第29話 仲間は創るモノ
場所は移って家の中の私達のお部屋にやってきました。
今はベッドの縁にえーなが座って、私が膝の上で抱えられている状態です。
「それでえーな、どういう風に作るの?」
「そうね~とりあえずワイバーン素材を錬金で変質させて行こうと思ってるわ。けどワイバーンのこれ、ドラゴン前だったから品質とレアリティともに高いみたいで色々な素材に変換できそうなのよね」
「ほーん、SRに変換するにはSSRじゃないとダメみたいな感じ?」
「そうよ~」
実際にえーなが鑑定した結果を見せてくれた。
[素材] ワイバーンの鱗 レアリティ:S 品質:SS
ワイバーンから取れた鱗。数多の生命を屠りドラゴンへと回帰する直前に討伐された為、ワイバーンでありながらとても高い品質を保っている。
鱗には魔力が浸透しており、竜系譜の特殊な魔力が鱗に貯められている。
[素材] ワイバーンの肉 レアリティ:S 品質:SS
ワイバーンから取れた肉。数多の生命を屠りドラゴンへと回帰する直前に討伐された為、ワイバーンでありながらとても高い品質を保っている。
このワイバーンの肉は大きな力を保有する鱗を下から支えられる様に、強い筋力と柔軟さが兼ね備わっている。
[素材] ワイバーンの魔石 レアリティ:S 品質:SS
ワイバーンから取れた魔石。数多の生命を屠りドラゴンへと回帰する直前に討伐された為、ワイバーンでありながらとても高い品質を保っている。
魔石には竜系譜の特殊な魔力が色濃く残されており、扱う事が出来れば絶大な力をもたらす半面、力に飲まれてしまうと災害を起こすだろう。
[素材] ワイバーンの肉 レアリティ:A 品質:A
ワイバーンから取れた肉。
ドラゴンの下位互換として知られているが、竜系譜の力は相応の災害を齎すだろう。
こんな感じだね。上の三つは例のワイバーン素材で、一番下の肉がただのワイバーンらしい。
品質も一段階違って、もしドラゴンになってたらもう一段階上がってたのかな?
「これを使って錬金していくのだけれど、そうねぇ~・・・ホムンクルスと言うより、新しく竜人とかが出来そうね」
「おー竜人」
「これから国のために働いてもらうには不老になってもらわないとだから、竜人ではなく竜神になるかもしれないわ。」
「竜神」
「まぁでもどちらにせよ魂に主を刻む以上、”従者”であることは変わりないから関係ないけれどね。見た目が嫌だー!ってのは無いでしょう?」
「うん、アラクネでもおっけー」
「ふふっ、それはそれでちょっと面白そうね?ってこんな事してたらきっと時間が足りなくなるわね」
どうやって作るかは私には分からないけど、少なくともこの勢いで色々作ってたらきっと新しい種族がいっぱいできちゃうよ。
まぁホムンクルスには悪いけど、子孫は作れないようにしてもらう・・・増えても困るし。
力や権力を持った事のある人なら分かると思うけど、上に立ったら次は上を目指すのではなくて、立場を守るという恐怖心と向き合わなきゃ行けなくなる。
少数を引きずり落とさんと居る無数の下層の者達、そしてそれらに狙われる少数の上層の者達。しかも上層は上層でお互いを蹴落とし合う事から逃げられない。
下層に近ければ近いほど引きずり落とされるからね。
だからこそ、神の力を備えた者に子を、神の反逆者になる可能性の者を生ませはしないの。
神としての位が高いからと胡坐をかいては居られない。
ま、まぁ子供はね、一人ぐらいは欲しいからきっと作るよ。けどもし裏切られても私にはえーなが居るからね。きっときっぱり見限って消してしまうだろう。
でもそんなことが起きないようにもし子供を作ったなら、しっかりと教育して愛情もいっぱいあげたいな。
「ふむ、こんな感じの設計でいいかしら?うーん・・・」
ぉぁ、ちょっと思考の沼に落ちてたかもしれない、子供産む事考えるとかちょっと恥ずかしいな・・・
私がごちゃほちゃ考えていた間、えーなはホムンクルスの設計を紙にまとめながら悩んでいるようだ。
どうやら、肉をそのまま肉として使い一部は錬金で眼球などにする予定みたいで、鱗は錬金して髪の毛や爪などに使われるみたい。ただ皮膚や心臓、記憶演算領域である脳みそをどうするか悩んでるみたい。
恐らく魔石があればそれを錬金合成などして、脳みそ、心臓など作れそうだけどこの魔石は一つだけなのだ・・・
一応神結晶を作りそれを核にしてもいいが、肉体、もしくは魂が耐えられない可能性があるらしい。
グナーデはえーなの強い意志から生まれた者だからこそ耐えられているが、一介の役割を果たすだけの魂じゃ耐えられないとのこと。
うーんどうにか手伝ってあげたいけど・・・
ああ、えーなは魔法を司ってないから細かな調整が出来ないけど、私ならただの魔物から神に匹敵する神獣までの魔石作れるんじゃないかな?
「えーな、私ならもしかしたら同じぐらいの魔石作れるかもしれない」
「本当!?それなら助かるわね、ただ生命体として動かす以上何か生命の系譜としての魔力を込めてあるといいのだけれど」
「多分大丈夫だと思う。結局それだって魔力に変わりないんだし、マナを変質させて魔石にする時に元の生物を想像しながらやれば出来ると思う」
多分。
「それだったらお願いしてもいいかしら?その間に私はこのワイバーン素材を使って1体目を作ってみようと思うのだけれど。錬金と言えど心を無にして設計図を脳内で組み上げて行かないといけないから時間がかかりそうなのよ」
「ん、おっけー追加で4つ作っておけばいい?」
「えぇお願いするわ、もしかしたらワイバーン素材にも魔石と同じ特殊な魔力を込めてもらうことになるかもしれないから、その時出来るようにお願いね?」
「任された」
よーっし!えーなに任されたんだ頑張って考えて作ろう!
えーなに抱えられたままで作るから、えーなの集中を余り乱さないようにゆっくりと作業を行っていこう。
そうだなぁ~4体分の魔石、どうせなら種族全部別々にしたいよね。
竜系譜のはもう居るから、狼と~虎!後蜘蛛と蟻かな?
蜘蛛は益虫として家の中の害虫を食べてくれるし、蟻さんは働き者だからALICEの治安担当が蜘蛛、労働担当が蟻さんって結構あってると思う!
多分竜が国防になると思うから、狼は群れの意識が強いと聞くから住民生活で、虎はネコ科じゃん?猫の象徴って魔除けらしいんだ、魔除けと言えば昔は流行り病を魔術だとかなんだとか言ってたらしいし、健康医療担当も合うんじゃないかな!?
こじつけ気味だけど。
よしそれじゃ作って行こう!えーなはすっごい集中して頑張ってると思うけど、私はイメージしてすぐ完成しちゃうかな?魔石だけだしね。
さぁ一気にやるぞー!核の魔石として使われるだけだから、特に肉体への影響も思考への影響もないけれど、多分獣化とか出来るような体だったらきっと影響は起きると思う。
だからちゃんとイメージして上げなきゃね。
狼、白色に輝く魔力を持って仲間を思いやるモノ、黄金の輝きを灯し仲間を見守る獣。
虎、金色に輝く魔力を持って災いを遠ざけるモノ、青い輝きを灯し災いを見通す獣。
蟻、銀色に輝く魔力は粘り強く主へ献身するモノ、黒い煌めきを灯し最適に動く虫。
蜘蛛、黒色に煌めく魔力は深層を選別するモノ、赤く光り害意を見つけ食らう虫。
それぞれの動物を思い浮かべ、特異な魔力を想像して、象徴を思い浮かべ、一定の魔力を出力、圧縮し物体として結晶化。
それを4回繰り返す。そして出来たのが―――
[素材] オオカミの魔石 レアリティ:S 品質:S
ネシス・シアーカによって創造されたオオカミの魔石
保有魔力が調整されており、下級神の下に位置する、神獣の手前程度保有魔力で作られている。
特性が備わっている。
<意識同調><心理的最適回答>
[素材] トラの魔石 レアリティ:S 品質:S
ネシス・シアーカによって創造されたトラの魔石
保有魔力が調整されており、下級神の下に位置する、神獣の手前程度保有魔力で作られている。
特性が備わっている。
<病鑑定><病退乃加護>
[素材] アリの魔石 レアリティ:S 品質:S
ネシス・シアーカによって創造されたアリの魔石
保有魔力が調整されており、下級神の下に位置する、神獣の手前程度保有魔力で作られている。
特性が備わっている。
<特技看破><最適配置>
[素材] クモの魔石 レアリティ:S 品質:S
ネシス・シアーカによって創造されたクモの魔石
保有魔力が調整されており、下級神の下に位置する、神獣の手前程度保有魔力で作られている。
特性が備わっている。
<心理鑑定><害意特定>
おぉう!会心の出来!って思ったら・・・レアリティと品質はベストだけどこれワイバーンのと違って特性付いてるわ。
うーん多分これを使ってホムンクルス作ったら特性がスキルとなって生まれそうだね?それならワイバーンの方にはこの黒竜鱗のブレスレットを渡してあげようかな、確か黒竜君は人を見て判断するとかなんだとか言ってたし、それはワイバーンの子の腕でもいいでしょ。
さてと、えーなは・・・おぉぅ、ゆっくりとホムンクルスが形成されている所を見るにまだ作ってる途中だね。なかなかグロテスクな見た目だよ。
待ってる間どうしようかな?とりあえず出来た魔石は目に付く場所に置いておこう。
ん~私は錬金とか何かを作るっていうのに特化してないから、何かを作るっていうのはねぇ~
・・・そういえば地球に居た頃にいつでもどこでも、寝てる時でも持っていた拳銃を作りたい、私が銃火器なんてスキルを持っているのはそれが理由だからね。
出来る事が無いし少し前会った事を思い出そう。戒めの記憶。
18歳の誕生日前だったかな?えーなと同居を始めて2年経った頃、私の誕生日が近づいて来てるから、えーなは仕事の現場に行ってさっさと仕事を終わらせて纏まった休みを作ってくる!って言って仕事に行った。
私はその時マンションの一室で一人に戻って過ごしていたんだけど、誕生日から数日前、人がやってきた――――
――――ピンポーン
・・・?おかしいな今日は何も注文していないはずだけど。
あれ?なんで1階のエントランスを挟まないで部屋の前に居るの?おかしい・・・
ピッ、ピッ、ピッ
・・・!これはっ!あぁなんでこんな時に義手を外してるの私はっ
バゴンッ!
嘘でしょ、爆薬でドアを破壊した!?まずい、これってあの時と一緒だ・・・義手は間に合わない、刃物、刃物を隠し持たなきゃ。無抵抗なのはもう御終いなの。
『クリア』『チェック』『クリア』
どうする、どうするっ!どんどん近くに来てる。部屋の配置的に私の居る部屋は玄関から3つ目の部屋だ。ダメ、私が無策に抵抗しても無意味に死ぬ、まずは無抵抗であることを知らせて雑魚だと思われなきゃ。
私は相手が怖い、そう私は今相手が怖くて体が震える。部屋の角で縮こまる。
ダンッ!
『目標発見!』
「ひ、ひゃ!こ、こないで!」
『なんだ?こいつが例のワイフか、あんなエンプレスのような奴もこういうのが好きなんだな』
部屋に入ってきたのは3人の覆面で正規軍が装備してそうな装備をした兵士。喋ってる言葉は海外の言葉だ、何言ってるか分からない。
理性的な部分を見せないように怯えよう。死なんて怖くない。怖いのはえーなに突き放される事だけだから。
『マイク拘束しろ。ダニエルは奥の部屋をチェックしてこい。俺はエンプレスの部屋からデータを確保してくる』
『あいよ~』『了解』
「な、なに近づかないでっ!」
『へへ、ちんまいのにいい体つきしてんなぁ・・・ほら怖くないぞ~ちょっと縛るだけだからなって、片腕だけじゃ縛れねぇな。んまぁこんなビビって片腕だけなら見張るだけでも・・・』
「痛い放してっ!」
二人の男が部屋から出て行き、一人の男が近づいて来て私の腕を掴んで何か言葉を発して手を離した。
拘束はしない・・・?片腕だからか。
『ジョセフ!データはどれくらいかかる!?』
『今ダニエルと一緒に仕込んでる!パソコン一杯あって時間がかかりそうだ!』
『了解!・・・さて時間がかかりそうなら少し遊んでもいいな』
目の前の男は大きな声で何かを発して、別の部屋に行った男と何かを話したようだ。だが話が終わった直後目つきが変わった。
私は知ってる。獣だ、今までは幸い何かしらで守られていたが、この顔つきに体つきだから狙われる事は多かったから分かる。
「・・・」
『へへっわかってんじゃねえか・・・そうだ静かにしてればいい』
ベッドに押し倒され、着ていたシャツを乱暴に千切られ、晒された胸元に男の顔が近づく。
馬鹿な男。
ズシャッ....ドカッ....
「・・・」
ナイフを一刺し、男は倒れた。
捕虜のボディーチェックする前にパイチェックしてどうするんだよ。だから腰のあたりに隠しておいたナイフを刺されるんだ。
ちんまいけど、これでも海外旅行の時に銃を撃てる程度には筋力があるからね。顎の下の柔らかい所から脳天まで一直線に刺せばどんな生き物も死ぬ。
なんか一周回って冷静になったよ。
「おっきい銃はダメ・・・ん、このハンドガンなら戦える」
ふふっ、ちょっと前までは殴られても蹴られても怖くて何も出来なかったのに、恐怖心なんて壊れちゃったんだなぁ。
「スゥーハァー、よし」
義手を付ける時間なんてない。相手は防弾チョッキを着た自動小銃持ちの兵士、こっちは見晴らしがよくなった胸元を晒し片腕のみで拳銃を持っている少女。
弾は7発で大きめの口径、チョッキは貫けない。
男を殺した後静かに部屋から出た。部屋で待ち構えてもいいけど、それじゃ警戒状態の男2人を相手に戦う事になる。
先手、確実に一人持って行く覚悟で行かなきゃ勝率はゼロ。
逃げる選択肢もなくはない。
だけどこれは私のエゴ。
怯えて抵抗せず救いを待つだけだった私が一歩前に踏み出す為の生贄。
だから殺す。
えーなと共に生きるには守られてるだけじゃダメだから。
男二人が居る部屋の前まで来た。廊下側に開くタイプの扉だ。開いたら死角になる所で潜む。
そして銃声を鳴らす。屋内なら銃声の細かな位置は分かりずらい。
バンッ!
『あぁ?』
『まさか、マイクの奴・・・やりやがったな、くっそ面倒くせぇ』
『ダニエルちょっと行ってこい、どうせまたヤるだけやって殺したんだろ』
『分かったよ』
以外に落ち着いた話声だ。私の事は殺す予定だったのか・・・?
足音が近づいて来てる。多分確認に向かうのだろう。
ガチャ・・・
男が部屋から出て殺した男の部屋に向かって行く。その後ろを私は気配を消して付いていく。
昔は親に認識されたら殴られるか蹴られていた。だから気配を消すことを覚えたんだ。それが今役に立つ。
『おいマイクいい加減処理が――――
バンッ!ドガッ......
ほぼ至近距離、外すことはない。これで二人目。なぜテロリストは往々にしてヘルメットをかぶらないのだろうか。よくわからない。
さぁここからだ、警戒状態の男と対峙しなければならない。
私は二人目を殺した直後、最後の一人が居る部屋の開いた入口の角に銃を構えて待つ。
『っ!どうした!マイク!ダニエル!・・・返事がない?まさかっ!』
ダッダッダッダッ
バンバンバンドゴッバンバンバンッ!カチカチカチッ......
扉から勢いよく出てきた男の顔に向かってトリガーを引く、男は勢いよく壁にぶつかって止まる。
「はっ、はっ、はっ・・・初めて、力に抗った?ふふっ、簡単に抗えるんだ、そうだなぁ。えーな――――
――――私拳銃が欲し「音亜ちゃん一体目完成したわよってどうしたの?」
「あ、声に出てた?」
「何か昔の事でも思い出してたの?」
「ん、そんな感じ。あぁ魔石はもう出来てそこに置いてあるよ」
「あらありがとう。拳銃もホムンクルス出来たら作ってあげるからね」
「・・・ん、ありがと」
私の人生は普通の人から見たらおかしいほど不幸だったかもしれない。
でもこうしてえーなと一緒に居れる私は幸福だし、それぞれの苦しい思い出も糧に出来た。糧に出来る程強く生きれた。
偶にこうやって昔の事を思い出して、強く認識するんだ。
でもちょっと大変だったことを深く思い出しちゃったから頭が疲れちゃったかも・・・
「えーなちょっと寝て良い?」
「良いわよ、ほら膝枕でね?」
「ん、ありがと」
体勢を変えてえーなの太ももの上に頭を乗せお腹に顔を埋める。そうすると片手で撫でてくれる。
やっぱり、しあわせ。
フィリア帝国万歳!エイネア万歳!今回は生産と音亜ちゃんの回想回でしたね。
幼い心を持った音亜ちゃんは何を経て今があるのか少し伝わったかな?
地獄の時間を短縮させる為の感情の模倣、壊れた心に一つの依存先が出来て怯えなくなった心、海外旅行で培った射撃技術に筋力、地獄の日々から手に入れた隠密技能、最後にそれらを使った抵抗の実績と結果。
これらが音亜ちゃんの心を作ったんですね。
いいね、評価、ブックマーク登録、暖かい感想お待ちしております
★ 進捗の報告をしているツイッターはこちら!→@minadukitakano ★




