【⠀魔法美容専門店Iris~アイリス~】へようこそ~8人目のお客様の場合~
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「ねぇねぇ、ここだよね?」
恋人へのお昼ご飯を届けに来たミランダはお店の前で女の子数人がウォルター《恋人》の職場を見ながらこそこそ話しているのを見つけた。なんの用事なんだろ〜?と不思議に思って見ていると少し大き目な話声が聞こえた。
「そそ!ウォルターの店!」
「シシリーの恋人なんでしょー?」
ドサッ。その言葉に思わずお弁当を落としてしまった。幸いにも女の子達には聞こえてなかったみたいでこちらには気づいていない。でも、一体どういうこと…?ウォルターの恋人?ウォルターは正真正銘自分の恋人だ。私の事が大好きで今まで浮気なんて一度としてした事の無い自慢の恋人だ。しかし今この女の子達は別の女の子の恋人と言わなかったか…?まさかそんな素振りはなかったけど浮気してたの?そんな思考に耽けるミランダを置いて女の子達のお喋りは続く
「シシリーの?え、でもウォルターってミランダって子と付き合ってなかった?」
「ああ、そう言えば聞いた事ある。ウォルターって彼女の事大好きですっごい大切にしてるって」
「シシリーそこん所どうなの?」
「え〜?ミランダ?見た事ないけどどうせたいしたことないでしょ?正直私の敵じゃなくない?今日告白する予定だけど、どうせミランダって子より私の事選ぶんだから実質私が恋人ってことで!」
「あはは!ひど~い!まぁ、ウォルターってこの街でダントツカッコイイし釣り合うとすればシシリーしかいないっしょー?」
「ミランダ可哀想〜でもシシリー相手じゃしょうがないよね〜」
クスクスと話しながら店に入って行った女の子達を見送るミランダは立ち尽くすしか無かった
...好き勝手言ってくれちゃって。でも、正直否定し切れない自分がいた。シシリーと呼ばれた女の子はお金持ちなのか化粧をして外見を華やかに着飾っていた。それに比べて自分は比べるまでもなく、これぞ平民といった出で立ちで髪はパサパサお肌もボロボロでお世辞にもシシリーに勝てる要素は見つからない。
思わず乾いた笑いをこぼす。
あんなに可愛い子に言い寄られて靡かない男なんている?ウォルター…もしかして告白受けちゃうのかな。あんなに可愛いんだもんね、私なんか、、、そんな考えがぐるぐる頭を巡っていたミランダだがふとウォルターの言葉を思い出す
ーミラ大好きだよ
ー今日もミラが1番可愛い
ーミラがいれば他に何もいらない
ーミラは俺が幸せにするからね
そうだよね、ウォルターはいつでも私を褒めてくれたしまだ別れるって決まった訳じゃない!ウォルターを信じる!それに今まではウォルター優しさに甘えてたけど私だってウォルターに釣り合う様に努力しないと!負けられない!ウォルターだけは誰にも譲ってあげられないの。そうと決まれば可愛くならないとね!シシリーよりも可愛く!ふふふ待ってなさいウォルター惚れ直させてあげる!
そう鼻息荒く決意したミランダは、痛い出費を覚悟して街に消えていった。
◇◇◇
「う〜、ない!ないないない!」
痛い出費を覚悟して街へ出かけてきたミランダだったが肝心の化粧品が街へは売って居なかった。いや、あるにはあるのだが元々化粧品は貴族や商人などの裕福なものが好む嗜好品なのでミランダには手の届く値段で買える化粧品がないと言った方が正しいのだが。
「どうしよう、やっぱり私には無理なのかな…」
絶望的な状況に思わず涙が出てきたミランダ
しかし、そんなミランダの視界にふと張り紙が目に入る
【⠀あなたの願い叶えます。なりたい自分になれる店魔法美容専門店Iris〜アイリス〜】
「魔法美容専門店アイリス…?こんな店出来てたんだ。アイリス…希望、か…」
「そうだよね!希望を捨てちゃいけないよね!よし!諦めるのはここに行ってからでも遅くない!そうと決まれば」
決意を新たにしたミランダは張り紙を剥ぎ取って店へと駆け込んで行くのだった
◇◇◇
カランコロンッ
「すいませーん!この張り紙を見て来たんですけどー!」
たどり着いたそこはこの辺では珍しい異国感漂う店。置かれた香炉の煙が部屋を満たし何とも言えない雰囲気を醸し出している。
「すいませーん!!」
ミランダが再び声を張り上げると暫くして奥の扉からひょこりと双子猫獣人の幼い少女達が顔を出した。
「オマエ客カ?」
「売り込みならお断るダヨ!」
「あ、お、お客です!この張り紙を見てきたの!」
そのミランダの言葉を聞いた少女達は目を輝かせるとミランダに着いてくる様に言った
「ならこっちコイ!」
「お客1名ご案内ヨ~」
言われるがまま少女達に着いて行くと、アンティーク調の寝椅子にだらしなく腰掛けながら煙管を蒸かしている女の部屋に辿りついた。
「セイラン!客連れてキタ!」
「セイラン!仕事シロ!」
「ったく、メイメイマオマオ。お前ら私の事は店長って呼べっていつも言ってるだろ~?あ、お客さん?いらっしゃーい♡」
そう言ってこちらにひらひらと手を振っているセイランと呼ばれた女は気だるげな色気を纏った物凄い美人なのだが何故だか胡散臭いオーラを放っていて信用できない。この店はほんとに大丈夫だろうかと一瞬思うも、もうここしか希望はないのでミランダは意を決して言う。
「あの!これを見て来たんです。お願いします!私を可愛くして下さい!!」
「は~い、かしこまり~♡」
剥ぎ取って来た貼り紙を見せ、深く頭を下げるミランダにセイランはにっこり笑うとそう言った。
「じゃあ、まずは状態のチェックからね」
「ん〜、どれどれ」
ミランダの顎をつかみ顔を右へ左へ傾ける
「肌ボロボロ、眉毛ボサボサ唇ガッサガサ!こりゃマイナス100点の芋女だね!あはは」
「なっ!?ほんとの事だけど~!酷いよ私の事からかってるの?もう帰る…こんなもの信じてここに来た私がバカみたい。」
いくら本当の事とはいえ散々な批評に悔しさと恥ずかしさとで涙が出る
そんなミランダをみてセイランは
「あー、ごめんごめん。そんなに泣くなよ〜。それ信じてここに来たあんたの目は節穴じゃないからサ」
「…ぐすっ、え?」
「だーかーらー、あんたの事、誰もが振り返る100億点の女にしてやるって言ってんの」
「…ほんとにそんな事できるの?」
やる気のなさそうな出で立ちでおまけにミランダの顔をバカにしてきたセイランにミランダは半信半疑だ
「任せろ〜?なんたってココはなりたい自分になれる店【魔法美容専門店Iris〜アイリス〜】だからね」
「可愛いを作るなんてお手の物さ」
◇◇◇
「はい、じゃあ服脱いで」
「え!?なんでですか!?」
「これから風呂で髪と肌整えるから」
「あっ、そういう…」
「なーに?えっちな想像でもしちゃった?」
「ななな///そ、そんなわけ」
「はははっ、まぁ準備できたら入ってきてね用意して待ってるから」
セイランにからかわれ赤くなったミランダだが気を取り直して準備を進めた
「あの~、終わりました」
「はーい、じゃあこのセイラン特性美容入浴剤入の湯船に入ってね~」
「わ~いい匂い!これセイランさんが作ったんですか!?」
ミランダは貴族や商人が入ると噂されている憧れのお風呂にテンションが上がりっぱなしだった
「そうそう、ミネラの葉とロメロのエキスそれから特性ポーション何かを調合してね。この湯に浸かってるだけで美白美肌効果、毛穴の黒ずみ角質除去、シワ予防、ムダ毛永久除去の効果あるからよく浸かってて。」
「分かりました!ふわぁ、気持ちいい~」
「よし、その間に髪洗って行こうかな。目閉じててね~」
「はい!ひゃ、これも気持ちいい~!セイランさんこれは何ですか?」
「これはね~、シャンプーとトリートメントって言うんだよ」
「へ~これはどんな効果があるんですか?」
「傷んだ髪のダメージをゼロにして永久的にキューティクルを傷つけさせないようにするとかかな~」
「?よくわかんないです」
「あははっ分かんないか!つまり、髪めちゃくちゃ綺麗になるよって事」
「そうなんですか!やった~」
無邪気に喜んでいるミランダは知らなかった。セイランの使う美容品の数々がどれだけ常識外れな効能を持っているのか、それを施される自分がどれだけの幸運を手にしたのか、ミランダはまだ知る由もなかったのである。
「次は眉毛を整えて顔のムダ毛も全部脱毛しちゃおっかな」
ショリショリッ
「セイランさん、私顔にニキビの痕とか残ってて凄いコンプレックスなんです、これどうにかなりますか…?」
「大丈夫大丈夫。この後するパックを使えば肌トラブルとはおさらばだから」
「そんなことまでできるんですね~」
当たり前だが、本当ならそんな効果がある美容品はこの世に存在しない。ここに存在するのは一重にセイランが特別だからなのだが、ミランダは知ることはないのだった。
「さて、下準備が終わったからここからが本番ね」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「いい返事♡今から魔法をかけてあげる」
◇◇◇
「さぁ、目を開けて」
セイランに言われて目を開けるとそこには別人の様に可愛くなった自分の姿が
「これが、わたし…?」
パサパサで傷んでいた髪は天使の輪が輝くうる艶髪に生まれ変わり、クルンとしたまつ毛にほんのり血色カラーのチーク、ぷるんとした唇は桜色に彩られておりどこからどう見ても美少女だった。
「「わー!ミランダ可愛いヨ!!」」
「さすが私じゃん?完璧~」
「セイランさん、マオマオメイメイちゃん…ほんとにありがとう~!ぐすっ」
あまりの衝撃と感動で思わず泣いてしまったミランダ。そんなミランダにセイランは笑いながら言った
「そんなに泣いたらブスになるよ?彼氏くんに惚れ直して貰うんだろ~?早く会いに行ってきな」
「あ!そうだった!…ほんとに大丈夫かな?」
可愛くなったとはいえ、まだ不安げなミランダにセイランは喝を入れる
「くよくよしてんなよ、言っただろ?誰もが振り返る100億点のいい女にしてやるって。自信もちな~?今この街でお前に勝てるやついないから」
「セイランさんありがとう!私頑張ってくる!」
その言葉にようやく自信を取り戻したミランダは店を後にした
◇◇◇
タタタッ
「ウォルター!遅くなってゴメン!」
お昼を一緒に食べる予定だったミランダが来ないので通りに出てミランダを探していたウォルター
「ミラ!どうしたの今日、は、、、え」
「どうしたの?ウォルター」
自分の顔を見て動きを止めた恋人に一瞬不安になるミランダだったが
「え///ど、な、え!?待って可愛すぎる…」
ぎゅっ
「ちょちょちょ!ウォルター!人が見てるよ…」
「無理、可愛すぎて他の人に見せられない」
顔を赤くして抱きしめてきたウォルターに口ではそう言いつつも満更ではない様子のミランダ
するとそこに
「あれ?誰かと思ったらウォルターじゃん」
「え~噂の彼女と一緒?」
「シシリー、ウォルター彼女といるよ?顔みてやろーよ」
「そうね、ウォルター彼女紹介してよ」
ミランダが変わる元凶となったシシリーとその取り巻き達がやって来た
「お前らいい加減にしろよ。付き纏うの止めろって言ってるのがわからない?」
ミランダに見せていた顔はなりを潜めシシリー達を冷たく睨みつけるウォルター
「え~ウォルターこわ~い」
「いいじゃん、彼女見に来るぐらいさ~」
「シシリーより可愛いって言ったんだから気になるじゃんねー?」
「そうよ、ほんとに可愛いんだったら私に見せれるでしょ?納得したら諦めてあげる」
睨みつけられてなおキャピキャピと振る舞うシシリー達。相当自分に自信がある様でこの場でミランダを吊し上げるつもりらしい。今朝までの私だったらここで逃げてたけど、もう今までの私じゃない…!
「お前ら!「いいよ、ウォルター」っでも、」
ウォルターの腕の中から抜け出し、シシリー達に振り返るミランダは自信に満ち溢れた顔で優雅に笑った
「私がウォルターの恋人だけど何か?」
「「「「なっ!??」」」」
そのミランダの顔を見たシシリー達は驚愕した。そこには今まで見たことのないような美女がいたのだ。
「え、可愛い」
「シシリーより遥かに可愛いじゃん」
「こりゃ、シシリー勝てるわけないわ…」
取り巻きたちがコソコソと話すのをシシリー本人は屈辱で真っ赤になりながら聞いていたがいたたまれなくなったのか早足で帰って行った
「こんなの聞いてない!…帰る!」
「「「待ってよシシリー!」」」
こうしてプライドを粉々に打ち砕かれたシシリーはもう二度とミランダ達の前に姿を表すことはなくなった
「ミラ、いつも可愛いけど今日は飛び抜けて可愛いね、どうしたの?」
シシリー達を撃退して家に帰る途中ウォルターが聞いてきた
「これね、ウォルターに惚れ直して貰うためにアイリスって店でやって貰ったの!夢のような時間だった…」
「俺のため?嬉しいな。でもアイリスなんて店あったかな?」
「私も知らなかったんだけどね。あ!ここよここ!ここにアイリスが…」
「あれ?おかしいな無くなってる」
◇◇◇
「「バイバーイ」」
ミランダが出て行くとメイメイとマオマオがセイランに駆け寄る
「セイラン今日何ポイント入ったノ?」
「私気になるヨー!」
「ちょっと待て今確認するから」
セイランはスキルブックを取り出し新しく追加されたポイントを確認した
【⠀満足pt100000⠀】
「喜べ子猫共!10万ポイント入ってる」
「10万ポイント!?なら私前食べたプリンがもう1回食べたいヨ!セイラン買って買って!」
「私は生ドーナツ食べたいヨ!ね、セイランいいでショ?」
「ん~、新しいスキル買ってそれでもポイント余ってたら買ったげる」
「えー!絶対買ってヨ!」
「スキルよりお菓子買エヨー!」
「もー、わかったわかった。買うから次のお客も探すの手伝って?」
「そんなの朝飯前ヨ!」
「次は竜の国ロランド王国!ここから大量ポイントの気配ビンビン感じるヨ~」
「なるほどね、じゃあ次はロランド王国で客探しでもするかね。」
「「じゃ、ロランド王国にしゅっぱーつ!」」
ひと仕事終えた美の魔法使い達は次なるお客を求めて旅立つのだった
【⠀魔法美容専門店Iris~アイリス~ 】それはどこからともなく現れる不思議なお店。
次は竜の国でお会いしましょう
最後までお読み頂きありがとうございます。ブクマ、評価頂けると嬉しいです<(_ _*)>