第65話 徐々に得ていくモノ。
「んっ......!」
「戻ってきたわねぇ~」
「ほ、ほわぁ」
「ここは......活力が漲る......」
謁見の間に転移したよ。
なじみ深い空気の香りが充満する久しぶりの我が家だー!
「ここに二人で座るのも久しぶりねぇ......ほらおいで」
「んっ」
まだ二人がいるけど、すぐグナーデちゃんが気づいて来てくれるだろうし、放っておいていいよね。
いつもの様に、玉座に座っているえーなの膝の上に座って、収まりのいい所に位置を変えた。
えーなの右肩に頭を預けると、えーなが体を支える様に抱きしめてくれて、ふわっと鼻孔をくすぐるえーなの香りがする。
鼻の奥から脳に渡り、胸の奥にまで広がる香りにゾクゾクする。
えーなの体の感触とえーなの香りに、脳を溶かされて理性がドロドロに落ちて行く。
「すぅぅぅ......は~、空いた期間は数日だけだけど、この時を待ちわびていたって感じるわ」
「ひぅ......」
えーなが私のこめかみに顔を埋め、深く息をする。
耳や首筋にふわりと当たるえーなの息、ゼロ距離から聞こえるえーなの鼓膜を震わせる声、えーなから与えられるモノを溶かされた理性で堪能する。
「んっも......いつでも、どこでも、えーなと一緒なら、好き。けどいつもの場所なら.......いっぱい嬉しい」
「あら誘ってるのかしら? 我慢出来なくなっちゃうわよ。音亜ちゃんが良ければ、だけど」
「んぁ.......んぅぅぅぅぅぅ!!!」
私の言葉に煽られてしまったえーなが左手で私の服に手を忍ばせ、お腹を直接摩ってくる。
はぅ.......このままえーなとシたいけど、まだ2人もいるし.......せっかく帰ってきたんだから娘達にもあってゆっくりしたい.......んぅぅぅぅぅ!
<永那視点>
悩む音亜ちゃんの髪を解きながら謁見の間入口を見ると、グナーデちゃんと娘二人がこちらを覗いていた。
私が入口に向かってウィンクをすると、察した3人がウィンクを返してシュリーニャとディアナを連れて部屋から出ていった。
音亜ちゃんと私はラブラブ沼だから、公務の時でも、なにもない時でも、イチャイチャするし、その流れでもっと深くまでシたくなる事がよくある。
だからこそのアイコンタクト。シたいときにするのが一番だからごめんなさいね?
彼女たちが部屋から出ていったタイミングで告げた。
「音亜ちゃん、もう二人はグナーデちゃんが連れて行ったわよ」
「んぇ.......」
他の人から見たら無表情ジト目な音亜ちゃんが、私から見て少し表情を崩して目を丸めた。
その瞳には期待と罪悪感が入り混じっているのがわかるけれど.......私にはわかる。
私との時間が最優先で、こうなることもわかっていて、誘っているってことを。
「.......行っちゃったなら、仕方ないかも」
ほら、目を横に彷徨わせてから、上目遣いで私の目を見て、良いよって。
あ〜〜〜〜〜〜〜〜こうやって誘われたら、いつも無表情な表情を快楽で溺れさせて壊したくなっちゃう。
まって壊されてるのは私だ.......上目遣いヤバすぎ、理性壊れるわよそんな事されたら。いつもちゃんと顔を上げてジト目でも正面から見てくるのに、こういうときに限って恥ずかしいのか少し下に顔を傾けちゃってコレよ。
もう国宝じゃないの国宝じゃないわ私だけの宝よ。
私のする事、与えるモノすべてを表情を崩して嬉しそうに、愛おしそうに受け止めてくれるからいっぱい愛してあげたくなっちゃう。
「ふふっ、じゃっ寝室へ行きましょうか」
ふわふわに力が抜けた音亜ちゃんをお姫様抱っこで抱き上げて、手が首に回された所で私達の寝室へと向かった。
私達が居なくてもグナーデちゃんが毎日整えてくれている寝室へ入り、ベッドの上に優しく下ろそうとすると.......音亜ちゃんは回した腕を離さなかった。
「んっこのまま.......もう少し」
「えぇ、そうしましょうか」
この手の回し方、力加減、音亜ちゃんの表情、息遣い.......疲れているわね。
「はふぅ.......」
体勢を変えて私が仰向けになり、音亜ちゃんが上に覆いかぶさって体を預けてくれている。
音亜ちゃんのきらめくような白銀の髪の毛が私達二人を覆う。
にしても.......かなりムラムラするわ。
抱きしめたままだから密着度合いが強くて、おっきな音亜ちゃんの胸がギュウギュウと押されていて揉みしだきたくなる。
後ろに回した手から伝わる音亜ちゃんの体の感触や、体のラインをなぞる時に想像する音亜ちゃんの裸の姿。
っふー.......我慢我慢、音亜ちゃんもゆっくりしたいはずだし、私だってこういう時間をゆったりと楽しみたい。
矛盾するのが人間.......悩むことはない、自制することが大事なのよ.......!
「んぅ.......やりたい事いっぱいやった。けどつかれた」
「そうねぇ」
疲れたなら満足出来たと思うのだけど.......いきなり召喚されても音亜ちゃんは、持ち前のセンスで世界を統合しながらも遊んでいたし、満足出来てると思うわ.......出来てなかったら私が遊べる場所を作ってあげれば良いだけの事。
できれば.......すべての娯楽は私が提供したもので満たしてほしい。
けれど音亜ちゃんは楽しんでくれても満たすことは出来ない。
なぜなら音亜ちゃんは作るのも壊すのも、助けるのも害するのも、ヒーローになるのも悪役になるのも、全て全てやりたくて仕方ないもの。
わかっているのよ、音亜ちゃんは私のモノを壊して害して悪として対立することが出来ないってことを。
だから"用意"できるように私からも色々進めなきゃいけないわね。
「んぅ、シたい気分だった。けど、今はこのまま、寝たい.......かも」
「もちろん良いわよ。音亜ちゃん自身が、ぐちゃぐちゃにされたいって思ってる時にするのが一番だわ」
「.......言葉にするのは恥ずかしい」
「ふふっ、そうね無粋だったわ。それじゃゆっくり、ゆっくり過ごしましょうか.......」
真っ赤になった音亜ちゃんの頭に右手を持っていき、優しく髪を解くように撫でて、左手で背中を穏やかなペースでとんとんと軽く叩いてあげる。
はぁ.......かわいいわねぇ.......
* * *
<音亜視点>
――ドタドタドタッ
部屋の外から慌ただしく、苛立ちを感じる足音が聞こえてきて意識が覚醒する。
その足音を聞くと自然と体が硬直して、思考がめぐり、やがて無気力に放心していた。
『ん.......』
だがいつもと違い、硬いベッドで痛くなった体の痛みを感じ、鬱陶しさでベッドから立ち上がった。
普段と違う行動に驚きながら、ふと完全に光から閉ざされた部屋を照らそうと、両腕でカーテンを開けようとした。
『ぁ.......』
左腕無かったんだった。
なんだか記憶が混濁しているような気がする。
右手で左側の開けられなかったカーテンを開けると暗く、底しれない闇夜が広がって見えた。
それでも、この息苦しい部屋から少しでも変えたくて窓を開ける。
すると、新鮮な空気が流れ込んでくる。
目を閉じて深呼吸をすると、体の中の淀みが洗い流されるような感覚を得て目を開ける。
『んっ.......』
澄み渡たる快晴の青空に、眩しいぐらい自己主張の激しい太陽が見えた。
私と違う世界だと、避けていた景色が見えても吐き気はしなかった。
『音亜ちゃん、おはよう』
名前を呼ばれて振り返ると、制服を着たえーなが扉を壊して部屋に入ってきた。
先程まで淀んだ空気が漂って重々しかった部屋が、清浄で満たされた部屋に変わる。
扉が壊れてる様は少し愛おしい。
『『ママっ!』』
えーなの背後からひょこっと顔を出したのは双子の娘、悠羽と響羽。
ぴょんぴょんと跳ねるように近づいて来た娘二人の頭に、手を乗せて撫でてあげる。
響羽は義手の方で撫でられるのが好きらしい。
『.......』
穏やかで賑やかな夢のような世界に変わって、心がぽかぽかする。
えーなと一緒だとすごくぽかぽかするけど、娘二人が居ると別の方向で穏やかな気持ちになれる。
「わひゃっ!」
ん.......あれ、真っ暗。
「ちょっとおとはっ、あははは!」
ここは.......えーなの胸の中だ。
えーなの香りがいっぱいだ.......うへへぇ。
「ん、おはよ」
「おはよう音亜ちゃん」
「「おはようお母さんっ!」」
えーなの胸から頭を出して後ろを振り返ると、娘たちがじゃれ合いながらも笑顔で挨拶してくれる。
あの頃と比べると段違いだねぇ.......特別で頂点なのはえーなだけど、大切が出来たって強く感じる。
今まではえーなだけの世界だった.......けど変わったよほんと。
大切が増えたなぁなんて思ってると、リアやノアと最近会ってないことを思い出して.......そういえば生まれた頃からずっと森の管理を任せてるから、そもそも会うことも少ないことを思い出した。
悠羽と響羽が生まれて特別な気持ちを感じてから、私達の間で生まれたもう二人の娘が疎遠になってることに違和感を感じちゃう。
彼女からしたら今が正常なのかもしれないけどね。
「良い夢でも見れた?」
「んっ、最初は怖かったけど、嬉しくて、穏やかで、すごく心がぽかぽかした気がする」
「いい夢が見れた様でよかったわ」
「んっ!」
んぁ〜昨日はシようと思ったけど、ゆったりと過ごしたくなったなぁ.......まっ、たまにはね。
異世界でわちゃわちゃしてたし、世界統合に割と力を使ったからしんどかったのもあるねぇ。
今日はゆったりしながら.......いや進めてる計画の最終段階を進めようかな。
二人でするのはいつでもいいもん。えーなならいつでも答えてくれる。
「ママー今日の朝ご飯は何〜?」
「今日はママたちが行った異世界の食材とか、調味料をつかった料理よ」
「「異世界の料理!?」」
あの世界に行って得るものは結構あったと思う。
娘と離れることになって、えーな以外に対しても寂しいって感じること。
そして異世界丸々一つ手に入れた事加え、地球へのバックドアも仕掛けられたからね.......えへへぇ、どんな事しようかなぁ!
エインツ世界をイルミナ世界に統合したけど、一時的に隔離してしまえば、娘達が自立したいときに世界の管理神として選定出来る。
地球のバックドアは単純に何時でも地球に行けるようにしただけで、侵略してやるーとかは思ってない。
流石に"世界"さんに怒られちゃうだろうし。
「ん、食べに行こ。美味しいよ」
「「たのしみー!」」
「ふふっ、みんな着替えてからよ〜」
夢を見てから色々な思考が巡る。
大切を認識出来て、娘達への偽りのない家族愛が生まれた。
新たに獲得した領域も使い道がある。
地球へもまた帰れる。
それにこれからは建国から進めていた計画.......大陸全土から生徒が集まる学園を作るんだ。
私なら理想を作れるし、娘達に安心して通ってもらえるように頑張ろう。
まずは.......ご飯を食べてからだね!
フィリア精霊帝国万歳!エイネア万歳!今回は音亜ちゃんの再確認回!
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