亜人族の選択肢<グラン視点>
物語の都合上連続投稿かな?ストック日数が減っちゃうぜ
※2021/11/22 整合性が取れてない所とか文脈とか、一部加筆などの修正
※2022/06/02 改稿
あの後、俺達は尾行を警戒しながら散開しつつ各々集落へと帰還した。
俺達の集落は王国と旧農業国の間にある山脈の麓。
この集落の住居は非常に簡素だ。
丸太で囲んだ寝床に丸太の柱を立て、葉っぱや枝で屋根を作っただけの建物ばかり。
夜は皆で詰めて雑魚寝をしなければならない環境。
そして雑魚屋の密集した集落の周辺は岩と丸太、そして土を盛っているだけの壁が建っている。
これが俺達の集落。24時間魔物の脅威に怯えながら暮らす住処だ。
「団長、お疲れ様です」
「あぁ......」
帰還してすぐ、見張り中の上級団員に声をかけられた。
「成果はどうでしたか?」
「それなんだが、重大な問題が発生した。恐らくすぐに行動が必要になる。だから待機中の団員全員に集落周囲を固める様に指示を出せ、そして一部を使って非戦闘員をすぐに移動できるようにしておけ。恐らくすぐに動くことになる」
「一体何が......後でしっかりと教えてくださいね。俺は指示を出してきます」
「頼んだ」
上級団員は走って兵舎へと向かった。
早急にこの事を伝えなければ。俺も走って集落の長が居る所へと向かった。
「あら、グランですか、よく無事で戻りました。緊急時の撤退プランで戻ったみたいだけれど」
集落の長、アイリス・フィールドがこちらに振り返って心配そうな表情で尋ねて来た。
ここはアイリス様が物資の管理をし、斥候から入る情報を纏めている建物だ。
「アイリス様、重要な話があります」
「......分かりました、ルナを呼びましょう」
「俺はグリムさんを連れてきます。あの時の事を分かりやすく説明してくれるはずです」
「私はルナを連れてきます。ここに集合にしましょう」
「承知しました」
俺の真剣な顔を見て、アイリス様も真剣な顔をして聞いてくれた。
建物から出て丁度、グリムさんが集落へ帰還した。
グリムさんもさっき起きた事を直接アイリス様に話そうと思って居たようで、すぐに来てくれた。
建物に戻るとアイリス様とルナ様が待機していた。
「さて、話してもらえる?」
「グリムさん、お願いします.....俺じゃあの状況を上手く話せない」
「うむ、では話そう」
グリムさんがアイリス様とルナ様に、さっき起きた事を話した。
街道近くにある野営の出来る平地を張っていると、そこに女二人が来た。
まずは夜になってから斥候4人を向かわせ、後に俺達が向かい降伏させて物資のみを奪う予定だったが......計画は上手く行かず、斥候は少女が生み出した氷の茨で捕まってしまった。
相手の力量を感じるに決死の戦いが始まると思った所、少女から質問を投げかけられた。
質問に答えていくと、少女は何か決めた様に作業を始めた。
それからもう一人いた女性から「よかったわね」「貴方達に価値を見出したのよ」「貴方達はどう動いてくれるのかしらね?」と一方的に言われた。
言われた事の意味を聞こうと思った所で、作業を終えた少女が石二つと袋三つを渡してきて話始めた。
「この石の導きに、道中はこの袋の中身を使って。着いたら結界の中で待って」
「情状酌量の余地がある。どう動くかによって処遇は変わる。解ったら行って」
そう言ったあの少女から得体の知れないような雰囲気を感じ、俺達は緊急撤退プランで集落へ帰還した。
と、グリムさんが代わりにアイリス様とルナ様に説明をした。
「こんな所じゃな」
「......ありがとう。してグラン、その石と袋というのは?」
「これです」
俺は良し二つと袋三つを机の上に出した。
「鑑定してみましょう......」
アイリス様が机の上にある袋に対して手をかざし、鑑定を使用する。
アイリス様は希少なスキル<鑑定>が使える。この鑑定の結果によって俺達はどうするかを決めるんだ。
「袋三つはどうやら空間拡張された袋の様ですね。中身は食料と天幕、一つは空の袋になってますね。この石は......魔力を籠めると特定の場所まで導かれる物ね。こっちの石、は――――っ」
「どうしたんですか!?」
アイリス様が最後の意思を鑑定した所で目を見開き、震え始めた。
「......グラン、グリム。この石は、目の前で、作られた物、なのですね?」
「そうじゃな」
「は、はい」
アイリス様はすごい剣幕で確認をするように俺達に質問を投げた。
質問に答えるとアイリス様の目から涙が溢れ出す。
「あ、あぁ......るなぁ......」
初めての光景だ、彼女は旧農業国の代表者で彼女はここに至るまで涙を一切流さず俺達を導いてくれていた。
その彼女は石を片手に、ルナ様に縋りつくように抱きついて泣いていた。
「アリィ......良い事だった?」
「ひぐっ、うっぐ......え、えっと......い、いいことだった......」
「まずは落ち着きましょうか」
アイリス様が嗚咽を吐きながら、ルナ様の質問に答える。
そしてルナ様がアイリス様の頭を胸元に持って行き抱きしめて、背中を摩っている。
鑑定して一体何があったのだろうか......良い事、らしいのだが......。
困惑する俺と、静かに見守るグリムさん。
少し経って落ち着いてきたのか、アイリス様が顔を上げた。
「落ち着いた?」
「えぇ......ごめんなさい、こんな姿見せて......」
「気にしないで(もっとそう言う一面も見せてくれていいのよ)」
「っ、そ、それじゃ鑑定の結果を教えます。私の知り得た情報を」
ルナ様が俺達に聞こえない声でアイリス様に囁くと、落ち着きを取り戻したアイリス様が慌てて情報の開示をしてくれた。
一体何のやり取りをしたのか気になったが、それ以上に鑑定の結果に頭が持って行かれた。
「なにっ!?」
「やはりの......」
「......はっ?」
ルナ様、グリムさん、俺の順で反応が漏れた。
鑑定を疑う事は出来ない。それは”そういうモノ”として定められている。他でもない神の力によって。
だからこの鑑定結果を疑うのも神を冒涜するも同義だ。
疑う気持ちなんて微塵もなかったが。
[道具] 魔除けの石 レアリティ:Go 品質:Go
上級神の神力を込められた石。
持っていると魔物が近づかなくなる。
さっきアイリス様が確認したことは「この石を目の前で作ったか」だった。
質問の意図が理解できた。
目の前で、少女が作ったという事は、あの少女が神だという事を示す。
イルミナ教会での教えでは神には階位がある。
下級神、中級神、上級神、最高神と階位があり、下級中級が地上世界には顕現出来ず、神託を下す事のみで干渉する。
そして下級中級の神が進行を広め、神としての力......神力を強めると上級神となり地上に顕現できる様になる。
教会ではそう教えられている。
「救いが......ついに救いが来たのですね......」
「あの時、異質なものを感じておったが、やはり神様であったか......」
「神とあんな話し方をしてた事が怖えよ」
アイリス様がうれし涙を流しながら手を組んで祈りを捧げ、グリムさんはあの時感づいていた事を思い出す。
そして俺はあの時、神様に向かってあの喋り方をしたことを後悔した......。
「......まずは皆に移動する事を伝えましょう。家財などは名前を記して魔法袋に、食料はあるので早い段階で移動しましょう。ここだっていつ冒険者や帝国の者に見つかるかもわかりません。明日明後日には移動できるように行動を起こしますよ」
「そうね、重要な書類は私が纏めておくから、アリィは民の方へ」
「えぇ頼んだわ」
こうしてアイリス様の指示の元、俺達は迅速に行動を起こした。
移動を始められるのは翌日の昼だった。
移動中に魔物と遭遇する事もなく、順調に森を進むことが出来た。
......救い、か。
俺達はただ救われるだけで良いのだろうか。
逃げきれた俺達は救われたが......故郷の同胞達は......
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