは具体的には何か?」
ユウキは問う。
「腹いっぱいの飯とカンキョーに耐えれる服!それと安心して寝れる家!!」
ヒャッハーが元気よく答える。
「その通り。では、それらを満足に揃えるためには、何が必要?」
「金またはそれに相当する物事。」
テツが答える。
「そうそう。じゃ、それらツールはどうやって稼ぐか?」
単純に事実を並べて整理しているだけなのに、楽しくなってきた…!
「それが問題だな。これまで商売云々を考えたことはあったが、それに値する何かを見いだせなかったんだ。」
テツはため息を漏らす。
「何を言っているんだ?商いの種なら、すぐそこにあるじゃないか。」
わざわざ私がこの世界に飛ばされたのは、多分…。
「そこって…砂があるだけだぞ?」
指し示されるは、大地に覆い被さる砂の層。
「それだよ。」
私が来たのは、この世界では知られていない事象を先取りして補填するためだ。
「僕たちは砂で人生を変えるんだ。」
砂を常に見ている人にしか出来ない、逆転への一歩を。
砂で思い出した話なんだけど。マイクラというゲームは原材料に詳しくなれるって誰かが言ってた。今度やってみようかな?




