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運命の歌  作者: 兼定 葵
7/13

7話

 柊と掃除してハプニングがあった次の日、俺はいつも通りに学校に通った。


「おはよー」


「はよーっす、蓮」


 ビクッ!


 気のせいか?要が蓮と言った時に柊の肩がビクッと動いた気がするが…。


「要、ちょっと蓮って3回言ってみて」


「なんでだよ…。まぁ、いいけど」


「蓮、蓮、蓮」


 ビクビクビクッ!


 思った通り、なぜか柊は俺の名前を聞くとビクビク震えるらしい。恐らく昨日の資料室での事件が原因だろう。


 ガタン!ガラガラッ!


 突如、柊は椅子から立ち上がり、ドアを勢いよく開いて猛スピードで教室の外へと走り去って行った。


「おい、柊、どこに行く!もうSHRが始まるぞ」


 要が笑いを堪えながら俺の肩に手を置いて訊いてくる。


「お前ら昨日、何があったよ?」


「いや、なんにも。ちょっと俺が柊を押し倒しただけ」


「柊を押し倒したぁ⁉︎」


 声がでけぇよ何のために俺が声をひそめて話したと思ってるんだよ。


「ほう…?楠が柊を押し倒したとな……!」


 後ろから半端じゃない威圧感を感じる。振り向くことを拒むかのように固まった首をギギギとどうにか動かして振り返るといつのまにかその手に竹刀を幻視してしまうほど明らかに怒っている本田先生がいた。


 あっ、やべぇ…。一番聞かれたくなかった人に聞かれてしまった。


「楠、停学」


「処分が重すぎやしませんか⁉︎」


「退学にならなかっただけありがたいと思え」


「判断が早すぎます!もうちょっと自分が受け持つ生徒のことを信じませんか?」


「黙れ、お前が女子と強引に不純な行為を行おうとするような奴だとは見損なったぞ!」


「そうだそうだ、この犯罪者ー」

「クズー」

「人でなしー」


 いや、お前ら俺への風当たりが強いな⁉︎


「反論を聞いてやるよ。言って見ろ」


 これで説得できなければ俺は停学だ!恐らく本田先生は本気でやるだろう。かくかくしかじかと俺は事情を一生懸命に説明する。


「はぁぁ〜、わかった。後で柊に謝っとけよ」


 案外あっさりと引き下がった。さっきまでの剣幕だともっと怒られることになるかと思っていたので肩すかしを食らったような気分だ。


「わかったらさっさと柊を探しに行け!」


 あっ、柊のことを忘れていた。慌てて俺は柊を探しに行った。




 ~~~~~~




「いい?ちょっと来なさいよ」


 昼休み、俺は柊ににらまれていた。


「いいけど、なんだよ…」


「いいから付いて来るっ!」


 有無を言わさぬ様子で柊が俺のことを引っ張っていく。そのままズンズンと校舎裏まで連れてこられた。


「どうしたんだよ?こんなところまで俺を連れてきて」


「それは……、あの…、き、昨日の件と言ったらわかるでしょ」


「ウッ……、もしかしてその件でこれから俺を締めようと…?」


「締めるって、あんたはあたしをヤンキーか何かだと思ってない?」


「むしろ狂犬だと…」


「な・ん・て!」


「すみませんでしたっ!」


「ったく、もう……。昨日のことはもう忘れなさいと言いたかったの。動揺するのもなしよ…」


 動揺していたのはそっちだけだろと言いたかったが言葉にならなかった。頬を赤らめて少し恥じたようにかわいらしく言う彼女を俺のつまらない発言で怒らせるのは野暮というものだろうと思ったからだ。


「早く戻りましょう。遅くなって変に邪推されるのはもうこりごりだわ」


 速足で帰っていく柊の後を慌てて追いかける。


「いい?調子に乗らないことね。あんたと私の関係はこれまで通り何も変わらないんだから」


 そういって柊は教室のドアを開ける。


「キャー、若菜ちゃん、告白はどうなったの?さっきのあの感じ、成功したのよね」


 そして女子どもに取り囲まれた。何やら異常に興奮しているようだ。


 どうやら教室に入る前の柊の発言が曲解されたようだ。


『いい?(付き合ったからって)調子に乗らないことね。あんたと私の関係はこれまで通り何も変わらないんだから』


 みたいな感じになったのだろう。恐らく。


「蓮よ、ついにリア充になったか」


 無駄に彫りが深い顔になった要がキリッとした様子で話しかけてくる。


 ちっ、どうせ分かってんだろ。わざわざ聞きに来るんじゃないよ。


「蓮、羨ましいな。爆散しろー」

「そうだ、そうだ。柊さんは顔はいいからな」

「性格はちょっとアレだけど顔はいいもんな」


「うーん、否定はしないがとりあえず謝っとけよ」


「何度言ったら分かるの!付き合ってないってば!」


 突如、質問攻撃に耐えかねたのか柊が叫び出した。


「あと、そこのヤジ3バカ。後で覚えてなさいよー!」


「「「ヒェッ」」」


 名指しされた瞬間、肩をすくませ、震え上がるヤジ3バカ。自業自得だ、諦めろ。


「「「「あー、ハイハイ」」」」


 女子たちからはいつもの照れちゃってかわいいなの「あー、ハイハイ」が飛び出してきた。


「なんでよぉ〜。その感じ、信じてないんでしょ〜」


 揶揄われ耐性が低いからこうやって揶揄われるんだろうなと思った。時々俺にまでその揶揄いが及ぶんだから頼むから耐性を上げてくれと願った。




3バカ

要/モブA/モブB

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