エクストリーム観覧車
僕と彼女は付き合って半年になる。今日は遊園地デートの予定だ。僕は正直苦手だが、彼女は絶叫マシンが大好きらしい。
快晴の空の下、車を走らせていると、助手席の彼女が「ちょっと止まって」と声を上げた。
「どうしたの?」
「面白いものを見つけたの」
「車だと入れなそう」と車を降りた彼女に続く。幸い、周囲には何もなく、路肩に止めておいても問題なさそうだ。
山に向かう小道の入口に、「観覧車アリマス」と書かれた、朽ちかけた木製の看板が立っていた。
「誰かのイタズラじゃ?」
「そうだろうけど行ってみない?」
いつも通り大胆な彼女に頷くと、どんどんと進んでいく。
歩き始めて数分、目の前にお婆さんが現れた。目付きは鋭いが、変わったところはない。
「お客さんかい?」
しわがれた声に彼女が頷く。ここからは観覧車は見えない。
「一人百円だよ」
お婆さんはこちらに手を伸ばす。
安すぎる価格に不安を覚えたが、彼女が百円をお婆さんの手に乗せてしまったため、仕方なく続く。
「しゃがみな」
言われるまましゃがみ込むと、目隠しをされ、同時に、軽快なメロディーの爆音が鳴り響いた。
お婆さんに手を引かれるまま歩く。不意に突き飛ばされると、何かの上に座った。
浮遊感を感じ、しばらくして爆音が鳴りやむと、「目隠しをお外しください」とお爺さんのような声が響いた。
目隠しを外すと、彼女と青空が見えた。
目隠しを外すと、彼は気を失ったようだ。
なるべく首を動かさないように周囲を見る。
もはやゴンドラと呼べるかも分からない場所に、私たちは座っていた。
目に入る物は全て錆び付いている。
足元には網目状だったらしい床が僅かに残っているけれど、壁や扉、天井に至るまでがほとんど脱落しており、フレームと繋がる部分だけが辛うじて残る状態だ。
パキリと音を立て、足を乗せていた床が落ちた。
眠る彼の奥を見る。
観覧車の中央に繋がる、細すぎる支柱も完全に錆び付いており、風が吹くたび揺れているようにも見える。
中央から伸びるフレームもほとんどは寸断されており、くの字に曲がった物がまだマシにすら思える。
目に入るゴンドラは、私たちの物を除くと二基しかない。
地面を揺るがす轟音を残して、たった今、一基になった。
半周を終えたらしい。体の震えが止まらない。この震えでさえ、切っ掛けになるかもしれないと、さらに震えが強まる。
ギィギィとひっきりなしに音を立てる天井に、私は一切の身動きも取れないまま、祈り続けた。