表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神適合者の異世界侵行  作者: 水無月鷹野
第五節 聖戦、矜持、決別
41/96

第37話 戦いの前の忙しさ

 ナタリーちゃんから聞いた話をまとめてみると、少し前から帝国は国内で食料や鉄を収集し始め、それと共に国境線付近に軍を集結し、その行動と共に王国内の過激派が露骨な行動を始めたようで、いざ戦争が始まるのか! という所まで来ていたようだ。

 そして一部の者のみが他国へ亡命すしようと言う話が出たのだが、必ず海を渡る事になるのだが帝国の航空戦力と海戦戦力を考えるに厳しいとなった。


 だがつい先日希望の糸......私達の渡した導きの石に縋り、私達の所に避難してきた運びの様だね。


「そして、もりをとおるまえに(森を通る前に)ほうこくをうけて(報告を受けて)、|ていこくがしんこうをはじめたようなのです《帝国が侵攻を始めたようなのです》。そのときでんごん(その時伝言)をもらいました『戦争が終わったら迎えに上がる。だからナタリーはあの方の元で待っていなさい。そしてネア様エイナ様。ナタリーの事、よろしくお願いします。戦後に約束果たさせて頂きたく』と」

「......ん、そう」


 この感じならあの辺境伯っぽいね。

 という事は、国内の敵勢力と国外......帝国軍の両方から攻撃を受けているんだね。国内の鎮圧と国境部の戦、そして帝国の単純な戦力に押されて壊滅的な状況かな。

 特に貸し借りも無いし帝国も王国も滅ぼす理由は無いからなぁ......辺境伯とか前線都市に居る知人ぐらい、救おうと思えるのは。


 私達の力は行使すれば誰だって、どんな形でも救い出す事ができる。

 だからと言ってすべてを救おうとすれば、私達が大変だしそれらを救って満たされるような勇者思考じゃないからね。

 目の前とか見知った者に被害が行って胸糞悪い気分にさせられそうになりそうなら手を出すとは思うけど。


 それこそ私はそこまで崇高な考えはしてない。

 不幸になってるのを嘲笑う事もあれば、救いたいと思う事もある。

 それは知的生物特有のエゴ。

 創造神だって楽をしたいからと私達を神にした、それもエゴ。


「あの! ネア様......先ほどはご無礼を、申し訳ありません。このような立場で申し訳ないのですが、暫くこちらで泊めて頂けないでしょうか......」

「わたくしからも、おねがいします。めいわくは、かけないように、しますので」


 クルーグ君とナタリーちゃんが不安げにお願いしてきた。

 恐らく連れの人達の事を言ってるんだろうね。不躾な事を言ってたし、と言うかよく神と分かってる相手にああまで言えたね、見た目が子供っぽい私が居るからってなかなか肝が据わってる。

 まぁ......あの大臣とか護衛組とかそこら辺の人が面倒を起こさないならいいか。


「ん、別に良い。ただ面倒は起こさないで」

「はい! ありがとうございますっ!」

「ニーナちゃんも神だからと言って縋るのはやめようね。作られたお話の神様なら縋ってもいいけど、存在している以上生物として考えがあるから、何でもしてくれるわけじゃないよ」


 神だからとか、王だからとか、そういった事を自然と思う人間って多いと思うけど、王でも神でも存在している以上それぞれの考え方があるからね。

 過去の歴史からとか、言伝から生まれた固定概念を押し付ける事ってやっぱりあるんだなって思ったよ。

 ニーナちゃんに対してああは言ったけど、まだ子供だから理解は難しいかもだけどね。


「はい、申し訳ありませんでした......」

「ん、分かったなら良い。ニーナちゃんは何も悪くない、状況を作った大人のせいだから。ここに居る間はゆっくり体を休めて、気持ちは休まらないと思うけど」

「あっありがとうございます......」


 子供は悪くないんだよね。ニーナちゃんなんてただの被害者だもの。

 まぁ子供だからと言って私が子供の為に力を尽くすかは別だけども。

 そう言う大人が沢山いるから子供も捻くれるんだろうねえ、周りの環境が人を作る。だから私はえーな以外は容易に切り捨てるような人......今は神か、神になったんだよね。


「グナーデ、この3人も旅館に送ってあげて。後何人かイージス以外で咲さんの手伝いをしてあげて。いっぱいで大変だろうから」

「かしこまりましたマスタ―!」


 うん、グナーデは元気で和むね。

 流石に王国から来た人達皆を咲さん一人で対応はきついだろうから、まだ本格的に動いていないALICEの面々を送ってお手伝いさせよう。

 まだ亜人の研修の子とか居るにしても人数が多いからね。


「音亜ちゃんが他の人に気を遣うの珍しいわよね」

「......確かに」


 この世界に来て明確にえーなと結ばれ、永遠を誓ったから余裕が出来たのかな?

 自分を分析するに、今までは心の余裕が無くてそれ以外を蔑ろにしていたと捉えることも出来るしね。

 まぁでも余裕が出来たからと言って本質は変わらない。


「えーなの事が一番だし、いつも頭の中を占領してる」

「えぇ、信じているわよ? それでも言葉として聞くのはとても嬉しいわ」


 私も疑われるなんて思っても居ないけどね。私達は正に以心伝心だと思う。

 でも私は心配性だから必要だと思う過程は踏まないと気が済まない質だからね。


「さて、イージスちゃんに声をかけて帝国へ行く事言わないといけないわね」

「ん、それに竜になったグロリアもどれだけ大きいか知っておかなきゃ人員輸送をどうするか決められない」


 グロリアを貸すって言ったし、それこそ輸送船? 飛空艇? みたいなものを作らないと乗れないだろうしね。

 そんな正にファンタジーな竜の背の上! なんてのは数人単位の話で、数千人は無理だろうし、乗る側が疲れそうだしね。

 快適なんてあり得ないと思っています。エアプですけど。


「そうね、移動中に疲弊してしまったら面白くないわ」

「あと国境線付近の街制圧用のオートマタって作ってある?」


 まだ作戦実行まで時間はあると思うけど、請け負ったからにはちゃんとやりたいよね。オートマタ作るの私じゃないけども! 機械的な物であれば作ってすぐに動くはず。想定してる性能的にそこまで数は要らないと思うし。


「まだイージス配下のオートマタは作ってないわね。まぁそれはすぐに済むでしょうからイージスを行かせる前にササっと作っておくわね」

「ん、任せた。それじゃイージスを呼んで概要の説明と、グロリアの竜形態の大きさの確認をしよう」

「わかったわ。グナーデ~」

「はい! お母様!」


 名前を呼べばすぐに出てきてくれるグナーデちゃん。マジ便利。

 いやもう生きてるから便利とか言いたくないんだけど! 呼べば出てきてくれるから多用しそうだね......

 働いてくれるグナーデちゃんにはいつかご褒美を取らせてあげなきゃね。


「イージスを呼んでくれるかしら?」

「はいわかりました!」


 この二つ返事ですぐに実行してくれるからね。

 さて、イージスに帝国領の街一つに居る亜人を迅速に回収して、駐屯軍基地に破壊工作をして撤退する。って感じの事を話せばいいかな。

 一応国防の要として頑張ってもらうからには概要を伝え、自分で作戦の立案が出来なきゃ私達が大変だからね。そんなことでイチャイチャ邪魔されたら国外を塵にすることになるし。


 国防軍と言いながら国防じゃなくて攻めてるのは国家安全上致し方ない行動だから。


 コンコンッ


「入っていいわよ~」

「はい! イージスを連れてきました! 入りますね!」


 早いなぁ......ちょっとしか話す事考えられてない。まぁ考えた通り概要を伝えるだけでいいか。作戦はここで決めてもらう感じで。


「イージス到着しました、ご用命を」


 メイド服を着た赤髪ロングの竜人が部屋に入ってきて早々に片膝をつき頭を垂れた。

 忠臣って感じの動きだなぁ......! なんかすごい気分だね。


「ん、亜人達の動きに合わせて帝国と王国国境付近の帝国の街に居る亜人達を一人残らず回収して。腕輪に宿ってるグロリアは亜人軍の輸送に使ってもらう。えーなが配備してくれるイージス配下の国防軍のみを使用して作戦を遂行して」

「そして作戦立案をして欲しいのよね。使用してい良い戦力と街の地図、敵戦力に関してはこっちの紙に表記してあるから、後は作戦を立案してみなさい」

「はっ、承知しました。情報をまず見させて頂きます」


 きびきびしてるね。

 後は提示された戦力からどんな作戦を立案するかが楽しみだ。私はまだ戦力をどれぐらい渡すのかは聞いてないから、どんな風になるか聞いてないんだよね。


「えーな、結局どれぐらいオートマタ作る予定なの?」

「前教えた兵科あるでしょ? 工兵を20、弓兵50、歩兵200が内訳ね」


 前教えてもらった奴。


 工兵......野戦修理工兵だったかな? 味方のオートマタ修理や、工作活動が出来る個体って説明貰ってたね。

 他には飛翔魔術弓兵が居て、術式を使用した飛翔魔術で空を飛んで魔弓で制空権と空から狙撃支援する兵科だったかな。

 あと、支援魔法砲兵が大規模な魔法支援を行う兵科が居たはずだけど、今回はいないみたいだ。まぁそりゃ人質救出任務で吹き飛ばすことはしないか。

 最後に近接突撃歩兵って言うのが200配備されるみたいで、これが近接武器を使用して前線で戦う兵科だね。武器に関してはまだ聞いてないけどこのラインナップなら剣とかになるのかな?


 軽く兵科について思い返してみると、街と言う規模に対して救出作戦に従事するオートマタの数がかなり少ないから、作戦によっては大変かも? いや単純にオートマタが強いから人海戦術出来ないだけで意外と余裕かな。


「イージスが考えてる間に私達はグロリアの大きさ確認しましょうか」

「ん、そうしよう。イージス、それ少し借りるよ」

「はっ了解しました......どうぞ」

「ん、ありがと。それじゃ庭に行ってこの子の事見てみるから、終わり次第戻るけど何かあったら来てね」

「了解です」


 イージスから腕輪を受け取り、私達は庭へと向かった。

 庭には特に誰も居ないから大丈夫そうかな? ちょっと心配だから奥の方にしておこうか。

 私は念話でグロリアに声をかけてみる。


『グロリア、起きてる?』

『おぉ神ネア殿』

『起きてるね。いきなりだけど竜化出来る?』

『もちろん、いつでも出来ますぞ』

『良かった。それじゃ竜化してもらう前に軽く説明するよ。いつになるか分からないけれど今度竜化してもらった状態で、船を輸送してもらいたいんだよね』

『船、ですか? それはどういったもので?』

『それを作りたいんだけど、グロリアの大きさがわからないから、竜化してもらってから大きさに合わせて作る予定かな。取り合えず数千人規模で輸送できる船を作りたいんだけど......』

『それならお安い御用。では竜化して見せましょうぞ』


 グロリアが自信満々と言った声色で答えた。それから腕輪が輝き始めみるみるうちに大きくなっていく。私の手元から離れ空中で光が収束していくとそこには大きい、とても大きい黒色で、それでいて神聖を帯びている様な空気を醸し出す竜が出てきた。


「グオォォォォォォォォン!!!」


 おおおっドラゴンだ! 本場処のマジドラゴンっ! 見れて感動だぁ...... 


 生まれたての赤子のように産声を上げたグロリア。

 それと同時に恐らくだが大パニックの亜人族。

 心の中で異世界テンプレのドラゴンが見れて大興奮の私。

 私を微笑ましそうに見るえーな。


「おっきいわねぇ......」

「だねっ」

『神ネア殿、神エイナ殿、どうであろうか?』


 あぁ興奮しちゃってたけどそうだ、竜船を作る為の参考にしようと思ってたんだ。

 うん、大きさ的には宮殿ぐらいありそうだね。これなら引っ張る船は数千人乗せられそう。それにしっかりと救出した亜人達数千プラスしても大丈夫だと思う。

 間取りとか細かく計算した上で作れば、万でも乗れる船が作れそうだ。


 そもそも空間魔法とかを利用して転移とかすればいいという意見もある。

 でも人生を楽しむ為に敢えて不自由な環境に身を置くことってあると思うんだ。それこそキャンプなんてわかりやすいよね。それと一緒。


『ばっちり』

『えぇそうねばっちりよ』

『それは良かった! ......すまぬが久しぶりの空じゃて、軽く飛んできても良いか?』

『いいよ、楽しんでおいで』

『感謝するぞ! では少しばかり飛んでくる!』


 グロリアはそのまま南の海の方へと飛んでいき、どんどん高度を上げ雲の中に消えて行った。

 久しぶりの肉体だから気持ちが舞い上がっちゃうよね。空にも。


「ネア様、エイナ様! さっきのは一体!?」


 しょうもないことを思っていたらグラン君が走ってきた。

 案の定パニック? 仕方ないか......


「ん、グラン君。さっきのはグロリア、作戦当日に君達を送り届けてくれる竜だよ」

「竜......本物の竜って事っすか......」

「そう、ちっこい亜竜とかじゃなくて本物の、潰えた本物の竜だよ」

「光栄ですね......この事アイリス様にお伝えしても?」

「ん、いいよ。後でそれらに関してで呼び出しするから、その時ちゃんと来てね」

「わかりました。では伝えておきます」


 そう言ってグラン君は来た時と同じく走って戻って行った。


「さて大きさも見れたし、私はこのまま創造魔法で作っちゃうけれど、どこまで作っていいのかしら?」


 どこまで、この質問はあれだね。創造魔法があれば何でも作れるから、上限をどこにして自重するかって話だね。

 じゃないと戦艦とか作れちゃうからね......


「ん~飛行に耐えれて、今後軍事目的の輸送を担える程度に抑えて、放棄しても問題ない素材で作れる?」

「えぇ大丈夫よ。ちゃちゃっと作ってしまうけれど、置く場所はここでいいのかしら?」

「......それでいいや」


 ここじゃない所に置いておいた方がいいんだろうけど、場所を決めるのも面倒だからこのままでいいや。


「ふふっ分かったわそれじゃ作ってしまうわね」


 えーなが作ると言ってから魔力が庭の一角に収束し始めた。

 収束した魔力は実物へと昇華していく。それは大きな船。

 竜のお腹を形どった船で、船の中央左右の部分は竜の脚を避けるようにえぐられている。

 甲板はなく、船の横腹部分にデッキがある形だ。

 内部はここでは見れないけど、快適に過ごせそう。後はグロリアがハードな動きをしなければ大丈夫かな。

 創造魔法は凄いなぁ......そしてこれを細かく頭の中で想像したまま作り上げるえーなもすごい。


「ふぅ......初めて使った頃より随分と楽になったわね」

「ん、お疲れ様えーな」

「ありがとっ音亜ちゃん」


 船はこれでいいね。何ともまぁあっけなく作れたものだ! なんて思うけど作った本人からしたら頭が爆発しそうなほど並列思考してやっとだもんねこれ。私は率先してやりたくないなぁ......まぁそもそも創造魔法なんて使えないけど。


「それじゃ出来たしイージスの居る所へ戻りましょうか」

「んっ」


 船を作り上げたえーなと共にイージスの居る部屋へと戻った。


「イージス~どうかしら? そこまで時間は経っていないと思うけれど、進捗はどんな感じ?」

「はっ! 配下であるオートマタにはわざわざ情報を咀嚼させる必要がないようですので、数日で作戦は完成するかと」

「いいわね。それじゃ完成するまではメイドとしての業務はしなくていいから、作戦の立案に際して必要なことをしておきなさい。オートマタも完成し次第送るわ」

「了解しました! では自室にてまとめさせていただきます」

「えぇ分かったわ」

「ん、お疲れ様」


 イージスは挨拶をして自室へと戻って行った。

 顔つきを見る感じ大丈夫そうだったね。自信のある顔つきだったし。

 それにしてもとても人間らしく作れてるね。自室で考えた方が良く頭が回るのかな?


「それじゃ船の事をアイリスに伝えなきゃいけないわね」

「ん、だね」


 そしてアイリスを呼び出そうと思った所に、


「「お母さん~」」


 おやおやリアノアが帰ってきたかな。


「ん、お帰り」

「おかえりなさい~」

「ただいま」

「ただいまです。お母さん達に報告したい事があります。先ほど帝国の方へ見回った精霊から報告がありまして――――」


* * *

* *

フィリア帝国万歳!エイネア万歳!第五節入りましてよ


いいね、評価、ブックマーク登録、暖かい感想お待ちしております


★ 進捗の報告をしているツイッターはこちら!→@minadukitakano ★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ