第15話 今日は野営、方針も決定。
1週間の内容はまたいつか。そこまで重要ではないので、テンポよく進みたいのですよ!
※2021/11/22 整合性が取れてない所とか文脈とか、一部加筆などの修正
※2022/04/24 改稿
えーなの料理を食べてた日から一週間。冒険者として働き、ちょくちょく高級料理店へ行ったり市場でお買い物デートして時間を過ごした。
雑魚を狩って納品してを繰り返していたから、特筆する事もない。
「そろそろギルドに寄って、王都へ行きましょう」
「んっ!」
今日は王都へと旅立つ日。
この街でお金も貯まったし、それなりに楽しめた。
まぁ正直、常設依頼をこなすだけで飽きただけだけどね。
それに観光出来る様な街じゃないし。
私達は軽く部屋を整えて、それから一階へと降りる。
すると早朝に清掃をしていたリリスちゃんが居た。
「リリスちゃん、予定通り今日出立するわ」
「あっ、もうご出立ですか! 寂しくなりますね......」
残念そうに答えるリリスちゃん。
そういえば数日だけだけど、ここで給仕とかしたなぁ。
「またこの街に来る時にでも挨拶に来るから」
「ん、元気にしてて」
「はい! またお会いましょう......!」
リリスちゃんと別れの挨拶をしていると、厨房からリリスちゃんの両親が出てきた。
「料理、教えてくれてありがとなエイナさん」
「リリスちゃんに美味しい物、食べさせてあげなさいよ」
「給仕を手伝ってくれてありがとねぇネアさん」
「んっ、面白かった」
二人の言葉に答える私達。
皆一様に残念そうな表情を見せているが、私達にも目的があるからね。
「短い間だけど世話になったわ」
「ん、じゃあね」
「「「お元気で!」」」
私達は別れの言葉を交わし、宿から出て冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに入ると、いつも通りラッシュを終えた後で閑散としている。
「ふ~む、私達なら走って1回野営するだけで王都に着きそうね。あっ、でも盗賊が最近王都への道筋に出てるらしいわ」
えーなが情報掲示板を見て情報を探ると、大体の距離と盗賊出没の情報が出ている。
「ん、まぁ......大丈夫でしょ」
「そうねぇ、場合によっては初の対人実戦が出来る訳だし」
えーなの言った通り、私達はまだこの世界に来て殺人をした事が無い。
まぁ殺人は別にいいとして、実際に命を懸けて戦うとどのような問題が出るのか、そこら辺を知れる良い機会な訳だ。
まぁそもそも神殺しの何々、みたいな二つ名でもない限り一方的になりそうだけど。
「受付で出立の報告をして出発しちゃう?」
「ん、そうしよう」
特に知るべき情報もこれ以上無いから、カウンターへと向かい受付嬢に出立の報告をする。
因みに本来は、別に報告等はしなくても問題はない。
私達の場合、面白い依頼があったら回して欲しいなど要求をしていた為、報告が必要なわけだ。
「おはようございます、依頼の受注ですか?」
「ん、王都へ行く。だからその報告」
「あぁ、もう行かれるのですね。塩漬け依頼とか、希少な素材など助かっていたのですが......」
私が王都へ向かう事を伝えると、残念そうに首を垂れる受付嬢。
まぁ、ギルドとしては塩漬け依頼がまた増えるのは大変だよね。
でも私達も自由に旅がしたいし、やりたい事が見つかったならそっちにフラフラっと行くから。
「ん、仕方ない。冒険者だし」
「......そうですね。冒険者ならば自由がモットーですから。後程マスターに伝えておきます」
「ん、ありがと。またね」
「またお会いしましょう!」
にこりと笑って別れの挨拶を告げる。受付嬢も良い笑顔だね。
それから私達はギルドから出た。
アリア達にも挨拶したいけど......と考えているとアリア一人がこっちへ近づいてきた。
「はぁ、はぁ、ネア様エイナ様おはようございます! 確か今日王都に行かれるんでしたよね?」
「ん、おはよ」
「おはよう。えぇそうね、これから王都へ向かうわ」
「たまに依頼を手伝ってもらったりして助かりました。また何処かでお会いした時にでもご飯に行きましょう。次は私が奢りますので」
「そうね、楽しみにしてるわ。他の三人にもよろしく伝えておいて」
アリアだけだったが、どうやら別れの挨拶を言いに来てくれたみたい。わざわざ走って息を切らしている様子だ。
冒険者にとって朝はとても大事だから、恐らく他の三人は依頼の方に手を付けているんだろう。
「はい、しっかりと伝えておきます。では、また」
「えぇ、また会いましょう」
「んっ、またね」
アリアと別れの挨拶をを交わして、私達は魔の森と反対の門......北門を通り抜けて街道沿いの森へと入った。
この森も魔の森同様、平原に木が生えただけのチープな3Dゲームにありがちな風景が広がっている。
「それじゃ軽く走りましょうか」
「んっ」
森を見ても仕方がないし、森を楽しみたいなら魔の森の拠点に帰ればいい。
だからさっさと走り抜ける事にする。
走る速度が人外にしか見えないや......なんて考えながら走り進めて行くと、正面にファンタジーモンスターあるあるの姿が見えてきた。
立ち止まって見てみると――――
「ゲギャ!」
――――緑色の肌、イボだらけの顔面、でけぇ鼻、キモイ瞳孔、80~100㎝程の身長で細身の体躯。
「ゲヘヘ、ゲギャァ!」
そして、こいつ......私を見ながら発情しておる。
これはファンタジーゴブリン......。
物凄い不快な物を見て、物凄く不快な気分になった。
「......ゴミムシがァ」
「ギ――」
えーなが刀を振り抜き、体を左右に分断した。
「チッ......」
――ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ......
分断された体にまだ付いている四肢を切り飛ばし、顔を判別できなくなるまで切り刻むえーな。
「ん、えーな」
「......ふぅ、変な所見せたわね」
「ん~ん大丈夫。<フレア>」
私はえーなを止めて、ゴブリンの死体かすら分からなくなった肉塊を焼却する。
因みに<フレア>は火属性を重ねて炎属性になり、水と風属性を重ねて出来る雷属性、その二つの属性で出来た魔法だ。
名を獄炎種。属性を複数種類混合させると生まれる種。
「にしても......そっか、この世界のゴブリン、女の敵だったか......」
「そうみたいねぇ。まぁ人間も一緒よ」
創作物なら割とポピュラーだったけど、現実になると気持ち悪さがひたすらに......いや創作物でも気持ち悪かったな。
捕まった後めっちゃ裕福に暮らせるように、奉仕してくれるタイプの話も一応見かける。けどあの顔は違うね。人間と同じ下種顔だったよ。
「巣とかあったら《《中に居る》》んでしょうね」
「ん、だねぇ......でもまぁ、巣を見つけても、生命反応があるなら救う程度で」
「そうね、率先して探すほどではないわ。どちらかというと、こういう不快な生物を根絶する方が良いわね」
「だね」
まぁ無情に感じるだろうけど、実際そんなもの。
力があっても、別に誰かの為に身を削って奉仕する訳には行かない。
だって面倒だもの。まだゴブリン根絶RTAの方が実行する確率が高いよ。
ゴブリンを始めとした、人型魔物......オークやオーガなどを狩り殺しながら王都方面へと進んだ。
そして太陽も真上に昇ってお昼頃。
アイテムボックスに入れてある屋台の肉串を頬張って日光浴。
芝生の上にベッドを置き、寝転がったえーなに抱きついてゆっくりと休憩した。
「森の中でゆっくりと日光浴も良いわねぇ......」
「んぅ......ねむくなる......」
えーなの胸の中で目を閉じながらつぶやく。
少しだけ休憩~なんて思ってたけど、日向ぼっこが気持ち良くて、お昼寝も気持ちいだろうなぁ......。
「少しだけ寝る?」
「んゃ......まどろむだけにする......」
寝ちゃうと暗い時間になっちゃうしね。
夜になると私が眠くなっちゃうから......
だから微睡む位にしておく。寝ちゃいそうだけど。
えーなに緩く絡みつくことで密着度を上げてから、寝そうになったり、寝ちゃったりを繰り返し――――
* * *
――――微睡みというか普通にお昼寝して、1時間経ったぐらいでえーなに起こされた。
これ以上寝ちゃうと、目標に到着するのが夜になっちゃう。「二日目は寝れないわよ」とえーなに言われつつ、ほっぺをムニムニされて起きた。
そこからは一緒だ。
走り続けて、魔物が居れば轢き殺して、果物とか薬草があればちょっと摘んでいく。日も落ちてきた頃、都市デフリから王都までの半分を距離を走破したと思う。
えーなの脳内マップ的にはもう中心を超えてるそうだよ。
それから森の中を進んでいくと草の生えていない、野営に適した場所が見えてきた。
「ここらで野営の準備をしましょう」
「ん......結界張っとく」
えーながアイテムボックスから野営する為の天幕、椅子、丸机、紅茶セットを取り出した。
明らかに貴族様のお茶会+キャンプって感じの様相だね。
私は野営地点を中心にして、半径10メートルに物理結界。半径50メートル辺りに感知結界を展開した。
因みに物理結界、感知結界共に無属性を基本として作ってあるよ。
「キャンプテントも偶には良いわね。中はベッドだけだけど」
「ん、こういうのは雰囲気が大事。寝る時もベッドが大事」
これは大事な事。その場その場の雰囲気を楽しめなきゃ人生損しちゃう。
でも寝る時にモフモフで、ふかふかのベッドで寝ないと人生損しちゃう。
「全くその通りね。さて、紅茶は出来た物だからもう飲めるわよ。私はコーヒーでも飲もうかしら」
夜、寝る時間までは長い。だからゆっくりと森の空気と、紅茶の味、そしてえーなの膝上を堪能しよう。
私が寝てる間、えーなと結界が守ってくれる。だから安心して寝る。
夜になると眠くなっちゃうからね......これ、冒険者生活を1週間やってた時に起き続けられる様に、体を作り変えてみたんだけど起きれなかった。
なんでだろうね......? そこまで重大な危機とかではないと思うし、放置してるけど......。
ちょっと不安要素があるけど、眠るのは好きだから良しとする。
日も落ち月が高く登る頃、私は眠気に負けてえーなの膝上で寝てしまった。
<―――視点>
俺の名はグラン。
俺達は亜人種で特徴を持つ種族だ。
帝国から逃げ延び、帝国と王国を隔てている山脈をも超えた者だ。
安寧を手に入れたと思った矢先、冒険者によって同胞が何人も捕まった。
俺の名はグラン。
帝国から人としての権利を奪われ、道具と定められた種族。
逃げた先の王国には安寧は無く、盗賊として略奪に明け暮れ、同胞を食わせる事しか出来ない者だ。
今日も街道近くの『野営がしやすい土地』で罠に獲物がかかるのを待っていた。
そして今日、ついに餌がかかった――――標的は女性二人。
斥候の監視情報によると、虚空から物をどんどん取り出しているようだ。
異空間収納系のアイテム持ちか......希少なアイテムボックス持ちみたいだな。
それらを使っている者は決まって、中にアイテムを貯め込む傾向にある。
だから脅して、中身を出させれば食料も、食料が無くても換金できる物があれば、隠れ里に住んでる同胞に飯を食わせられるかも知れない。
それで標的が野営地に到着してる時点で、ずっと見張りを立てて居たのだが......
「なに......? 未だに椅子の上で密着して座ってるだと?」
「そうみたいっす」
俺の副官、オスカーから報告を受けた俺は耳を疑った。
あれからどれだけ時間が経っている......? まぁ起きているのは予想の範囲内なんだが、ずっと同じ体勢ってのも普通におかしいぞ。
「まぁいい、起きていても所詮は二人。完璧な奇襲で無抵抗の状態が望ましかったが......」
相手に抵抗出来る余地を与えるとまずい。
相手によっては命を賭してでも戦う事になったりもする。
それだけは避けたい。略奪してる身で何を言ってるんだって話だが、どちらも出来るだけ傷は負わずに済ませたいんだ。
「......だが仕方ない。徐々に包囲網を狭めて人数不利で降伏させるぞ。オスカー、斥候数人を纏めて西方から迂回して攻めろ。俺達主力はここから攻める。目標に近づいたら左右に展開して完全に包囲しろ」
「了解っす!」
オスカーに指示を出し、俺も配下に指示を出し、徐々に進行を始める。
相手は二人、こっちはオスカー含め斥候が四人、俺を含め近接戦闘が出来る者が六名、弓兵が三名。
総勢13名だ。
5倍の戦力差.....変な気を起こさずに降伏してくれりゃいいんだがな......別に捕らえて犯そうって訳でもねえが、女性ならそれを警戒して猶更抵抗を強めちまう。
俺達に必要なのは......安寧。
だがそれが手に入らないなら戦い、奪うしかない。
「グラ坊、こりゃぁ......早めに行かんと不味いぞ」
徐々に標的へと近づいて行った俺達だが、監督役であるグリム爺さんが俺に警告してきた。
「グリム爺さん、一体何が......?」
「斥候が捕まっておる。悠長に歩いている暇はないようじゃぞ」
「ッ!? くっそッ、皆ッ急ぐぞッ!」
「「おうっ!」」
グリム爺さんは根拠の無い事は言わない。事実捕まってしまったのだろう。
俺達は足を速め、急いで標的の所へ向かうと――――
――パキッ......
――――木、土、草、枝、落葉、花。すべてが凍った世界が広がっていた。
美しい、それが先に出た。
だがそれ以上に、理不尽だった。
氷の茨に絡めとられた斥候四人が、我々の来る方角から良く見える様に吊るし上げらている。そして茨によって傷つけられた斥候達の滴る血が氷のバラに色を付け、赤い薔薇を咲きほこらせていた。
そして、感じた美しさと理不尽さの分だけの、圧倒的な魔力の圧を全感覚で感じ取った。
「あら、来たわね」
美しくも理不尽な光景に目が奪われ、気が付かなかったが、吊るされた仲間の前に標的が居た。
片方はメイド服姿で曲刀を抜き、曲刀を片手で持って立って居る。
片方は氷の《《蔓》》に腰を掛け、杖を片手にこちらを見下している。
両方とも共通してるのは、人ならざる美貌。
凛とした美しさを感じさせる顔立ち、立ち振る舞いをするメイド。
異邦の服を着た庇護欲を掻き立てる見た目と顔つき、美しき白銀の髪を靡かせ長い前髪から覗かせる赤い瞳が誘惑する少女。
それらに目を奪われていると、声が聞こえて来た。
「だ、だんちょ......ぅ」
「......ッ! オスカー生きているのか!? よかった......あまり体を動かすんじゃないぞ!」
「私達をスルーしてお話はしないでもらえるかしら?」
「あぁくっそ......! 俺達みたいな盗賊を生かして、何が望みだッ!」
オスカー達配下から目を背けてしまった事に恥を感じつつ、かけられた言葉に答えた。
盗賊を生かしておくなんて......俺達を帝国に売る以外ない。皆覚悟してる事だ。
だがあの圧倒的実力差、それを感じさせる程なのになぜ俺達を制圧しないのか。
それに一縷の望みに賭け、対話を望んだ。
一息つく程の間の後、見下していた少女が口を開いた。
「教えて、何故盗賊に堕ちたの?」
「何故......何故、だと? 俺達は亜人ッ、帝国から一人残らず老若男女問わず狙われる存在だッ! 犯罪を犯そうとも、平和に暮らしていようとも関係なく奴隷として使われる......その中で、これ以外の道があると言うのかッ!」
王国に住む者でも誰でも知ってる事を聞かれ、声を荒げて答えた。
だが少女は、茹り切った頭を凍結させるような、底冷えの声音で質問をしてきた。
「私達は......この世界を知らない。亜人は迫害されてるの?」
「っ......俺達亜人種族が暮らす国が帝国に侵略され、負けた。そして亜人種族は皆、《《奴隷種族》》として帝国に定められた。だから......」
「......ん」
少女の声音に頭を冷やされ、冷静さを取り戻してから俺は質問に答えた。
すると少女は目を伏せ――――俺の居る所に捕縛していた斥候を投げた。
<音亜視点>
亜人......エルフとか、浅黒い肌でねじれ角を二本生やした魔人、スケルトンだが亡霊のように透けたレイス、そしてケモ耳を生やした獣人。
ファンタジー種族の展覧会、それが......酷いな。奴隷、か......。
はぁ......まだ大陸を堪能してないし、この世界を周ってすらいない。
けどやろっかな。やってみたい事を。
「ん......自由、欲しい?」
「っ......! 国も取り返したいが、それ以上に......自由が、安寧が欲しい。だがそれを叶える前にまず、仲間を食わせるしかない」
「そう......待ってて」
この人物は使える。私のやってみたい事に巻き込ませてもらおう。
その副産物で安寧が手に入るかもしれないけど。
私は仲間の為に動く志高い者から視線を外し、アイテムボックスから物を取り出した。
「......オスカー」
「だ、だんちょう......いったい......どういう状況なのですか......」
「俺にも、わからん。だが俺達が抵抗する事は出来ないってのは分かる」
「そっすね......」
「ふふっ、良かったわね貴方達」
アイテムボックスから取り出したのは石と袋。
石には、家にマーキングしてある魔力へ誘導させる魔法を付与させる。
後もう一個取り出してある石には神力を籠める。これには魔物が近づかない作用がある。
袋には、空間属性を付与して内側に亜空間を作成。これで携帯型アイテムボックスを3つ作る。
そしてウルフ肉やらハーブやらをポイポイ。天幕セットと食器をポイポイ。後は空の袋のままでお引越し用。
「......どういう事だ?」
「音亜ちゃんは貴方達に価値を見出したのよ。それ以上に睡眠を邪魔しておいて、まだ生きてる事に感謝しなさい」
「あ、あぁ......」
「さて、貴方達はどう動いてくれるのかしらね?」
うん、石も袋も完成したし鑑定はしておこうか。
[道具] 誘導石 レアリティ:S 品質:S
誘導魔法を込められた石。
魔力を込めると特定の魔力まで、道のりが分かる。
[道具] 魔除けの石 レアリティ:Go 品質:Go
上級神の神力を込められた石。
持っていると魔物が近づかなくなる。
[道具] 魔法袋 レアリティ:SS 品質:S
空間属性が付与された袋。
空間魔法のアイテムボックスとほぼ同じ機能だが、時間停滞機能が時間遅滞機能に劣化している。
よし、ちゃんと出来てるね。神力籠めてGo級になっちゃったけど......まぁいいか。
知られても困ることは無いし、寧ろ好転するだろうしね。
「ん、出来た。この石の導きに、道中はこの袋の中身を使って。導かれて着いたら結界の中で待ってて」
私はそう言って、リーダーらしき男に石と袋を投げ渡した。
あっ、投げるのへたくそ......明後日の方向に投げちゃった。
「おわぁっと!」
「......盗賊行為に関しては情状酌量の余地がある。どう動くかによって処遇は変わる。解ったら行って」
「っ......!」
ふぁ~~~っふ......説明は雑だけど、これでいいよね。眠いし......。
ちゃんと理解していない困惑顔だけど、物をしっかりと受け取ってしぶしぶと下がり、全員が森の中へと逃げて行った。
「んぅ、これでよし」
「お疲れ様。王都はどうするのかしら」
えーなが私の考えを見抜いて質問してきた。
「ん、勿論行くよ。行って満足したら実行しよう」
「そう、わかったわ。なら今はもう寝ましょう」
「んっ......ねむい! 起きたら王都へ行って、満足したら――――国作りも楽しみだね」
月が徐々に下がり始めた時間。
私は月を見ながら未来を想像して、眼を細めた。
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