皇帝が残した手記
俺はベル・フォン・デブルイネ皇帝。
デブルイネ帝国の皇帝だった男だ。
『戦によって纏まったが、次代であるお前は心優しく時に厳しく、平和になった帝国を繫栄させるのだ』
それが父の残した最後の言葉だった。
俺が目指すのは平和な治世。
それを胸に刻んでいたが、いつしか変わってしまった。
変わった節目は明確だ。
謎の技師、ルノスイ夫妻との出会いだ。
彼らが齎したのは帝国国民を幸せにすることが出来る技術。
紆余曲折あったが、技術力や考え方を買って貴族階級まで成り上がって行った。
周りの貴族も完璧に信用するほどの手腕だった。
それほどまでに帝国は繁栄の一途を辿った。
『皇帝陛下。南方の国を攻めましょう』
......平和に行くと決めたはずだった。
言い訳はしない。相談役として徴用してしまった俺の責任だ。
相談役にしてから、徐々に俺の考え方はあいつらに侵されていった。
《《帝国》》が繫栄する為なら、他を犠牲とする。
悪魔的発想だった。
亜人差別的発言を刷り込まれていった俺は長い時を経て、亜人差別主義者へ堕ちた。
父の残した言葉を遵守できなかった、弱い心だったのだ。
それから兵器開発が始まった。
彼らの作り上げた兵器は驚異的であった。
鎧も貫通させ、人体実験と称して亜人の村を襲撃した時は亜人特有の身体強化すら破って行った。
俺は力と彼らの知識に溺れて行った。
それからは早かった。
農業国を攻め落とし、亜人を奴隷として。
奴隷を国民に対して生活必需品レベルにまで依存させた。
奴隷が浸透してからは幸福な国になった。
そう、帝国臣民のみの幸福が享受される国へ。
後はどんどん外道に転がり落ちるだけだった。
ルノスイ夫妻に権限を与え、それを黙認するだけ。
そして長い時を経て亜人を擁護する者の粛清が終わり、戦争が始まった。
*
「......あの後ルノスイ夫妻はどうなった」
<――――――――>
「ふっ......因果応報だな。俺はどうなる」
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「っ......いいのか?」
<――――――――>
「......」
<――――――――>
「わかった。それが罰というのなら」
<――――――――>
「あぁ、勉強しておく」
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