これが噂の天界ってやつだ
ポリッキーって美味しいのかしら?
麦畑だよ(`・ω・´)
遂に書きました!100pv企画〜
色んな世界を主人公が冒険する話
ー眩しい。私が現状言えるのは、ただ…眩しいという事実だけだ。眩しいって、一体何が。深く考えてくれた皆には申し訳ないが、特に深い意味はない。至極、単純明快なことだ。私は今。とんでもなく強烈な光を浴びている。
△△△△△
「ま、待てっ。話せば分かるっ!!!」
…色々と可笑しいな?一旦、整理してみようか。
まず、目の前のこの…女の子(で、いいのかな?)は、『ハイなポニーテール』の『金髪オッドアイ』の『近代的なバニーガール』のようだ。この時点で良く分からない。俺は、ファンタジーの世界にでも投げ込まれたのだろうか。
「ん?もしかして、ワタシの美貌に見惚れすぎてメンヘラ化しちゃってるのかな☆」
うん。非常にネット民っぽい口調だね。それよりも、さっきから鬱陶しいこの目潰し光線は何かについて考えてみようか。
「な、なによ…?」
さて、目を凝らして見ると…どうやら光は彼女の体から出ているらしい。どうせなら、源氏蛍みたいにホワホワな淡い光にしてほしかった。そうしたら、きっと少しは…ほっこりできていたはずだ。私は、ポニテうさぎを睨みつけた。睨みつけていることが分かったのか、彼女はブルブルと震え上がっている。これでは、獲物と狩人だ。
「や、あのぅ。とりあえず、さ。その物騒なブツをしまってはくれないか…?」
彼女の視線を追って映った自分の手をじっと見つめる。【物騒なブツ】というのは、恐らく現在進行形で私が大切に握りしめている包丁のことだろう。
(…は?)
なんてことだ!私は、初対面の相手を文明の結晶で脅していたのか。慌てて持っていた包丁を手放そうとしたが、何故だか包丁を持っている手だけがピクリとも動かせなかった。ハッとしてうさぎの少女を見つめたが、その目は予想に反して優しそうに揺らいでいる。
「うん。仕方のないことだ。ところで君さ。自分の名前は言えるかな。」
馬鹿にしないでいただきたい。流石の私でも自分自身について忘れたことなどない。しかし、自分が包丁を握っていると分かったときは自分自身が何者かを考えるのを忘れていたかもしれない。そう、人間の脳は謎に包まれている。少なくとも、一般人にはね。
それに、かの有名な童話では自分自身のことを忘れていたのだ。この行為を一概に否定することは出来ない。
「随分と考え込んでたみたいだけど。出来そう?自己紹介。」
もう一度、彼女を見つめてみる。…怒ってはいない。瞳の奥は分からないけれど、表面上は問題ないように見える。いや、むしろ…
(楽しそう?)
数分前に刃物を突きつけられた人間とは思えない程、彼女は落ち着いている。奇妙に思ったが、包丁を気づかないうちに手にしていた自分よりかはよっぽどまともだ。正直、あの状況だけを見れば、私が美少女相手に殺人を犯しかけていると誰もが思うことだろう。頼むから冤罪であってほしい。
「君。余計なこと考えてるでしょ。困ってそうだから答えてあげるけど、別に君は私を刺していなかった。5体満足だから気にしなくていいよ!」
良かった。ちゃんと未遂に留まっていたようだ。記憶がない間に理由の分からない殺人なんて最悪でしかない。
「ささ。話を戻そうか。」
私があまりにももたもたしていたので彼女が大々的に軌道修正をしてきた。名乗るだけなのに、どうしてこんなに時間をかけてしまったのだろう。名乗るぐらい、今まで吐いて捨てるほどあったのに。
(…今まで?)
おかしい。今までの記憶がすっきりしすぎている。分かりやすく表すとすれば、知識は定着したまま思い出だけ抜けたといった感じがする。そう。全ての思い出…エピソードが。私は、背筋が寒くなった。
「私って、誰だっけ?」
あれだけ眩しかった閃光は、気にならなくなっていた。
△△△△△
「あらら。君は全てを忘れてしまったのね。可哀想!」
なんかムカつくな。凄く殴りたい。だけど、今は自分の身に起こっている異常について考えることが最優先だ。
「ごめん。刃物突きつけてから聞くことじゃないのは分かってるんだけどさ。あなたは、私のことを知っているの?」
なるべく丁寧に彼女へ質問してみたが、返ってきたのはシンプルに「分からない」だった。彼女の話によると、目の前に突然刃物を持った私が現れたらしい。
(軽くホラーだな…。私ならパニックになる自信しかない。)
分からないことを聞き続けても仕方がないので、次は日時について尋ねてみることにした。日付については把握していたようで、途端に彼女は柔らかそうな耳をブンブンと振り回した。嬉しい時に豪快に動かすのって犬だし、振り回すのも耳ではなく尻尾な気がするのだけど、触れないでおこう。
「今日は××××年××月××日の深夜だよ!そういえば、××は凄かったよね。まさか、あの人の予言が当たっちゃうなんて!」
ほとんど聴き取れなかった。私の期待を返せ。しかし、「予言」というのはアレか。『2025年7月のどこかで大災害起こるよ〜』ってやつ。なるほど。ということは、現在は2025年7月31日の深夜ってところか。場所は違った気がするけど…。一応、津波は来てたし。
「でもさァ、占いは占いだからね。当たっても占い、外れても占い。少し間違ってても、過去にいくつか的中させてたら周りが勝手に曲解してくれる。現に、君もワタシの話から日付を特定しようとしただろう?」
痛い所をつかれた。単に彼女の掌で踊らされただけだったか。ただ、他の日付を考えるのも面倒なのでとりあえずさっきの日付が正しいと思うことにした。
「ところで、あなたの名前は?あなたは覚えているんでしょう?」
いい加減、うさ耳ポニテガールの名前を聞き出しておかないとまずい。どう呼べばいいか分からなくなるから。
「あっ。ごめん、すっかり忘れてた。説明どころか名乗ってすらいなかった…!!」
元気に暴れ回っていた耳は丸まり、顔は赤くなっている。なんか、こう…役得な気がする。私の性別って男だっけ?なんか、この女の子にドキドキするんだよなぁ。
「私は世界の統治者のアバター!仮名は『アストラ』よ。」
世界の統治者?アバター?やっぱり、私はファンタジー世界にでも転生したのか。私が全然信用していないと見たのか、アストラはぷくっと頬を膨らませて「卑怯者!」と言った。どこが卑怯者なのだろうか。
「まあ、君は想像以上に"固い"みたいだからぁ?ワタシが特別に教えてあげるけど。世界の統治者…つまり、神は"実体を持たない"から創造した世界にいる生物に"干渉"する時は仮の身体を用意しなくちゃいけないの。」
へぇーっ。話題の異世界転生にそっくり。ということは、私は死んだのか。…トラックか?トラックにはねられたのか?それとも、過労死か?
(まさか、そのショックで記憶を…?)
いや、ないな。アストラも顔を顰めてるし。耳もしなしなしてるし。実際に言ってはいないけど「変な奴。関わらないでおこう。」ぐらいの呆れは感じられる。だとしたら、私はなんで…?
「さあさ!そろそろ本題に入ろうか。」
アストラはどこからかプラスチックボードを取り出して掲げている。私の経験則によれば、あのボードには彼女の言う『本題』が書かれているはずだ。
「…『人外でも分かる!隙間のお部屋について』?人外ってうさぎとかのこと?」
アストラの目からハイライトが消えた。彼女は、今までのハイテンションが嘘のような低い声で「頭のネジが外れた奴」とだけ返答をした。かなりやばい人が過去にいたのだろう。それでも、その後すぐに
「気を取り直していこうねっ。」と笑顔を見せてきたので、こういうことには慣れているんだろうなとも思った。
「さてと!はじめにきっぱり言っておくけど、君は既に死んでるの。お分かり?」
ああ、やっぱり。死んでいるんだ。一瞬、異世界転移の可能性も考えたんだけど、自分に関する記憶が一切ないところから死んでるのが1番しっくりくるんだよね。
「分かっているようでよろしい!人間は普通、天国か地獄に行くっていうのがみんなの認識だと思うけど、ここはその狭間なんだ。」
アストラは得意げに自らが描いた簡易地図に指を差す。でも、罪と懺悔の間って書いてあるのだが。
私…なんかやらかしちゃった?
とんでもなくスケールが大きいね。ちゃんと終われるのだろうか。まあ、終わらなくても終わらせるよ(語彙が迷子)。