第72話 宿屋娘の成り上がり〜神で帝なお方に偶々出会い、一つの都市の中枢人物になる〜
「べっどふかふかですぅ......」
「統括待遇。その分頑張って」
「はぃぃ......」
ここはリリスちゃんフロアの寝室。
ふかふかクイーンサイズ天蓋付きベッドに、リリスちゃんを放り込んでリリスちゃん家族も腰掛けてる。
「執務室も、運動場も、みんなすごかったですぅ......」
私達はエレベーターから出てすぐに、リリスフロアの説明に入った。
リリスちゃんの円滑な寮運営の為に高機能を目指した結果、凄い事になったんだよね。
プライベードスペースである1LDKに、プラス各種施設を置いてある。
執務室に運動場がプラス施設に該当するね。
他にも複数の部屋があるけど、全部説明してたらきりがないから割愛。
基本的に各施設にサポートAIを配置してある。
ちなみに、機械に入ってる魂は便宜上AIって呼称してるよ。
「宿も忙しいだったろうけど、これからの仕事ももっと忙しくて責任も重いわ。その分の待遇だから頑張るのよ」
「ですね......休む時は休んで、頑張る時は頑張る、切り替えてがんばります!」
「それが良いわ。サポートAIもうまく活用するのよ」
「あれもすごいですね......人が居ないのに喋ってるなんて......」
リリスちゃん......いや誰が見てもサポートAI見たら驚愕するよねぇ、でもリリスちゃんフロアだけじゃなくて、学園の中にも配備する予定だし上手く活用して欲しい。
その為に生まれた子たちだから、活用してあげてほしい。
「リリス、たまには父さんたちも呼んでくれよ?」
「もちろんだよ!」
「あら、そんな時間があるのかしらね〜?」
リリスちゃんとリリスパパの会話にえーなが横槍を入れた。
確かに合間を縫えば良いかもしれないけど、最初の数年は手が離せないんじゃないかな〜?
「......! 確かに難しいかしれんな」
「そうさね、あたしらも頑張らんといけんよ」
この部屋を見た後で、経営予定の宿を想像すると遥かにハードルが高い事に気付ける。
学園都市の学区の近くってことは、相応の内装になってるはず、って想像するだろうね。
ある程度二人の意見も取り入れるけど、ベースとしての内装や構造は決まってるからね。
「ん、これ」
「これは......?」
二人が決意を固くしてる中、三人に一つのカードを渡した。
「うちの国で活動する際に、必須になるカードよ。偽装不可能な魔力波とパーソナルデータを元に身分を証明する為のカードで、部屋の鍵とかの重要な機能もあるから、紛失には気をつけなさい」
「あっさっきの乗り物に差していたやつですか?」
「そうよ」
渡したカードの見た目は銀色がベースで、表面には顔写真と名前、明確な役職などが記載されていて、裏面には獲得した称号や編集可能な自己紹介スペースが有る。
制作に必要な魔力波は見ればわかるし、私達が発行するならすぐに済むし、顔写真や称号なんかイルミナ世界のアーカイブに接続してしまえば直ぐにわかる。
一応うちの入国審査を管轄する建物では、魔力波登録装置に加えてパーソナルアーカイブ端末など用意してあるから、入国審査時点で問題無ければカードが発行される。
所謂、異世界物あるあるのハイテクギルドカードみたいなものだね。
今回は転移で来てもらってるから、えーなと私で直接発行したよ。
数少ない量産発行型じゃなくて、直接創造して作ったカードになるね。
「はい、イーノもマリアの分もあるわよ。紛失には気をつけなさいね」
「もしなくしちまったらどうしたらいいんだい?」
「治安維持部隊の警戒小型端末か、警らしている部隊員に声をかければカードの一時停止と、場所の特定をしてくれるから、まずは声をかけると良いわね」
「カードの停止ってなんか停止しなきゃいけない機能でもあるのか......?」
いい質問をしてくれたリリスパパ。
カードには身分証以上の大事な機能がたくさんあるからね。
「ん、お金の預け入れ、預けたお金を出さずに買い物できる機能、そこらへんが一番気になると思う」
「基本は本人の魔力波がありきで機能するから、カードを盗られても機能を不正利用されることは無いわ。ただ一応安全策として停止させるって感じね」
「抜かり無いですね......でもモノなら停止させる機能を停止させたり、魔力波の偽証とか出来ないですか?」
おぉ鋭いねぇ、リリスちゃんの有能さを感じさせる最高な質問が来た。
管理できるって事は、手入れ出来るって事。
システムに不備はなくても、管理する人に不備は必ず生じる。
「ん、大丈夫。説明は省くけど、わかりやすく言うなら......私達の家に侵入するより難しい、よ」
だって私達は人じゃないもん。
作ったもので、尚且定期管理している以上脆弱性はある。
けど人が作った脆弱性じゃなくて、神の作った脆弱性である以上、対抗できるのは神だけなんだよね。
まぁ......相手が神であっても大丈夫だと思うけど、一度ぐらいは敵対的な神と会ってデータを取りたいよね。
未知の攻撃は当然として私達の演算できる範囲なのか? 神格毎に実行できる力は? 敵対的な神を事前に感知出来るのか?
出来れば被害零が望ましいけど、ぶっちゃけ不可能だから割り切って神敵が来てほしい所だね。
「実際に問題が起きなければわからないでしょうけど、今はそういうものだと思っていればいいわ」
「ん、そういえば大事な事。このカードはM-IDC......|まぎかあいでぃんてぃふぃけーしょんかーど《Magica-IDentification Card》って名前がある。M-IDCの自分の顔部分に魔力を籠めると"メニュー"を展開出来てインベントリとか鑑定とか、登録してあれば"通話"も出来る」
「"チャット"とかも出来るから、書き置きとか通話するまでも無いようなら使うと良いかもしれないわね」
「え、ええっと......そのめにゅーとかつうわ、ちゃっととはなんでしょうか......? インベントリとか鑑定とかはスキルとして知っているるんですけど......」
「確かに説明不足だったわね」
スマホみたいな多機能を目指した結果、凄いものが出来た......けど、機能を十全に使えるように教育が居るかな?
これからの時代、M-IDC持ってないと買い物も何も出来なくなる時代が来る様にする。
国民だったり、留学してたり、仕事をしに滞在してる人にも無償で配る予定だからね。
必ず講習を受けてもらうように専門の窓口を作らないとかなぁ......ぁ、M-IDC回収窓口に役割もたせればいいか。
「簡単に言うと、文章を送れたり、カードに声をかけると通話相手のカードからあなたの声が聞こえる機能とか、円滑にコミュニケーションが取れる機能ね。仕事でも役立つと思うわよ」
「えっ......距離とか魔力とかどれぐらい......?」
「魔力は別に識別用に使うだけで、全然要らないわよ。それに距離も関係無いわ。異世界にでも呼ばれない限りは」
「な、なるほど」
細かく言うと覚えられないだろうから噛み砕いてるね。
電波なんてものは作ってないから、世界に充満したマナを変質させて伝達の機能を持たせる。
んで超上空に存在したマナを中継機というか、誘導装置としての役割を持たせる。
すると[M-IDC―電波化されたマナの線―上空のマナ中継―マナの線―M-IDC]って感じになる。
私達の暮らす惑星の各所に中継地点を設けてあるから、実は領土拡大しても直ぐに使えるようになってる。
ここら辺はえーなに任せてるから、私にとっての未開拓領域はまだ霧がかかったままで、今いる大陸のことぐらいしか知らない。
侵略でも友好でも傍観でも、終着点がなんであれ探検する楽しみを無くしたくないから、何が起きてても見ない。
一応えーなとALICEの国外を対応してる部署が認知してると思うから、もし私達にとってマイナスな事があれば伝えてくれる。
ネタバレは無しっ!
話ズレちゃったね、要するにM-IDCは異世界転移や召喚されなきゃ使える万能身分証スマホってこと!!!
「さておき、部屋の紹介も終えてカードも渡したし、予定は終わりだから宿に帰すわね」
「はい! 私これからここで働くんだぁ......たのしみっ」
「リリス、父さんたちも近くで働く、だからなんかあったら連絡するんだぞ」
「うんっ!」
「ん、もどるよ〜」
「はいっ。あ、べっどぉ......!」
よし、これから暮らしてもらう宿も紹介したし、ベッドを名残惜しそうにしてるけど、宿に返してあげよう。
これから3人は今まで以上に忙しくなるぞ〜!
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