第10話 この世界で初の街に来たよ。
異世界って言ったらギルドでしょ
私も転生したらテンプレ遭遇して裏路地を鮮血で染めてみたいです。
凶暴な主人公ルートは前途多難。
※2021/11/21 整合性が取れてない所とか色々修正
※2022/04/09 改稿
ここは魔の森上層。転移して暫く経っている。
上層とは言え魔物が多く生息しており、頻繁に襲撃してくる。
「ハッ!」
「っ......!」
私とえーなが先鋒となり、魔物を躊躇なく屠っていく。
えーなは刀で首を刎ね、私はグナーデを起点に魔法を発動していく。
護衛対象であるアリア、セリナ、シュナに被害が行かないように、敵勢存在を片っ端から屠っていく。
「あの人達が味方でよかったですね......!」
「あ、あはは~守ってくれているから感謝しないといけないね~」
「すごいですっ! どうやったらあそこまでつよくなれるんですかね!?」
3人が私達の戦いぶりを見て感想を言い合ってる中、私達の除去作業は終わりを迎えていた。
「ふぅ......群れで来るとは思わなかったわね」
「ここら辺はウルフの群れの縄張りだったようですね。群れに出会っていたのが私達だけだったらどうなっていた事やら......」
私達が居なかったことを想像して青ざめるアリア。
まぁ......負傷している状態でこの群れは厳しいだろうね......
「ん、死体回収する。金に出来る?」
「はい可能です。肉を冒険者ギルドで売却すればそこから市場に流してくれるので、ちゃんとお金は貰えますよ」
「ん、全部取ってくる」
肉とか皮とか、戦利品の類は冒険者ギルドが代わりに買い取ってくれるようだ。
わざわざ商人とか貴族とか、そういう層の人間に売らなくて済むのはいいね。
それこそ希少価値の高い物を売って、目を付けられるなんてテンプレだし、その確立を減らせるならそれに越したことはない。
そんな事を考えながら私はアイテムボックスにシュポシュポと死体を仕舞って行った。
「ん、終わった。行こう」
「落ち着いたし、進みながら貨幣と食料とか基本的な値段とか教えてもらってもいいかしら?」
「はい、わかりました。では――――」
この国ではお金の名称を《《イル》》と呼ばれており、貨幣種類は、
小銅貨1イル、銅貨10イル。
小銀貨100イル、銀貨1,000イル
小金貨10,000イル、金貨100,000イル
ミスリル板1,000,000イル、オリハルコン板10,000,000イル
アダマンタイト板|100,000,000《一億》イル、ヒヒイロカネ板|1,000,000,000《十億》イル
と種類がある。
アダマンタイトとヒヒイロカネに関しては国家間取引や、貴族間の取引、くそデカ商家の取引ぐらいでしか使われないそうだ。
冒険者が良く携帯する黒パンの値段は10イル。宿屋や飯屋の一般的な値段が350イル。一般宿で一泊1,000イル。
大体の価格はこんな物らしい。
ぶっちゃけ魔物狩って、ある程度纏まったお金が手に入るだろうし、覚えることは無さそう。
「冒険者って収入はどんな感じ? 例えばさっき狩ってきたウルフ17体でいくらぐらいになるのかしら?」
「ウルフはEランクの魔物として登録されています。ですがここは辺境ですから、食料の問題もあり比較的高いですね。大体一匹100イルになりますよ。もちろん手数料は引かれた状態です」
比較的高いと言われてるけど、安くない......? 売っても黒パン10個よ......?
あぁ、でも生肉は保存食じゃないし、加工の手間とかもあるか。
それにわざわざこの辺境の、しかも魔の森なんて名前の付く所に来る冒険者は弱くないはず。
だから群れでも易々と狩ってくるから、供給が多いんだろうね。
でも辺境だから需要が高く、供給が多くても釣り合うって訳だ。
「ふむふむ......それじゃあ宿代も大丈夫そうね。それにその程度なら余裕でやっていけそうね」
「はい、お二方の戦闘能力でしたら十分だと思います。っとそろそろ見えてきましたよ、あれが前線都市デフリ――シュティル辺境伯様が治めている領地です」
お金の価値やら色々聞きながら歩いていると、森の向こうから何か見えてきた。
見えてきたのは赤茶の大きな城壁。魔物の攻撃を数多と受けてきたであろう修復痕があり、それでも残り続けている堅牢な城壁は正に前線に聳える守護者。
アリア、セリナ、シュナを先頭にして、その後ろに付いて行く形で門へ近づいていく。
「おっ! 嬢ちゃん達、無事に戻ったか」
門に近づくと兜だけを外した重装備の門番が立っていた。
その門番が3人に向かって声をかける。
「随分と長かったようだが、目的のもんは手に入れたか? あとそっちの嬢さんとメイドさんは?」
矢継ぎ早に質問を投げかけてきたが、まぁ門番からしたら見慣れない相手とかは知っておきたいよね。
「門番さん。無事手に入れることが出来ました。......ただ、この方々が居なかったら危なかったです」
「私はエイナよ」
「ネア」
「おう、よろしく。俺はゲイツだ」
快活な笑みを浮かべて自己紹介したのはゲイツさん。
うん、好感が持てるタイプの人だ。
視線や表情から悪感情は感じ取れない。
「嬢ちゃん達が危なかったってぇ事は、森の中でなんか起きたのか? てっきりネアさんとエイナさんを保護した側だと思ったんだが」
まぁ普通はそう思うよね。パーカー来てる小娘とメイド服着た女性。
杖と刀をそれぞれ装備してるけど、戦士には見えないよね。
「まっ緊急の問題じゃなさそうだし、さっさと薬を作って届けてやんな!」
「ありがとう、門番さん。ギルドカードです」
アリアがゲイツさんに感謝を述べて、ギルドカードなる物を手渡した。
あれは多分身分証的な物かな......?
「おう、よし大丈夫だ、嬢さん方はギルドカード持ってるか?」
「私たちは持ってないわね。これから冒険者ギルドに行って登録しようと思っているけれど」
「ふむそうか、それじゃあこの玉に触れてくれんか」
持ってない事をえーなが言ってくれて、代わりにとゲイツさんが取り出したのは水晶玉。
「待って、それ何?」
「お、知らんのか。こりゃぁ教会で作られてる鑑定玉つーもんで――」
「ん、鑑定した方が早いか」
「って、まぁ鑑定持ちにはその方が早いか」
説明を始めようとしてくれた所で悪いけど、鑑定した方が早いからね。
鑑定玉なんて言うから、知られて困るような情報を見せてしまうかもしれない。
神とか神とか。ってことで<鑑定>
[道具] 鑑定玉 レアリティ:EX 品質:EX
イルミナ教会でマナを圧縮し、鑑定の効果を増幅させて作り出された玉。
玉を触れた者の討伐歴、ステータス、犯罪歴が表示される。
隠蔽する事は人には出来ない為、安全確認には重宝される。
うん、これは良くないね。ステータスが出るって事は神って事が知られる。知られると面倒くさい。
......マナを圧縮して作られた物なら、鑑定玉に魔力で干渉したら改竄出来そうだね?
えーなに目線を送り会話する。
(えーな、ゲイツさんの意識を5秒ぐらい逸らせる?)
(......任せなさい)
「ん、便利だね。隠蔽は”人”には出来ないから優秀」
「だろ~? これがねえと門番なんてやって「うわぁっと!」
「えっ!? ちょっとエイナさん!!!」
「リーダーの嬢ちゃん! ズボン!」
よしっ! えーなが地面の窪みでこけた振りをしてアリアさんのズボンを脱がした。
やらねば。アリアさんの犠牲の為にも!
まず玉に手を触れ、私とえーなの情報を送り――残り4秒
ステータスの神名を二人分、消去して――残り3秒
種族の現人神を二人分、人族に変えて次に武器スキルの――残り2秒
<銃火器>消して、魔法はいい! 称号全部消してっ――残り1秒
最後に鑑定玉の干渉履歴を削除ッアリーデヴェルチ!
「ご、ごめんなさいね? まさか石畳の窪みにこけるとは思わなかったわ......」
「え、えぇ大丈夫ですぅ............」
「あーそのなんだ嬢ちゃん、そういう事もある。俺はちゃんと上見てたからよ」
作業なんて手を触れればいいだけだったから、警戒の為にゲイツさんの方見てたよ。
しっかりと上を見てた。紳士ポイント5000兆。
「ないと思います......いえ、それよりも鑑定を済ませましょう」
「そうだな。それじゃ嬢さん方、頼むぜ」
「わかったわ」
「ん」
ギリギリ間に合ってよかった。討伐歴と魔法は消せてないから、ちょっと目立つけどそれぐらいなら大丈夫かな。
「おぉ! 嬢さん達強いな。これならすぐ冒険者ランクも上がるだろぉ......通ってよし!」
「感謝するわ」
「ん」
私達の討伐履歴を見て褒めてくれたようだ。
さて、色々あったがようやく街に入ることが出来た。
これから冒険者ギルドだ。
「人がいっぱいねぇ」
「ん、街だね」
門を潜り抜けてきたのは、前線を感じさせる堅牢な街並み。
建物は石で出来ていて、並みの魔物じゃ壊せそうにない。
それが一般の民家にも普及されているようだけど、視覚的に少し息苦しさを感じそうだ。
魔の森が近いせいなのか冒険者らしき人が多く居て、視界の端々では喧嘩が起きている。
治安はあまり良く無さそう。
「アリアさん、ここ治安は大丈夫なの?」
「あ~悪いっちゃ悪いですけど、ここを拠点にして魔の森で活動する冒険者はある程度実力があります。相手の強さを雰囲気で感じ取れるはずなので、お二方は問題ないと思いますよ。よほどの馬鹿じゃない限り、絡んでは来ないと思います(よく見ればわかります。なんかすごいオーラ見えますからね......)」
「ん、そか」
なんか最後の方ぼそぼそ言ってたけど私にもオーラ出てるのかな?
あっもしかしたら神力体だし、神力が漏れてるとか無い?
......マナが漏れてるわ。マナを抑えて出すのは魔力になるように調節しよう......
「それでは冒険者ギルドまで案内しますね」
「わかったわ~」
「ん」
街を進んでいくとまんま『冒険者ギルド』と書かれた看板が見えてきた。
ちなみにこの世界の言語は、世界共通語という言葉になっている。文字も発音するのもすべて世界共通語だ。
創造神から与えられた魔法の言語を元に云々なんだってさ。
まぁあれだ、なんか読めるし、書けるし、話せるんだよ。便利だね。
「着きました。ここが冒険者ギルドです」
「へぇ~結構普通なのね」
「まぁ辺境ですしこんなものです。王都のは大きくて奇麗ですよ」
冒険者ギルドの見た目は、煉瓦と木で作られた一般的な建物だった。
そういえば道中、色々この国の話を聞いた。この国はレタリス王国と呼ばれていて、その国の南端に位置する街が前線都市デフリ。
王都は北の方にあって、東の山や川を越えた先に帝国があるらしい。出発前に見た地図を思い出しつつ聞いた。
王都も帝国も行ってみたいな~
――カランカラン
冒険者ギルドの扉を開けると、ドアに付いたベルが鳴る。
中を見てみるとカウンターに受付嬢が居り、横の方には酒場があって冒険者らしい人が飲んでいるのが見える。
「それでは、私達は薬を調合してきます。私達は冒険者ギルドの横にある『鳥の止まり木』という宿屋に泊っていますので、あとでそこで会いましょう」
「わかったわ~それじゃあまた後でね」
こうしてアリア達と別れ、私達はカウンターへと向かって行く。
私達のような人は珍しくないのか、周りの冒険者は特にこっちを見ない。
強いて言うならえーなのメイド服見て「メイド服ぅ?」って感じの怪訝な目を向け、すぐに興味が失せた様に別の所に視線を向ける。
「ようこそ冒険者ギルドへ。ご依頼でしょうか?」
受付カウンターに近づくと、受付嬢が先に声をかけて来た。
テ、テンプレ挨拶......! ゲームや異世界作品で幾度となく見てきたテンプレート挨拶......!
絶対他の転移者とか転生者がいて教えたでしょ。そもそも冒険者ギルドだってそう言う人が作ったに違いない......!
「いえ、冒険者登録ね」
「はい、承りました。ではこの書類に名前とスタイル。パーティーをお二方で組む場合は、こちらの書類にも名前とスタイルとパーティー名をお願いします」
ギルド嬢が三枚の紙を取り出しながらそう言った。
個人用の登録用紙二枚と、パーティー用の登録用紙一枚だね。
「スタイルって何を書けばいいのかしら?」
「簡単に言うと剣を使うなら剣士みたいな感じになります。自分の戦闘スタイルを簡易的に見れるように、というのが趣旨ですのでその様にお願いします」
「わかったわ」
そういえばこの世界で名字がある人は貴族らしい。
私達はちゃんと書くけどね。あの親達の事は嫌い、でも名字に罪はない。
何よりえーなと同じ月が入った名字だからね。なんだかんだ気に入っている。
自分の好きな物を我慢してまで面倒は回避しないよ。
==============
パーティー名:ディア・リリウム
リーダー
名前:ネア ミナヅキ
スタイル:魔法後衛
名前:エイナ フミヅキ
スタイル:護衛騎士
==============
こんな感じかな。なんかこういうの書くのって恥ずかしい様な、ワクワクする様な気がする。
「書き終えたわよ。これでいいかしら?」
「はい、大丈夫です。ネア様、エイナ様ですね。これから冒険者ランクの説明と規約について説明します――」
冒険者ランク。それは依頼の達成回数と特定の依頼をクリアすると、昇格していくシステム。
ランクの種類は『G、F、E、D、C、B、A、S、SS、EX』とあり、子供の冒険者がG、成人の一般冒険者がD、中堅がC、Bでエリート、Aで貴族が囲みに来る強さ、Sは一人で貴族ぐらいの待遇になり国も放っておかない、Sランクは大陸にも数人ほどしかおらず、SS.EXは英雄級に強いと言われているがまだここにはいない。
といった感じで、まず試験を受けて、その強さから開始ランクが決まるようだ。
規約は普通のモラルを持ってるなら聞く必要もないだろう。
「では説明は以上ですが、質問などありますか?」
「今は特に思いつかないわね。音亜ちゃんはどう?」
「試験をする時、当事者以外来る?」
これは試験をする相手を力加減を間違え、殺してしまう事を想定しての質問。
殺してしまったなら蘇生しなきゃいけない。私達の都合でやってしまった者になる訳だからね。
そして見世物として観戦さえされなければ、場に居る人を口止めすれば済む話になる。
「試験官だけになります」
「ん、私も質問は無くなった」
うん、良かったよ。
まぁ力加減間違えて......何てことは無いと思う。
試験官があまりにも強いとか、生理的に受け付けない奴じゃない限り。
「では試験後本登録を行います。試験官を呼ぶので――――」
「あぁ、それ俺がやるよ」
「ん? あれギルっまむぅ!?」
横から大男が出てきて、受付嬢の口を手で塞いだ。
今絶対ギルマスって言った。実質言ったような物だって今の。
「(ちょっとお前は黙ってろ!)お前さん達、これから試験をするからこっちの地下試験場についてきな」
「わかったわ」
「ん」
暫定ギルマスが親指で地下へ続く階段を指さし、階段の方へと進んで行った。
受付嬢は囁かれた時に悟った目をして受付に戻って行った。
さて、暫定ギルマスが試験官かぁ。面倒なタイプじゃなければ、プラスに働きそうだね。
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