第64話 拉致から始まった異世界の異世界は終わり。
<音亜視点>
「ん、それじゃこれからの勇者達について話そ」
なんか異様にルテイルがあたふたしてるみたいだけど......まぁその話はまた今度だね。
今大事なのは勇者達の事とか、私達のこれからについてだよ。
「そうですね、そうしましょう。まずは彼らをどうするかですね」
「ん、まず地球に帰してあげたい。けどスキルとか身体能力とか、気になるみたい。あぁ勿論地球へは帰してあげるよね?」
「もちろんです! ですがそうですね......スキルや身体能力を引き継いだ状態だと、元の世界で生きるのが少し難しくなるかもしれません......」
真剣な表情でエメラルドの髪を弄って悩んでいるルテイル。
確かに言われてみれば、異質な存在として見られちゃうよね。
隠して生きるにも便利な面が多くて難しいと思うし......強化された身体能力とか魔法を不意に使っちゃったら大変そう。
代わりに美波ちゃんの回復魔法とか使えるのは凄く良いと思う。
いざ重傷を負ったり、身内に何かあった時にでも対応出来るもんね。
「ん、慣れとか異質とか、それ以外に問題ってある?」
「あー......そうですね。彼らは地球出身とのことですが、地球では異能力を持った者を襲う集団が居ます。そこが大変かもしれません」
「え、それは......異能力者が元から居る、という事なんでしょうか?」
ルテイルの衝撃の言葉にインテリ眼鏡が質問をした。
え、なに私達が住んでた地球って隠れたファンタジー世界だったりするの......?
気になってえーなに視線を送ると横に首を振られた。
「そうですね。過去の偉人や英雄の類には異能力者も居ました。今の時代では表になれば組織に追われてしまう事も。私は世界に影響する問題でなければ、不干渉を貫いておりますので、助けてあげることは出来ません。だからこそ生きるのが大変だと思います」
「てことはあたしら、地球に戻っても幸せになれねぇって事か?」
「......きっと力を表に出しても、肩身が狭くなくて動ける異世界の方が幸せでしょう。ですが地球に戻るも貴方達の選択次第です」
へぇ......そこの選択肢は委ねてくれるんだ。
助けてあげられないって言うのも、神っぽいよね。
神である上位存在は生物に干渉しないって言う、暗黙のルールでもあるのかな?
まぁそんな所だとは思って居たし、じゃぁ......さぁ......?
「んっ」
「あら?」
「......」
「ふふっ、良いわね」
「んふ」
えーなに目線で話しかけて、共有したから押しちゃっていいね。
周りからは不思議そうな表情で見られたけど。
「ん、帰っても大丈夫。きっと上手く立ち回れる」
「そうよ、この世界の人間の泥臭さも見て、なんだかんだ言って貴方達、人間相手に遠慮なく戦える異常者じゃない?」
「「「「い、異常者......!」」」」
火の玉ストレートな言葉を投げかけられて、間違っていない事実に狼狽える勇者達。
だって理由が何であれ、人同士の殺し合いに参加して殺っちゃってる訳だしね。
異常者以外の何物でもないよ。
「皆さんは......どうですか?」
勇者達のリーダー的存在のインテリ眼鏡が皆に問いかけた。
その言葉に三種三様......という訳ではなく、みな真剣な表情で答えた。
「「「帰ろう」」」
「と、みんな意見は一緒の様です。お願いできますか?」
「えぇ良いでしょう。では帰すのにも色々話が必要だと思います。私達は個別に話をして、そのまま帰しますので別れを」
ルテイルの言葉を受け、イワノフを始めとした|エインツ世界組《シュリーニャ、ディアナ》と私達に視線を向けた勇者達。
インテリ眼鏡は真剣な表情で、桜はいつも自信のある表情に寂しさが、瀬楽君は呆けた様で、美波ちゃんは目尻に涙を溜めて。
「私が代表して......皆様、戦い方や魔法を教えて下さりありがとうございました。厳しい環境の中で守ってくださった事、共に戦えた事、短い間でしたが思い出も沢山出来ました」
「「「「お世話になりました!」」」」
「みんな......戦えてよかった。僕らの事に巻き込んですまなかった......けど出会えた事感謝してるよ」
双方別れを惜しむような空気が漂う。
ほんと短い間だったけどね~色々あったから長く感じちゃうのも無理は無いかな。
「あ、あのネアさん......このお着換えバングルって、あっちでも使って大丈夫なんですか......?」
「ん、地球で? どうなの?」
「使えますよ」
「ん、そういう事らしい。大事に使って」
「わぁ......! ありがとうございますっ!」
美波ちゃんから質問が飛んできたけど、あぁそういえばお着換えバングル作ってあげたね。
あれは着替えが鬼の様に楽になるから重宝すると思う。
それこそ......コスプレとかで髪の毛被ったり、複雑なコスチュームとか凄く楽になるんじゃないかな......?
絶対美波ちゃんって部屋の中だけでコスプレするタイプだもん分かるよ。
「では、私達は帰還に向けて話をするので失礼します」
「ん、”またね”」
ルテイルと勇者達4人が目の前から消え、神界には私達とイワノフ、シュリーニャ、ディアナだけが残った。
「さて......最後にディアナ、貴方を私達の世界に帰して解散ね」
「ん、何かすることも無い......あ」
「......神、行っちゃいましたね」
イワノフが神と話をしたいって言ってたの忘れてた~!
相手がそそくさと去って行ったから仕方ないけども......。
「私達で良ければ聞くわよ? 一応私達も神だからね?」
「ん、そうそう。そっちの国では面白いモノ見せてもらったし、質問して良いよ」
「......では質問をさせて頂きます。何故、神は私に力を与えたのでしょうか......何故、神は神であるのに直接解決出来なかったのでしょうか」
確かに、イワノフは導くという力を、神の一端を力として受け取っていたんだっけ。
神が直接関与できないのはまぁ......元々人間だったから、問題を直接排除出来なくて、神としての階位が低くて顕現して解決できなかったんだろう。
後者は分かるけど、前者は......多分、きっと。
「ん、力は自分の子孫達をより良い方向に導きたかったからじゃないかな。神は元々建国の王だったんだし。追加で推測を語るなら......力を別けたのは共に手を取り合って欲しかったんだよ思う」
「......」
呆けた様に止まるイワノフ。
デナス神は”自国民”と前、言っていた。
これは要するに自分の国の民というニュアンスの方が強いだろうと思う。
神界であるこの場所は、王宮の部屋っぽいしねぇ。
はあ......ちょっと話すぎちゃって気持ちが疲れちゃった。
「解消したかしら?」
「......えぇ」
「それなら良いわね」
呆けたままであったけど、イワノフは確かな返事をして答えた。
解決したなら......そろそろ帰るか!
「ん、それじゃ私達はそろそろ......」
「......あ、あのっ!」
私達が切り上げようとした所で、シュリーニャが待ったをかけた。
全員がシュリーニャへ視線を向けると。
「あっ......えと......あのっ......」
「っ......! ネア様、エイナ様」
シュリーニャが言葉を詰まらせていると、イワノフが声をかけて来た。
「ん」
「どうしたのかしら」
「もしよかったら此方と其方の国で、国交を開きたい。内容については今後詰めて行くとして、シュリーニャを外交官として送りたいんだ」
「ほー?」
良いお兄ちゃんだねぇ......妹の気持ちを良く分かってる
まぁ送り届ける所までで、それからはシュリーニャの勝負だね。
建前は国交、それでいいか。
「んふ、良いよ。細かい事は後で、ね?」
「......! 感謝するっ! ほら、シュリーニャ、王女として......君として頑張ってくるんだ」
「はいっ!」
ディアナだけが通じ合って無い中、話は進みシュリーニャが付いてくることが決まった。
「ん、ディアナ。もしこっちに戻って仕事の当てがなければ......シュリーニャの護衛として働いてみたら?」
私はディアナに提案をした。
シュリーニャの応援でもあるけど、単純にディアナの帰還後が気になった。
ちゃんと連れて帰るなら責任を持たないとね。
「それは......良いのでしょうか?」
「ん、その方が良いと思う」
「ディアナ。貴方が居てくれると心強いです」
「シュリーニャ殿下......ではこの場でその様に決めさせて頂きたく! そしてどこかで休暇を取り、故郷を見て回る許可を頂きたいです」
「はい、それぐらいお安い御用です。一緒に行きましょう......しっかりと守ってくださいね?」
「っ......はっ! 命を懸けてでも!」
シュリーニャが大胆にディアナの腕を抱き、上目遣いでディアナにアピールした。
二人が世界を展開している裏で、私はイワノフに物を渡した。
「ネア様、これは一体?」
「ん、これを飲めば、対になった物を飲んだ人と念話出来る。まぁとりあえず飲んどいて」
私は事前に作っておいた水を魔力の堅い膜で覆った、薬みたいなものを渡した。
実はこれ、同じようなのを勇者達にも飲ませてあったりする。
「わかったよ。これで連絡を取ればいいのかい?」
「ん、繋がるのはシュリーニャだけどね」
さて、粗方仕込みは終わって、いよいよ帰るだけになっちゃったね。
この世界は吸収して、地球のアルーテ世界には種を蒔いた。
「さぁそろそろお別れの時間よ。と言っても惜しむほど会えないわけでないけれどね。同じ世界の枠組みだから何時かは行き来できるようにするわ」
えーなの言葉でイワノフ、シュリーニャ、ディアナそれぞれ私達含めて別れを告げ、イワノフを王城へ転移させ、私達も自分の宮殿に転移した。
これから蒔いた種が芽吹いて刈り取るのも楽しみだけど......一番は娘達にようやく会える事かな。
あ、あと国も発展させていきたい。
進めていたモノは既に完成していたけど、まだ人材を集めてなかったからね。
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