第3話・音亜ちゃんは狩りへ
※2023/08/09 加筆修正済み
拠点を作る予定の場所から離れて相も変わらず、不思議な景色の森を歩いていた。
標的は居るかもわからない獣と、食べられそうな果実や草。
≪鑑定≫があれば外れを引くことはないでしょ。
「あ、忘れてた。魔法......」
ナチュラルに狩りに出ようとしたけど、魔法で攻撃的なものやったこと無いね?
いきなり戦う羽目になったり、狩り時にぶっつけ本番は流石にね。
たとえ怪我しないほどに相手が弱くても、えーなが心配するし悲しんじゃう。
「まずは......」
<魔法>で使える攻撃魔法を作ろう。
基本私が動く必要のある攻撃魔法は無しにして、魔法使いらしく後ろで控えてバンバンする感じで......氷系ってカッコいいし氷系統で進めていこう。
えーなと暮らしてから異世界モノなんて無限に読んできたから、実際にその立場になって魔法作るなんてワクワクすごい。
さて、実用的な魔法より、カッコよくてロマンな魔法を作っていこう。
「前提として、傷を少なく、だよね」
狩りなのにぐちゃぐちゃにしちゃ行けないし、あ〜でも確か肉って血抜きしないとまずいんだっけ。
氷で脳みそぶち抜いて、傷跡が凍らない様に物理現象だけ作用するものが良いかな?
矢みたいな形状なら飛びやすいよね。
果たして魔法が重力に沿って飛ぶのか知らないけど。
「あ、いきなり氷もいいけど、先に基礎、やっておいたほうが良いかな」
基礎的な火属性とか、水属性とか、そこらへん触れて感覚を掴んでからやったほうが良さそうかな。
いきなりぶっつけ本番なんて、料理でいきなりアレンジしてみました♡みたいな地雷行為だと思う。
折角だから基礎属性である火、水、風、土に加えて光と闇それぞれやってみよう。
前提として、この世界の魔法は『魔力+属性+動作+性質』を魔力を使って、フィーリングで発動させるんだけど......フィーリングだと不安定だから詠唱が必要。
詠唱して正確なイメージを自分の中で固定化して、放つのが普通。
その情報を元に実践、詠唱はしないけどね。
まずは火から。
『魔力少量+火属性+人差し指を向けている方向へ飛翔+矢の形状』をフィーリングでイメージして、矢の形状に形を作る。
後は射出する事を意識して、魔法を発現。
「わわっ」
仮称≪ファイアーアロー≫が空へと射出され、ある程度遠くまで飛ぶと霧散した。
魔法ってこんな感じなんだね......すごい、興奮してきたよっ!
「次は――――」
興奮した気持ちのまま、水属性で高圧洗浄機みたいなことをしたり、風属性で小さな竜巻を起こしたり、土属性で土を圧縮して石のように固くして壁を作ったり、色々試して遊んでみた。
それぞれ属性毎に長けてる物があるから、必要に応じて使いまわしていきたいかな。
因みに水は飲めた、とても美味しかった。
さてさて、今までは前菜、こっからはメインだよ。
残りは光と闇、そしてその属性が複合された上位魔法を試していく。
光属性はわかりやすく光玉を浮かべてライトアップさせて、自分の居る座標を常に追いかけるように性質をもたせられるか実験したりした。
闇属性は厨二心を沸き立たせて、自分の周りで浮遊するフローティングソード作り、魔力で操って一人で何人もの戦力を演出出来るようにした。
「んっ、やっぱ闇、闇はカッコいい。ロマンある。フッ......」
固まって動かない表情を崩してニヒルに笑いながら、森の中で顔の前で手を広げて腰を落としてポーズをする。
因みに漆黒のフローティングソードが周りで浮いて結構様になってるけど、私自身の格好がパーカーにショートパンツで、なんならちょっとだらしない体型である。
恥ずかしくなってきたのでやめた。
最後に、属性を合わせた上位魔法をやってみよう。
火水風土でも複合出来るけど、今回は光と闇でこれからを楽にする魔法......空間属性を使っていこう。
さっきまでの魔法とは違って強く魔力を込めた空間属性、勿論性質は固有の空間を生成して世界に登録。
『濃縮魔力+空間属性+発動時の手のひら座標+亜空間生成と登録/呼び出し』
「ほわっ......」
手のひらにブラックホールみたいなモノが出てきた。
多分これが私の望む≪亜空倉庫≫の入り口。
試しに石を入れてから、少し移動するとホールが消える。
もう一度≪亜空倉庫≫を使用して、ホールに手を入れると何があるか頭に伝わってくる。
ちゃんと石があった。
「よしっ」
アイテムボックスみたいなものも用意出来たし、魔力さえあればフィーリングで魔法が出来るってのがわかった。
じゃあ狩りで使う魔法も作ってしまおう。
さっき考えた氷の魔法『魔力少量+氷属性+人差し指を向けた方向へ飛翔+つらら状で状態異常は発生しない』
そして魔法を誘導する『魔力少量+無属性+指定座標から指定座標まで魔力の道を生成+魔力の道に触れた魔法を誘導』
これで≪アイスピアッシングブラスト≫と≪マジカルリーディング≫が出来た。
命中率と殺傷能力を確保できたし、準備はいいでしょ。
狩りの時間だ。
* * *
来た道とは違う方向の森の中を歩く。
進んでいくと動物の痕跡があり、私はさらっと気配を消して、神経を森に張り巡らせると、生き物の気配を見つける。
気配を追って近づいていくと......白く薄汚れた体に額に黒い角、目測1〜2メートルのうさぎさんを発見。
鑑定をしてみる。
[魔物] ブラックホーンラビット レアリティ:B 品質:B
黒い角を持った大きなうさぎ。
とても凶暴で、生物を見つけると突撃する習性がある。
角の刺突で生物を殺すが、草食動物だから死体は放置して草を喰む。
別名キリングラビット、お肉はおいしい。
「んふ」
鑑定なのに不思議なテキストだ、まぁ肉が美味しいなら良いや。
今いる位置から50メートル以上離れているけど、≪マジカルリーディング≫で≪アイスピアッシングブ......長いわ≪アイスピアスト≫にしよう。
≪マジカルリーディング≫も≪カルリーディ≫にしよう、こっちのほうがカッコいい。
「≪カルリーディ≫......≪アイスピアスト≫......!」
作った魔法に名前をつけて、インスタントに発動させた。
≪カルリーディ≫に誘導された≪アイスピアスト≫は、障害物をなだらかな動きで避け黒角兎の喉に吸い込まれ――
――ドシュッ
「ギュァ」
喉を貫かれた黒角兎は喰んでいた草と共に口から血を出し、喉からも大量に血を垂らしてそのまま倒れた。
その様子を見届けたら、周りを警戒しつつ兎の元へ到着。
「ん、これだけでいいかな」
近づいてみるとやっぱり2メートル程の大きさで、食用のお肉はこいつ一匹で済みそう。
「んぅ?」
兎の死体を観察していたら、死体の下敷きになった草が目に入った。
そこら変に生えている他の草と違い、魔力を感じる。
[植物] ルミマナメニークサ レアリティ:A 品質:B
魔力の元であるマナが多く含まれている草。
水分が多く含まれ肉厚で、水分にマナが含まれている。
香りが高く、食用としても使える。
この世界には魔力、マナ、神力が存在してる。
土着神や現人神、神器や神から降ろされた生物や植物に、神力が取り込まれてマナとして放出する。
放出されたマナが世界に充満し、普通の生物や植物がマナを魔力に変える。
少量の神力から大量のマナが生まれ、少量のマナから大量の魔力が生まれる。
使われた魔力は絞りカスとして世界に蓄積し、圧縮され、長い時を経て神力へと戻る。
マナなんて言葉が出てそういえば魔力とマナってなんだっけ、って思ったら与えられた知識の一つをぶわーって脳裏に浮かんだ。
要するに魔力の上の存在で、これでおくすり作ったら魔力がいっぱい回復するって事だよね。
でも食用としても使えるみたいだし、そっちがメインかな......一応私、魔法の女神なので......
潰されたり、血に染まっていないルミマナメニークサを摘んで、殺った兎を≪亜空倉庫≫にぶちこんでかえりまーす。
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