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女神適合者の異世界侵行  作者: 水無月鷹野
第二章 一節 次元を超え行く百合帝妃
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第58話 パーティー開催。

「これが証拠です」

 

 シュリーニャが手の甲に光らせたのは聖印っぽい物。

 確かに神力をそこから感じる。


「ん、確かに」

「感じるわね」

「ほっ......」


 私達が確認すると、シュリーニャは安堵の息を漏らした。


「そ、それでですね。先程デナス神からの助けを聞いてない、とおっしゃってましたが......」

「ええその通りよ」

「......ひとまずお話を聞いて頂けませんか」


 えーなが質問に答えると、真剣な表情でお願いしてくるシュリーニャ。

 お話か~多分世界の事とかかな。来た時の鑑定結果がやばそうだったもんね。

 とりあえず聞いてみようか。


「ん、聞かせて」

「はい。ではまず前提の話で、私の神託の神子と言うのが――」


 神託の神子。

 それは世界の管理神によって、生まれる時から選定された者。

 聡く、地位のある女子が選ばれるそうだ。

 ただしこれは代々、神託の神子に選定された者以外には伝えてはならぬ、と言うの縛りがある。

 シュリーニャはその神子で母親から色々教えてもらったらしい。

 そして1年前、初めて神託が下ったそうだ。


 

 ――我はデナス神。この世界の管理神。


 

 ――この世界は滅びへ向かっている。


 

 ――次元結界の損耗やマナ放出生物の激減により、滅びへ向かっている。


 

 ――草木は枯れ、水は消滅し、弱き者から死に絶える。



 ――宇宙は狭まり、星も消え、世界が消滅する。


 

 ――2度目の神託の時、救済は訪れるだろう。


 

 ――備えよ、異界の者を招き、導け。


 

 ――我が元へ。



 と、言葉が記憶に刻まれるように聞こえたらしい。


「そして勇者召喚がされる前、救済が来る。とだけ神託が下りました......その言葉だけで、どこに導けばいいのかもわからないのです。まさか世界の危機だというのに伝え忘れるなんて事、神様がするはずもありませんし」

「ん、神は凄い物じゃない。忘れることぐらい、あると思う」

「そうね。まぁ私達以外の神なんて知らないけど......今の貴方がどういう状況なのか教えてくれるかしら」


 私達が会ったことあるの創造神だけだもんねぇ......。

 それよりもこの檻の中に入れられてる理由が知りたい。

 

「あ~それについては俺から説明する」


 説明を名乗り上げたのはグルシチだ。

 彼の説明を聞いてみると、この国には2つの宗教があるそう。


 1つ目は主神ゼノス神を信仰するゼノス教。

 王の一人であったが、人の理から外れ神へと至った。

 その国の国民が信仰し、ゼノス教となった。

 

 2つ目はデナス神を信仰するデナス教。

 ゼノス神から神格を受け継ぎ、正当なる後継者と言われている。

 ゼノス神が放った四天魔獣王の脅威によって、ゼノス信仰は邪教と呼ばれるようになっている。


 そして邪教と呼ばれたデナス信徒がシュリーニャらしい。

 だが捕縛してからシュリーニャの話を聞いてしまった。

 

 四天魔獣王配下の魔物は非戦闘員だったり、敵対行動を起こさなかった者へ攻撃していない事は記録に残っている。殺されたのは恐怖で矛を向けた者と、敵意を持って武器を手に取った者だけだった。


 それに、四天魔獣王を中心とした領土は緑豊かになって行った事から......デナス神が生み出したのはマナを生成する特殊な生物だという事。

 ただ生物がそこに居るだけじゃ緑は豊かにならないのが普通だろう。


 神託の言葉から察するに、マナが無くて滅びそうだからマナを放出できる生物を産み落とし、魔物に守らせたという事だ。


「俺はその話を聞き......納得してしまった。だが俺達は王の矛、表立って反抗なんて出来なかった。だからシュリーニャ殿下にはせめて、牢屋の中だが快適に過ごせるようにしてあるんだ」

「それであの様なのね」


 牢屋の中では快適そうにしているシュリーニャを見ながらえーなが言った。


「それよりこちらこそ神だとかの話が気になるんだが......」

「まぁそれは後でいいと思うわ。それより今の状況をまとめると......シュリーニャが邪教と呼ばれるデナス教徒で、正妃から神託の御子の事を教えてもらって、実際に神託が下って勇者の誰が神なのかを見極めてから接触しようと思ってたって感じかしら」


 えーなのまとめた言葉に対して、シュリーニャが首肯した。


「で、グルシチ......あなたは聖王の指示で邪教を捕えたと。勇者を襲撃したのはなぜかしら」

「それは簡単な話で、我々に強く意識を向けて欲しかったのだ。使いに出したのは死んでもいい人間(トラブルメーカー)だから気にしないで欲しい。それよりだ、王は君達勇者を――――」


 * * *


 最悪ですね。

 シュリーニャ殿下の身柄が~の下りに唖然としてる間に置いて行かれました。


「あ、あの二人が居ないと不安......ですね......?」

「あぁ......確かにそうだな」


 美波さんと瀬楽君が呟いた。

 確かにその通りです。今の私達はなかなかに厳しい立場に居ます。


 親衛隊に命を狙われていますし、単純にこの勇者が主役で策謀渦巻く貴族パーティーに取り残されてしまった所がまずい。

 先ほどまではエイナさんがフォローに入ってくれてましたからね。


 私のような天才でも経験の浅い者は厳しいです。


「東条、悩んでるみたいだが......とりあえずこの場に居れば大丈夫だとあたしは思うぜ」

「......確かにそうですね。この場に居れば話しかけられな――――」


 ――ゥォォォォォ!


「「「「!?」」」」


 この場に留まればいいと判断した途端、会場の入り口から雄たけびのような声が聞こえた。

 パーティー会場で何か盛り上がることがあったのかもしれない。なんて呑気な声をしておらず、どちらかというと声を上げて威圧している印象が強い。

 そう、正に戦いに身を投じる兵士のような......。


「皆、とりあえず行ってみましょう」


 私は皆に言って、バルコニーから会場を覗いてみると......


「「ウォォォォォォォ!」」


 似たような装備をした騎士同士が斬り合っている様子が見え、逃げずに魔法を使って応戦する貴族も見える。

 だがその貴族も一方に偏ってるわけではなく、聖王側と入口側の騎士団、両方に存在する。


「なんなんだこれは......」

「ひっ......」

「東条、あんたこの状況分かるか?」


 桜に聞かれた私は思考する。

 騎士同士の戦い、貴族同士の撃ち合い。

 そこから見るに内戦やクーデターだろう。

 

 だがそんなこと説明しなくても分かる事だと思う。


 お互いの旗印は......聖王を中心としたグループと、前線に見えるイワノフさん......?

 聖王と王太子の戦いって事ですか? 何故......?


 既に王になる事が決まっているというのに、親である聖王に切っ先を向ける意図とは......?

 ひとまず私達も傍観はしてられませんね。

 逃げるのは......難しい。そこかしこが戦場です。


 幸いなことに、バルコニーに居る貴族は身を潜め、両陣営ともバルコニーへ攻めてきません。


「瀬楽君」

「あぁなんだ博人」

「貴方の直感は王様とイワノフさん、どちらに?」


 瀬楽君、彼は2つを除いて凡庸だ。

 勉強も頑張らなければならないし、運動も然り。人付き合いだってそうだ。

 だが飛びぬけていることがある。


 弓術

 どんな計算をすればそんな意味の解らない矢を射れるのか、毎度理解に苦しむ。

 そして2つ目が......直感。


「俺達の仲間はイワノフさんだ。こんな事聞かなくても分かってたろ?」

「まぁそうですね」


 私は既にイワノフさんがこちら側に立って居る事は解っていた。

 今までの態度、接し方、そして逆に聖王側の関わり方、対応。

 だがやはり瀬楽君の直感が私と同じ結論に至るのは安心できますね。


「二人も、戦う事になるかもしれないけど大丈夫ですか?」


 私は桜と美波さんの方に振り向いて問うた。


「も、もちろんです! 皆に付いて行きますっ!」

「あったりめぇよ、あたしら4人居ればどうにかなるさ」


 殺意に塗れた戦場へ向かうのは怖い。

 でも親身に接してくれたイワノフさんの元へ行き、事情を知りたい。

 イワノフさんが完全に白とは言えないけど、私の推測と瀬楽君の直感を信じる。


「さて......行きますよ」

「うい~!」「おうっ」「は、はい!」


 私は眼鏡の位置を治し、気を引き締めて戦闘を避けながらイワノフさんの元へ足を運んだ。

 

 * * *


 ふぅ......会場に戻ってきた。

 地下にいると息苦しく感じちゃう。

 さて、それより......


「ん、すごいことなってるね」

「お祭り会場ねぇ」


 地下から出て廊下を通り、会場へ戻ってみると2陣営の衝突が起きてる。


「い、一体何が起きているのですか!?」

「先手を打ったというわけですな......王太子殿下。ならば......」


 シュリーニャが状況に追いつけず、グルシチはなにか覚悟を決めたような顔でつぶやいた。

 それにしてもさっきまできれいだったパーティー会場が地獄だね......ご飯が床に散ってるよ......ぬーん、食べたかったぁ......。

 

 机は倒され矢や魔法の盾とされ、豪華なシャンデリアは落ちて下敷きになった者が居り、骸となった給仕の人間、騎士が血を流し倒れ、距離を取り遅れた貴族が床に伏す。

 床は大理石で出来ており、血液で見えなくなりそうなほど激戦だ。

 血液の匂いが充満しており、何も知らず来た令息令嬢は気絶し放置されるかバルコニーへ掃けられる。


 そして私達は狙われない。

 恐らく勇者が居るからだろう。


「さて、音亜ちゃんどうする?」

「んぅ」


 私達の居る場所が空白地帯になりつつ、えーなにどうするか聞かれた。

 グルシチのつぶやきを頼りに考えるなら、イワノフ対聖王の構図だろうね。


 それを前提に考えて、イワノフに加勢するかスルーしてシュリーニャの要件を済ませるか、適当にふらついて帰れるようになったら帰るかって所かな。

 

 正直適当にぶらついて帰るのが正解だとは思うけど......面白い方に行きたいよね。

 なら神関連でお話を進めたい所......けど、それはやろうと思えばすぐできる気がする。

 だって神の居る所なんて神域かこの世界のどこかでしょ? 探そうと思えばすぐ見つけられるよ。


 だったらイワノフの方へ行って加勢するかは別として、今のこの戦いを見届けてから行くでも良いよね。

 なにか面白いことが起きるかもしれないし、それ以上にこのリアルな戦いを目にするのは久しぶりで面白いからね。

 いまこの間にも死んでいる人が居るだろうけど......えーなと一部以外の生き物に対してそこまで気持ちを割く訳ないし、鑑賞するのも一興だよね。


「殿下、俺はやらなければならない事があります。勇者殿、殿下を頼む」


 いきなりグルシチがシュリーニャに一言告げ、私達の方に向かってお願いをしてきた。

 そして返事を待たずに倒れた騎士の剣を取り、駆けて行った......聖王陣営の中心部へと。


「行っちゃったわね」

「ん......どうしよ」


 シュリーニャは引き続き困惑した顔であたふたしてるね。

 んぅ~シュリーニャをお願いされたけど......安全な所に連れて行くべきだよねぇ。

 でもイワノフの方も気になるし、おいて行っちゃった勇者達も気になる。


 それに......グルシチの今までした発言と、この状況で向かう先、それを考えるとグルシチの方も見にいきたい......!


「私達二人が居れば余裕で守れるわよ。だから行きたい方へ行きましょう?」

「......んっ!」

フィリア精霊帝国万歳!エイネア万歳!今回は説明回とパーティー開催編!


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